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【課題研究】私立ポテトサラダ学園 2年・メークイン組、起立!!

 

キーンコーンカーンコーン

 

夏休みも明けた、9月初旬の朝――。

 

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ここは、『私立ポテトサラダ学園 2年・メークイン組』の教室。
『私立ポテトサラダ学園』とは、”ポテトサラダ学”を専門に学ぶことが出来る学校であり、全国からポテトサラダについてを学びに生徒が集まる。

 

今日は夏休みの宿題にある”課題研究”、『ポテトサラダ研究発表会』の日だ。
生徒達は夏休みの間、自らが選んだ店の『ポテトサラダ』を調査し、夏休み明けの本日、みんなの前で発表するのだ。

 

そろそろ、この教室の担任教師が来る頃だが……。

 

 

 

ガラガラ

 

「起~立!!」

 

立ち上がる生徒達。

 

「おはようございます、『味論先生』!!」

「はい、おはようございます」

「着席!!」

 

“内申点”にも大きく影響するこの発表会では、生徒たちの表情も一様に緊張気味である。

担任教師の『味論先生』が、辺りを見渡して言った。

 

「今日の日直は誰だー?」

「ワイです!」

「ああ、イカか、……カリスマジュンヤの姿が見えないようだが」

「カリスマジュンヤくんは今日も遅刻してまんねん!」

「またか、こんな大事な日に」

 

生活指導主任から何度言われても、校則違反である”金髪”も直さないカリスマジュンヤは今日も遅刻のようだ。

 

 

 

「全員揃ってないが仕方がない、始めるか。 これから夏休みの課題研究である『ポテトサラダ研究発表会』を始める。順番に手を挙げてから発表するように――」

 

「ハイッ!!」

「お、じゃあ学級委員長の吉田からだな」

 

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「僕が夏休みに研究したポテトサラダは、恵比寿の『栃木屋』さんのものです!」

「恵比寿とは随分オシャレな街のポテトサラダだな」

 

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「そうなんです!初めて行ったときに、”オススメってなんですか?”と店員さんに聞いたらポテトサラダって言うんで珍しいなぁと思って頼んだら、見た目や味付けはすごくシンプルだけど、ついつい箸が進んでしまう”クセになる味”のポテトサラダだったんです!オススメしてる芸人さんもいるみたいなんですよ!」

「なるほど、これは確かにシンプルだ。だが、先生もあまりゴチャゴチャ具が混ざってないのが好きだな」

「ありがとうございます!引き続き研究してみます!」

「よし、じゃあ次は誰が発表してくれるかな?」

 

「はぁ~い!!」

「夏川、お前は今日も恰好が派手だな。まぁ、頼む」

 

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「あたしがぁ~、お勉強したぁ~、ポテサラは~、清瀬駅の『みゆき食堂』でぇ~す!」

「おお、『みゆき食堂』と言ったら”孤独のグルメ”で有名なところだな」

 

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「そうなのそうなのぉ~!まずね、見た目が超可愛くないですかぁ~?アイスみたいなのが~ポンポンポンて3つ並んでて超ヤバくない!?マヨネーズも横にちょこっとあって~、あ~超かわいい~!」

「たしかにアイスディッシャーで盛り付けしたみたいだな。なんだか先生、子供の頃行ったレストランを思い出して懐かしくなったよ」

「超イイ感じじゃなくなくなくな~い!?」

「……お前はまず、そのしゃべり方を治した方がいいぞ夏川。 じゃあ次は誰かな」

 

「オラが行くだぁ~」

「じゃあ、東北出身の佐々木」

 

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「オラはやっぱす、野毛の『宮川橋もつ肉店』だべなぁ。夏休みに横浜さ遊びに行った時、これ食べで驚いたんだよぉ~」

