
大宮「おでん屋台ゆたか」ここが大宮の誇りだっ ・・・た
屋台の魅力ってなんだ・・・?
寒い夜に
道端に明かりを灯す
あの佇まい
簡易的なテーブルと椅子
そこに陣取る人々越しに
湯気
の温かさを感じれる
いや
寒いのなら
室内の店で呑ればいいじゃないか・・・
なぜわざわざ
その座り心地の悪い椅子に
腰かけるのか・・・?
とどのつまり
羨ましい
のだろう
背徳感を楽しんでいるお客さんの
無防備な背中の並びが
夜の画
になりすぎている
その
キャンパスに自分も描かれたい
呑みたい食べたいもあるが
そこに居ること自体が
気持ちいいんだ
好きな女の子に
一人で肩を丸めながら屋台で呑ってる姿を
偶然見られたい
のちに
その娘と付き合い
「言ってなかったんだけど あの夜 屋台で呑んでるの見たんだよ」
「えっ? なんだよ 声かければよかったじゃねーかよ」
「なんだか 声かけづらくて」
「どうして・・・?」
「呑み姿が 屋台に似合いすぎてて」
「それ 褒めてんのかどうかわかんねーよ」
みたいな会話のあとキスしたい
言い切っていいだろう・・・
屋台ってカッコいい
大宮のアソコが
その役目
を終えるらしい
見ておかなければ・・・
感じておかなければ・・・
寒波襲来12月末
味論と2人で大宮にやってきた
寒さが丁度いい
線路沿いの
自転車置き場の並びに
その店を見つけた
おでん屋台ゆたか
あ・・・
思ってたタイプと違った・・・
中が見えないのは怖いな・・・
18時開店で現在17時59分
手の平に
おでん
と書いて飲み込み
勇気を出してシートをめくった
長年この場所に居るんです
という声が
どこかから聞こえてきそうな色合い
冷蔵庫もあるのか・・・
やかんの色は
何色って表現すればいいのだろうか・・・?
いや
それより驚かされたことが・・・
女性だ・・・
店名がゆたかなので
勝手に男性と思っていた
泉谷しげるみたいなオヤジさんが
頑固に切り盛りしてると想像していた
裏切られたな・・・
「セツコちゃん 表の提灯ついてないよっ!!」
お・・・
先客さんのお父さ
いや ご婦人がいらっしゃった
「わざとだよ」
「新聞載ったからかい?」
「ま もうお役所さんは来ないけどね」
「嫌だねぇ アイツら」
セツコってのは
ママさんのお名前だろう・・・
お二人とも
口調は泉谷テイストでらっしゃいますね・・・
なんだこりゃ・・・?
ジョッキでネギを栽培しているのか・・・?
いかんっ!!
このままでは
酒場現場検証
に3時間かかる
一旦座って落ち着こう
お酒はあの5択か・・・
熱燗は後のお楽しみとっといて
まずはビールだ
お通しに
スパサラも頂けた
極寒に
冷えたスパと
ちべたいビールってのがいい
それにしても・・・
この情緒だと
なんてどうでもよく感じるな
スーパーで購入しただろう総菜が
こっちを睨んでいるが
僕らが見つめたいのは・・・
何と言ってもこの中
世界2大めくってほしいモノ
といえば
好きな娘のスカートと
おでん鍋んの蓋だ
セツコさんの手が
それにかかる
ゴクリッ!!
ゴカイチョーー
とは聞こえてこなかったが
湯気をあげながら
あらわになった
いやーーーん
おいしそうーーー
大声でその気持ちを
セツコさんに伝えたかったが
このご時世大声は怒られそうなので
浅草寺の煙のごとく
湯気を手で顔にかけてたら
怒られた
「厚揚げと ソーセージと それ下さい」
「巻き麩ね」
関西風というのか
薄味の出汁がシュンだ厚揚げの旨いこと
熱いコレを
ハッフハフしながら
戦ってる模様をTikTokにアップしたい
TikTokやってないけど
オホホホ
めくってもらって
出てきたのが
こんな形状・・・
真ん中にソーセージを刺してやろうか
と思ったが
このご時世なので自粛した
この空間に
馴染めてきたか・・・?
少し余裕も出てきて
ハムカツとも目を合わせる
セツコさんにお願いすると・・・
七輪で焼くですとっ!!
素敵ですぅ
めっちゃいい仕上がりっ!!
これが屋台のハムカツじゃいっ!!
何がいいって
焦げている
ところが愛おしい
ハムカツの焦げ
っていうタイトルの
酒場小説をいつか書きたい・・・
ヤツを迎える準備万端
いい頃合い
熱燗を所望すると
七輪やかんで育てて下さる
小さな徳利カタカタ鳴った
セツコさんは僕の体を抱いて
なんてことはモチロンないが
耳ざわりがいい
激熱のお酒が
喉を通る快感たるや
これだけで幸せだが
もうちょい欲張って・・・
おでんの
お代わりも頂こう
何を貰おうか・・・?
さつまあげとロールキャベツと
当初から主張しまくっていた
人参
をチョイス
おでんにニンジンて何やねん・・・
正直苦手な野菜だ
ただ・・・
旨い・・・
屋台がニンジンを旨くする・・・
寒さが熱燗を旨くする・・・
ゆたかで
呑ってる自分が好きだ・・・
「ママー 新聞みたよー」
「ママ 聞いてよ こないだ銭湯で裸見られちゃった」
「ネットにも載ってたよママー」
気付くと
ご常連で店は賑わっていた
セツコさんが
両親からこの屋台を受け継いだのは
47年前
当時は16軒も屋台が並んでいたそうな
保健所から新しいルールが作られた
それは
一代で閉めなければならない
という理不尽なモノ
後継者がいようがいまいが関係ない
一つ減り 二つ減り
10年前からはゆたか1軒になった
セツコさんとご常連の会話を聞いてるに
ゆたか
は大宮の誇りだというのがビシビシ伝わる
セツコさん
お疲れ様でした
あのジョッキには
綺麗な花が活けてあった・・・
いつの間に・・・
女性っぽいな・・・
愛されるわけだ・・・
最後に一つだけ質問させて頂いた
「ママさん」
「何だい」
「女性がやられてる店なのにですね」
「うん」
「なんで店名が ゆた」
ガタンゴトン♪ ガタンゴトン♪
「えっ なんだって??」
「あっ・・・ いや・・・ ありがとうございました」
ゆたかを後にした
質問は
ゆたかの酒場BGM
電車の音にかき消された
まぁ
わからないままでもいいじゃないか
それも含めてカッコいい
【閉店】おでん屋台 ゆたか(おでんやたい ゆたか)
住所: | 埼玉県さいたま市大宮区仲町1-15 |
---|