秩父「パリー食堂」オバちゃんめっちゃパンチあるやんっ!!
特急電車に乗るのってワクワクする
ゆったりしている座席
リクライニングする背もたれ
その空間ではある程度の自由が許される
自分だけの城が車内にある
日々東京の満員電車に
乗り慣れているせいもあって
その非日常感
特別感
優越感が堪らない
そこにお酒があれば
なおさらだ・・・
西武線のレッドアロー号で
秩父にいく為に池袋に来た
駅の売店で
お酒とおツマミを購入し
ゆっくり乗り込み座席を探す
好きな時間だ・・・
窓際の席に陣取りセッティングをする
すぐに缶をあけ
おツマミを開いてもいいのだが
なんとなく発車するまで待ってみたりする
好きな時間だ・・・
それにしても
チーズ鱈って最高のカワキモノだ
これを考えた人に何かあげたい
なとりさん有難う御座います
発車しハイボールをすすり始める
この時間を楽しむぞ
と 思っていたのだが・・・
この前に
池袋の若大将まつしまで
少しガソリンを入れていたせいか
早々に寝てしまった・・・
まぁ
これも特急の醍醐味だろう
起きると
秩父に到着していた
羊山公園
橋立鍾乳洞
三十槌の氷柱
秩父神社
など
いくつもの観光スポットがある秩父だが
そういう場所には目もくれず
僕が
向かったところは
出たっ!!
パリー食堂
最近どうも
店構えにハマっていて
「パリーも渋いでー」
なんて酒友に聞いて
ウズウズしてしまい
拝みに
来てしまったのである
打ちっぱなしすぎるコンクリートの
西洋っぽい佇まいに
カタカナでパリーの文字
渋すぎる・・・
窓の感じも可愛らしくて仕方がない
年季の入った
スプライトのステッカーがまたいい
右から書くパリーの文字も堪らない
ワクワクしながら
暖簾を押した
店内もいい
やはりそのままのコンクリートの床に
年季の入ったテーブルと椅子が
僕の心のやらかい場所を
ギュンギュン
に締め付けてくる
ストーブの上にやかんって好きやー!!
このやかんの熱湯なら
ちょっとぐらい顔にかけられても
笑っていられる・・・
ご覧の通り客は僕だけ
店内が見渡せる
入口付近のテーブルに腰掛け
これまた渋い店員のお父サマに
ビールをお願いした
マスター・・・
お一人でやられてるんですね・・・
おヒゲが素敵ですね・・・
寝起きのビールが
旨いっ!!
さてツマミも
と
やおらメニューを眺めてみる
餃子 ニラレバ 八宝菜 チャーハン
中華もあれば
エビフライ ポークソテー
親子丼 カツ丼 オムライス
と なんでもござれだ
そういや最近食べてへんな
と思い
シューマイをお願いしてみた
美味しい
しっかり
手作りしてまっせ感
があるシューマイ
マスター・・・
流石です
ビールはすぐに飲み終え
日本酒を貰ってみた
秩父錦
という銘柄
常温でお願いしたのだが
燗で頼めば
あのやかんに突っ込んで温めててくれたのかなぁ
なんて考えたりする
せっかく秩父まで来たのだから
もう一品何かと
オムライスもお願いしてみた
すると・・・
出たっ!!
お冷スプーン!!
もう絶滅してしまったのではないかと思っていた
コイツを見れるなんて・・・
パリー食堂・・・
魅力が止まらない・・・
そして・・・
オムライスが
また派手っ!!
主役の存在感を
かき消さんばかりの
付け合せ達
バナナとスイカものって
オムライスアラモード
だ
主役も負けちゃいない
玉ねぎの食感が残ったチキンライスに
固い玉子を巻いたヤツ
とろーり
なんて軟弱なアレではなく
力強い昭和のヤツ
オムライスはこれでいい
いや
これがいい
秩父錦をチビチビ
オムライスもチビチビやっていると
マスターが厨房から出てこられ
野球中継をどっしり見始めた
この感じいいなぁ・・・
酒とパリーに酔わされ
気持ちよくなっていると
一気に酔いの覚める登場人物が現れた
「ヨッちゃーん 生きてるかーー!!」
オバサマのお客様が2人
大声を出しながら
店の中へ入ってきた
「ヨッちゃん おっ 死んでないねー」
「あっ おけいさん いらっしゃい」
「昨日夜休んでたろー」
「うん」
「休んで女買いにいってたんだろ」
「いってないよー」
「言ってくれればアタシ相手してやるよー ギャハハハハ」
どうやらマスターは
ヨッちゃん
というお名前らしい
お姉サマ方とは旧知の仲なのだろう
さっきまで
野球中継のボソボソとした
実況音しか聞こえなかったパリーが
一瞬にして
阪神がチャンスの時の
甲子園のライトスタンドぐらい騒がしくなった
と言っても
騒がしいのはこのおけいさんだけ
もう一人のオバサマとマスターは
ほとんど相槌ぐらいなもんだ
おけいさんは僕を見つけると
獲物を見つけたかのような目をして
話しかけてきた
「おっ お客さんいるじゃん どうもー おけいですー」
「あっ! どうも」
「どっから来たんだい」
「東京です」
「今までどこ観光してたんだい」
「いや どこも」
「なんだ これから行くのかい」
「いや 帰ります」
「あん? ここだけで帰んのかい」
「はい」
「お前バカじゃねのかよ こんな店わざわざ東京からくるようなとこじゃねえよ」
「いや でも楽しいです 登録有形文化財なんですよね このお店」
「古いだけだよー」
「素晴らしいと思います」
「変なヤツだなぁ まぁ飲めよ」
そして僕のグラスに
ビールを注ぎ始めた
もう全てが
おけいさんのペース
になっている
「これ 食えよ」
おけいさんは外で買ってきた唐揚げを僕にくれた
「どうだい この店のよりうめえだろ ギャハハハハ」
とにかく口が悪い
ただ・・・
マスターは膝に猫をのせながら
おけいさんを
笑顔で眺めてらっしゃる
マスターの初恋の人は
おけいさん
だったんじゃなかろうかなんて
思ったりもする
なんか
素敵です・・・
気付くと夕暮れ
長居すると酔いに任せて
野暮なこと聞いてしまいそうなので
宿題
を残しお暇することにした
帰り際
おけいさんが僕に言った
「また来てなー」
あんなにボロクソに言ってたクセに・・・
そして
来てあげてな
じゃなくて
来てな
この二人・・・
絶対なんかある
実は
付き合ってたこともあるんじゃないか
なんなら
1週間ぐらい結婚してたことあるんじゃないか
とも思ったりしながら
また特急に乗った
パリー食堂(はりーしょくどう)
住所: | 埼玉県秩父市番場町19-8 |
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TEL: | 0494-22-0422 |
営業時間: | 11:30~20:30 |
定休日: | 不定休 |