彼女に会いたい・・・

 

今日は会えるだろうか・・・？

 

アソコヘ行こう

 

 

 

 

そんな思いを馳せながら

たどり着いた向島

 

胸が高鳴りすぎている

 

心を落ち着かせなければ

 

少し散歩してみるか

 

 

 

 

この辺り

 

独特の雰囲気を醸し出す建物が多いな

 

 

 

 

カフェー建築・・・？

 

元遊郭の建物なのか・・・

 

豆タイルは特徴の一つですと

 

 

 

 

バルコニーがあり

壁が曲線を描いている

 

これも間違いないんですな

 

 

 

 

当時は2階から天使が

道を歩いている男に声を掛けていたのだろう

 

彼女も僕に声をかけてくれないだろうか

 

 

 

 

着いちまったか・・・

 

大衆岩金酒場

 

ずっと眺めていられるこの外観・・・

 

すがれたとか朽ちたという言葉は

酒場においては

化粧

と表現してもいい

 

 

 

 

ほおずきなんぞを持ってきてみた

 

彼女が店の中に居れば

さりげなくプレゼントしてみるか

 

貰ってくれるかな・・・？

 

 

 

 

カウンターにもテーブルにも

彼女の姿はない

 

残念なような

ホッとしたような

 

緊張してるな僕

 

 

 

 

「いらっしゃい」

 

「どうも」

 

「あら綺麗な　ほおづきね」

 

「あっ　はい」

 

 

 

 

「アタシに持ってきてくれたのね」

 

「あっ　あっ　はい」

 

「ありがとね」

 

 

まぁ　いいか

 

 

 

 

時間もまだ早い

 

呑りながら時間が経つのを待とう

 

ふと彼女が現れるかもしれない

 

若大将　今日も男前ですね

 

 

 

 

岩金の

牛レバー焼き

が好きだ

 

ここに来れば必ず頼む

 

 

 

 

この色艶よ

 

口に含むと

フワッ広がる甘みが堪らない

 

お近くの丸好酒場のレバーも最高

 

東向島6丁目に住みたくなるぜ

 

 

 

 

ビールからハイボールへと移行

 

炭酸は野中食品工業のKagetsu

 

余談だが

野中食品工業があるのは

四ツ木と新小岩ちょうど真ん中ぐらい

 

陸の孤島なので行き辛くはあるが

食堂島村やモンチッチ公園なんかが近くにあるので

立ち寄る価値のある一角だ

 

 

 

 

お次のツマミはどうしよう

 

わさび味の

のりチーズにも惹かれるが

いかにも岩金ってヤツいっとこうか

 

 

 

 

遊び心墨田区代表

もんじゃグラタン

 

 

なんて

ホッコリするビジュアルなのでしょう

 

タコさんウインナー同様

人を笑顔にさせる

魔法の食べ物

もんじゃグラタンにて候

 

 

 

 

ソースせんべいが

今年の干支の動物のお耳のように

ピョンと飾られ

愛おしさ最高潮

 

コイツがまた旨いというから

けしからん

 

 

 

 

まぁまぁな年齢の男が

こんな子供のオヤツみたいなモンを

チビチビやっている

 

 

彼女に見られたら

恥ずかしいな

 

 

 

 

彼女はまだ来ないのか・・・

 

うん

 

気長に待とう

 

 

 

 

子供のオヤツ繋がりだ

 

ハムカツもいってみよう

 

おっ

初めて頼みましたが

四角いんですね

 

 

 

 

少し厚めに切られた四角いハムカツが

四等分にされている

 

一つの大きさは・・・

 

オヤツで例えると・・・

 

ブルボンのバームロール１本分ぐらいだ

 

 

 

 

彼女は・・・

 

まだか・・・

 

 

いかんっ！！

 

あんまりキョロキョロしてると

僕が彼女目当てで長居してるのが

バレてしまうぞ

 

目立たぬように　はしゃがぬように

似合わぬことは無理をせず

だ

 

 

 

 

呑もう　食べよう

 

純粋に岩金を楽しみ

その延長線上に彼女が居ればラッキー

ぐらいでいいじゃないか

 

重いのは

 

嫌われる

 

 

 

 

うおっ！！

 

くたばれミシュランッ！！

 

 

先生

すごいキャッチコピーですね

 

いろんな酒場の一押しメニューが

掲載されてる本

 

岩金の逸品は・・・？

 

 

 

 

にら玉なんですね

 

そういや

丸好酒場もにら玉が絶品だったな

 

東向島6丁目恐るべし

 

ボールをおかわりして

にら玉で〆ようか・・・

 

 

 

 

一転

戻りビールからの

中華そば

にしてしまった

 

〆る

という頭で見つけてしまったら

もう我慢できない中華そば

 

 

先生すいません・・・

 

にら玉は次回の１品目に頂きます

 

 

 

 

なんて理想的なラーメンなのでしょう

 

醤油ラーメンというよりも

ノスタルジックラーメンと呼びたい

 

丼を両手で持ち上げ

レンゲを使わずチョクでスープを・・・

 

おほっ！！

 

口中に体にスープがシュンでいく・・・

 

 

旨いっ！！

 

 

このオーダーで大正解

 

注文ひっかけ問題を解くカギは

自分に嘘をつかない

ただそれだけだ

 

 

 

 

欲望のまま麺を啜り上げ

咀嚼もそこそこに

ゴクン

と喉に通らせる

 

気持ちいい

 

 

 

 

具だくさんで

戻りビールがまた空に・・・

 

ぬぬ・・・

 

 

「あっ　すいませーん」

 

 

 

 

宇治抹茶ハイなんぞ追加してしまい

とどまれない酒場ルーチン

 

 

にら玉・・・

 

我慢我慢

 

 

 

 

彼女には会えなかったが

大満足

 

ズレた間のワルさも　それも僕のタイミング

 

スマートに振る舞っておけば

時は来るだろう

 

がっつかず　グイグイいかず　

 

 

「すいません　お会計を・・

 

 

んっ！！」

 

 

 

 

「おー　チーコっ！！」

「お客さん　お会計？」

「現れてくれたんやねっ！！」

「お客さん」

「チーコチーコチーコ　会いたかったっ！！」

「お客さん」

「お会計キャンセルして下さいっ！！」

「へ」

 

 

 

 

 

「追加でボールと　にら玉　あとカレーライスをっ！！」

 

 

 

 

 

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