神奈川「みのかん」あの酒場BGMが聞きたくて・・・
大阪の堺に
深夜から営業を開始する
天ぷら屋さんがある
大吉
開店前から
店の前に行列ができ
深夜0時にはお客さんで
ギュウギュウだ
絶品の天ぷらで
呑むのもよし
ご飯を食べるのもよし
各々思い思いの
楽しみ方をなさっている
そんな大吉で
ぼぼ皆様が注文するのが
アサリの味噌汁
これでもかってぐらいの
アサリの量で
嬉しい限りだ
ただ
ちょっと変わっているのが
大吉では
お客さんがこのアサリの殻を・・・
床に捨てていくのだ
必然的に
お客さんや店員さんが
貝殻の上を歩くことになる
すると
シャリシャリ
と 耳障りのいい
殻が割れる音がする
大吉の
酒場BGM
は
この音ではないだろうか・・・
食器が重なる音
グラスの氷をかき回す音
お客さんの笑い声
店員さんの威勢のいい声
酒場は様々なBGMを奏でるが
ここまで特徴的な音を発する店は
珍しくはないか
あっ・・・
あの店もそうだった・・・
その店は
京急線の神奈川という駅が
最寄りだ
駅からは近くはない
坂道を下り
国道15号線を左に曲がり
滝の川の手前の道を
少し入るとたどり着く
場所が住宅街だけに
看板と暖簾がなければ
ただの民家と
みまごう佇まい
という文字が
古い酒場に来たぞ
という気持ちにさせてくれる
扉を開くと
コンクリの床に
すがれた丸椅子とテーブル達
飴色の壁
外から照らされる光が
それらを包み込み
神秘的
とさえ感じてしまう
カウンターもまたいい
このカウンターを
舐めるだけで
長年 先輩方が垂らした酒が
染み込んでいて
多少酔えるのではないか
と
思わされんばかりの
年季の入り方だ
そのカウンターに腰をかける
お客さんは僕以外
ご夫婦と思わしきお二人だけ
静かな空間が心地いい
ホントにカウンターを舐めてやろうか
なんて思ってみたりもするが
財布が空ではないので
お父様
が出して下さる
お酒に頼ろう
「いらっしゃいやし」
お父様は
優しい口調で仰る
「ビールを下さい」
お父様は
派手に
瓶の栓を抜いて下さる
栓はカウンター内の
床に落ちる
お父様は
それを拾わない
ビールと一緒に
おでんも出して下さる
お通し
の 域を超えた
おでんのボリューム
これだけで
ビール瓶は空いてしまう
「チューハイを下さい」
お父様は
派手に
炭酸の瓶の栓を抜いて下さる
栓はカウンター内の
床に落ちる
お父様は
それを拾わない
焼酎の量がモノ凄い
これは何かと
戦わせ
なければ
中でたまご・・・?
中どうふ・・?
迷った挙句
かまぼこと冷奴を貰う
これまた
ボリューム満点
タップリのおツマミと
濃ゆい濃ゆい
お酒が目の前に
幸せだ・・・
これは長期戦になりそうだ・・・
かまぼこなんかは
ツマんでもツマんでも
一向に減らない
お父様に
チューハイのおかわりをお願いする
お父様は
派手に
炭酸の瓶の栓を抜いて下さる
栓はカウンター内の
床に落ちる
お父様は
それを拾わない
ポケットに入っていた
文庫本なんぞを取り出してみる
1行読んでは
お父様とお客さんの会話に
気を取られ
2行読んでは
店内を見回したくなり
キョロキョロと
集中できない
おそらく僕は
本の内容より
みのかんを楽しみたいのだろう
それを
ポケットにしまい
ただただ
ぼーっと店内を眺め
ただただ
みのかんの音に耳を傾け
チューハイをすすった
ジャリジャリジャリ
気になる音が時々聴こえる
ジャリジャリジャリ
どうやら
お父様が歩かれると
その
ジャリ
は 奏でられる
コンクリと小さな鉄たちが
重なり合うような音
これは・・・
お父様・・・
おそらくカウンター内の床は
拾わずの瓶の栓が
沢山落ちたままなんじゃないですか・・・?
歩くたびにソイツらを
踏んづけたり蹴散らしたり
してるんじゃないですか・・・?
ジャリジャリジャリ
この音・・・
なんか好きだ・・・
お会計をお願いすると
お父様は
そろばんで計算なされていた
帰り際
「すいません 一緒に写真撮ってもらえませんか?」
と お父様に聞いてみた
お父様は
快く承諾して下さった
本当に有難う御座いました
「また来ます」
そうお父様に告げて
みのかんを後にした
あの
ジャリジャリジャリ
もう一度聴きたかったな
お父様
心より
ご冥福をお祈り申し上げます
【閉店】みのかん(みのかん)
住所: | 神奈川県横浜市神奈川区青木町10-13 |
---|---|
TEL: | - |
営業時間: | 10:00~20:00 |
定休日: | 水曜日 日曜日 祝日 |