なんばグランド花月

 

 

 

 

 

説明不要の

お笑いの劇場だ

 

僕は２０年ぐらい前

一時　この劇場にいつも出演していた

 

年の頃ならハタチそこそこ

 

おっ

そんな若さで

お笑いの殿堂NGKの舞台に立てるなんて

凄く売れてたんじゃないか？？

 

なんて思われる方も

いらっしゃるかもだが

実は

昼の師匠方が出られてる舞台ではなく

夜　に出演していたのだ

 

ヨルヨル寄席

と　題して

世間では無名の若手芸人が

昼より圧倒的に少ないお客さんの前で

漫才をやっていた

 

今は無き

心斎橋筋２丁目劇場と

NGKの夜が

僕らの主戦場だった

 

しょっちゅう

心斎橋や難波にいるので

飯を食うのもそこらへんばっかり

 

圧倒的に多かったのが

牛丼と立ち食いうどんだったが

天下一品やニューライトなんかも

頻繁に通っていた

 

 

 

 

そんな中

芸人御用達の店

の情報も入ってくる

 

 

「先輩方　あの店で食うてから劇場入るらしいで」

「うわっ　俺らもいってみようや」

「なんか　イキッてるみたいでイタないかなぁ？」

「ホンマやな　売れてからやな」

 

 

てな感じで

若手は躊躇してしまうのだが

まぁ　大体程なくして

先輩や社員さんに連れて行ってもらって

童貞を卒業するのである

 

そんな

大阪芸人飯の代表格が

ちとせ

 

 

 

 

ご存知の方も多いだろう

肉吸いと小玉のセットが有名だ

 

肉うどんのヌキと

小さな玉子かけご飯

 

僕は

初めてこれを食べた時

物足りなすぎて

帰りに立ち食いうどんを食べた記憶がある

 

まぁ　花紀京さんが

二日酔いの時に生まれたメニューだから

ハタチそこそこの成人男性なら

必然的にそうはなるか・・・

 

 

そして

この店も有名すぎる

 

 

信濃そば

 

 

信濃そばが１１月いっぱいで閉店すると

カリスマジュンヤに聞かされたのは

１１月の末の事

 

 

「いやいや　いきなりすぎるやろっ！！」

 

 

と　声を荒げてしまったが

思い出したこともあった

 

 

 

去年　味論と一緒に信濃そば行ってる・・・

 

 

 

 

 

 

「せっかくの大阪だべさ　うどん食いたいっぺよ」

「味論　東京のうどんでも　味薄いって思ってんねんやろ」

「んだ　オラの田舎の秋田のうどんのダシは　墨汁くらい濃いっぺよ」

「そんな味覚で　関西のダシの良さわかるんかいな」

「わかるっぺよ！！　最近は　なか卯のうどん大好きだ！！」

「そうかいな・・・　NGKの裏に有名なとこあるから　いってみるか・・・」

 

 

信濃そばの

暖簾を押した

 

 

 

 

相変わらずの

狭さ

の　信濃そば

 

僕もここにくるのは

１５年ぶりぐらい

 

懐かしさで

しばらく席にも着かず店内を見渡して

心の中で

ただいま

なんて呟いたりしてみる

 

 

 

 

この雰囲気と

店中に広がる

ダシの香りが堪らない

 

僕ら以外に

お客さんはいない

 

一番奥の席に

陣取らせてもらった

 

 

 

 

 

とりあえず

ビールで喉を掃除する

 

当時は

ここでお酒を頼んだことはなかったので

漬物を出してもらえることを

初めて知った

 

 

 

 

「何頼むっペよ？　ここで一番うんめえのなんだべ」

 

味論が鼻息を荒くしている

 

 

信濃そばといえば・・・

 

 

 

 

肉うどんか

 

 

 

 

カレーうどんが

大人気だが

純粋なダシを味わいたかったので

 

ここはあえて・・・

 

 

 

 

きつねと

 

 

 

 

おにぎりを

貰った

 

 

 

 

この

俵型のおにぎりが

いかにも関西っぽくていい

 

思い返せば

きつねとおにぎり

っていう組み合わせ

こっちに住んでる時は

めちゃめちゃ食べたなぁ・・・　

 

 

 

 

 

「うめえっぺよーーこのうどん　あ～　うめえっぺよ～～♪」

 

と　味論が

おかけんたゆうたの

けんたさんバリのええ声で歌っている

 

 

僕も１５年ぶりの

コイツを一口・・・

 

 

 

ダシがうまいっ！！

 

 

これは

僕の好みなのだが

きつねって

お揚げさんの絶妙の甘さが染み出て

出汁が最高の味になってる気がする

 

肉うどんでもいいのだが

ちょいと僕には甘すぎる

 

やっぱり

きつねや・・・

 

 

 

 

足して

８０歳を超える二人が

きつねとおにぎりを分けあって喰らう画が

気持ち悪るすぎるが

旨さにかわりはない

 

 

おにぎりを頬張り

まだ口の中にソイツがいる状態のところに

うどんのダシで追っかけて

噛むのも適当に

喉に流し込む

 

この感触は

気持ちよすぎる・・・

 

 

 

 

二人で

あっという間に平らげた

 

 

もっと食いたいなぁ・・・

 

 

味論も

大層ご満悦のご様子で

 

「まだまだ食いたいっぺよ！！　肉うどんとカレーうどん頼むっペよ！！」

 

と　いきり立ってらっしゃるが

この時は

あと数件ハシゴしたかったので

 

「まぁまぁまぁまぁ　その二つは宿題にしとこや　次行くで！！」

 

と　信濃そばを後にしてしまった

 

 

 

まさか

１年後にこうなるとは

知る由もなかったので・・・

 

 

 

味論よ

申し訳ない・・・

 

 

 

 

その時は必ずやって来る

 

どんな店にも

必ずやってくる

 

それは悲しいことかもしれないが

その悲しみの

何倍もの感情で

 

ありがとうございました

 

と心の中で叫ぼう

 

あと

最近　声に出して叫ぶことがある

 

 

 

 

 

あーーー！！

やっぱ肉うどんと

カレーうどん

食っとけばよかったーー！！

 

 

 

 

 

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