船橋「花生食堂」その時は必ずやって来る
いつか行こうと思ってる店ってありますよね
ただそんな店に限って遠かったり
自分の行ける曜日には定休日だったりで
なかなかタイミングがない
一番嫌なのがその店が
いつのまにか閉店してしまってることだ
僕で言えば
南千住 大利根
三ノ輪 遠太
向島 大久保酒場
などは後悔してもしきれないぐらいだ
木場の河本も休業中
行っとけばよかった・・・
食べログの掲載保留のマークは
戦争ぐらい嫌いである
先日プロ野球の二軍の試合を観にいった
大のタイガースファンの僕は
電車で1時間かけて西船橋までいき
バスで40分かけて日本ハムの二軍の本拠地
鎌ケ谷スタジアム
で若虎達の応援をしていた
阪神の勝利にゴキゲンな僕に
もう一つのご褒美
船橋の名店
増やまに立ち寄った
素晴らしいお店だった
球場で飲んで増やまで呑んで
そこそこ酔っ払った状態で
船橋界隈を散歩していた時
一軒の食堂が目に止まった
僕はハンマーで
後頭部を殴られたような衝撃をうけた
凄い佇まいや・・・
そしてこの食堂には
いつか来ようと思っていた
こんな出会い方するんや・・・
しばらくこの威風堂々とした
建築物
をながめてから暖簾を押した
渋すぎる・・・
壁や柱に哀愁が染み込みすぎている
4人掛けのテーブル一つと
6人座れるカウンターのみの小さな店だ
先客はテーブルに3人とカウンターに2人の先輩方
日曜日の明るいうちから
皆様出来上がってらっしゃる
よそ者
の僕をチラッと睨む
ちと怖し
「いらっしゃーーい」
可愛い声が聞こえた
店員さんは
なんとお母さん一人である
70代だろうか
重量挙げで銅メダルを取った
三宅宏美似のチャーミングな女性だ
「飲みますか?」
「はいっ」
と言ったものの
飲み物のメニューがなく
咄嗟に隣の先輩が呑んでいる
「ビール下さい」
「はーいー」
お母さんは瓶ビールの線を抜き
僕の前に置くと
「どうぞー」
とお母さん自らグラスに注いでくれた
お酌して頂く喜びを
噛み締めていたら
「わー ビール美味しそうねぇ 私も頂こっ」
えっ?
お母さんはカウンターに入り
瓶ビールの栓を抜きグラスに注ぐと
グビグビと飲み干した
おっ おかあさん 飲むんや
「ママー 今日はよく飲むねー」
カウンターの先輩が言う
「そうなのよー 昨日あんまり飲めなかったんで今日は頑張らなきゃ」
よく見るとビールはチェイサーよろしく
ハイボール的なものも交互に飲まれている
ママさん 努力家でらっしゃる
短冊メニューも年季が入っている
冷奴を貰いビールで流し込む
ちょっと催し
ママさんに
「トイレどちらですか」
「奥どうぞー」
奥?
この店は台所の奥が住居になってるのだが
トイレはなんと住居を突っ切って奥にある
この雰囲気・・・
子供の頃いったおばあちゃんの家の感じが蘇る
この店・・・
色々知りたい・・・
「阪神のお兄さーーん」
トイレから帰った僕に
4人掛けで酒盛り中の先輩が言う
「えっ?」
その日僕はタイガースのキャップを被っていた
「はっ はい!!」
「阪神好きなの?」
「あっ そうなんです 今日鎌ケ谷に阪神が来てて見に行ってたんです」
「へー 阪神で千葉といえば掛布がいるねぇ」
「掛布今日見ましたよ 今二軍監督なんで」
「あいつ習志野高校なんだよなー 俺の地元でさー」
掛布の話で盛り上がる
さっきまで完全にアウェーだったが
花生食堂
との距離が縮まった
有難うミスタータイガース
これはチャンスと先輩やママさんに
この店の事を聞いてみた
「ママー もうこの店は80年ぐらいやってるよなー」
ママさんはハイボールをすすりながら
「そうねー アタシはそのうち50年ぐらいだけどね」
どうやらママさんの亡くなられた旦那さんのご両親が立ち上げたお店らしい
「嫁いだ頃は凄かったわよー」
ママさんは楽しそうに話してくれる
「近くに大きな市場があってね 毎日お米100キロ炊いてたんだから」
先輩方は
「俺のオヤジは毎日ここで昼飯食って夜酒飲んで 家が貧乏だったのはこの店のせいだよ」
「俺もほとんど毎日来てるから もう2億円ぐらいこの店に使ってるよ なー ママー」
「たけちゃん通いだしてから40年ぐらいか たぶんトータル2万円ぐらいよ」
色々聞けて嬉しい・・・
後継の事も聞いてみた
ママさんは
「娘がいるんだけどね あの子はやらないよ アタシで終わるんじゃない」
と明るく仰られた
隣の先輩が食べている
親子丼が羨ましいがどうにも満腹だ
時価の魚定食やいかさしみも気になるが
宿題にしよう
「ご馳走様です」
「お兄ちゃん ありがとうね」
そろばんを弾きながらママが言う
「こちらこそ また腹減らして来ます」
ママと先輩方に会釈をし店を出た
そしてもう一度
花生食堂
を眺めながらつぶやいた
「間に合った・・・」
花生食堂(はなしょうしょくどう)
住所: | 千葉県船橋市本町4-16-30 |
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TEL: | 047-422-6565 |
営業時間: | 10:30~19:00頃 |
定休日: | 不定休 |