「んー?普通のポテトサラダの上にマヨネーズがかかってて、さらにその上にニンニクチップを乗せてるのか」

「んだよぉ、さすがは大都会だべ、オラの村さは”こったら”モダンな食いモンなんかね~べよぉ~」

「このマヨネーズの主張ぶり、いいポテトサラダを研究したな佐々木。 よし、じゃあ次の発表者だ」

 

「あ……、はい…わたしで、……お願いします」

「んー? ああ、いつも物静かな木下か。じゃあよろしくな」

 

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「は、はい……! あの、わ、わ、わたしは笹塚駅の『大國家』さんのポテトサラダを研究してきました……、すいません……」

「どうした木下?そんなに緊張してるとポテトサラダに笑われるぞ?」

 

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「は、はい、すいません……。えーと……、ここのポテトサラダは手作り感がすごくあって、ちょっとお年を召されてる女将さんがこれを出してくれると、なんだか……ホッとする感じがして……」

「ああ、先生もその感じわかるぞ。おばあちゃんが作ってくれるポテトサラダって手が込んでてうまいよな」

「あ……はい!そうです、そういうことなんです……!」

「彩も良くて、いいポテトサラダを研究してきたな木下。 よーし、次は誰だ?」

 

「んじゃま、そろそろ僕の出番かなぁ~?」

「財閥御曹司の白鳥か。まさか、西麻布の高級レストランのポテトサラダか?」

 

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「ノンノン! 僕くらいになるとさ、高級レストランなんか飽きちゃってるじゃん?逆に東大島駅の『八丁目仙台屋』みたいな”激渋”なショップがマジアツイよね~?」

「白鳥ー、お前は金持ちなのにずいぶん渋い大衆酒場を知ってるんだな」

 

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「ハハッ!まーねー!ここのポテサラってさー、普通のショップと違ってほとんどポテトを潰してないんだよね~!そこがまたポテト感があって最高って感じなのサ!」

「荒くポテトを潰すのはよくあるが、ここまで原型が残ってるポテトサラダも珍しいな」

「でしょ~?ここのシェフは天才だよね~!」

「世の中、まだまだ色んなポテトサラダがあるもんだな。 よーし、次だ」

 

「じゃ、アタシ」

「杉本か。今日も一段とクールだな」

 

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「いえ、別に。アタシは国道駅の『国道下』ってとこ」

「”国道駅”に”国道下”か……。なんだかややこしいところを調べたな」

 

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「そうかしら? ここの店って何か”廃墟の地下”にあるみたいで落ち着くんだよね。でさ、他じゃあんまり見ない”リンゴ入りポテトサラダ”なんだ」

「お、リンゴが入ってるやつか。先生は子供の頃、よく給食で食べたぞ」

「アタシ、口に入れたときに感じるリンゴの食感と甘酸っぱさが好きでさ。店の雰囲気も気に入ってるし……、あそこだけかな、アタシが本当に心を許せる場所って」

「”心許せる場所”か。 いいポテト……、いや、いい場所を見つけたな杉本。 よし、次いってみようか」

 

「ワシが発表するったい!」

「九州出身の松尾か。どこのを研究したんだ?」

 

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「ワシは横須賀の『ぎんじ』ばい!店の渋さなんか、九州男児”ばり”に渋かばい!」

「先生も行ったことがあるが、店内はかなり渋いな。お前はどうだったんだ?ここのポテトサラダは」

 

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「バリ勉強になったったい!中州のとんこつラーメンとは逆やけん、あっさりしたポテトサラダは、この店の独特な味付けの煮込みに丁度合ってバリウマかよ!」

「そうかそうか、勉強をしにわざわざ九州からここへ転入した甲斐があったな。 おっと、そろそろ時間がないが、では次は…、」

 

「味論先生!ワイやで!」

「……イカか、お前はどうせ夏休みも酒ばっかり飲んでて、課題研究なんてしてないんじゃないか?」

「アホなこと言わんといてください!めちゃめちゃ研究しましたわ!」

「そうか、すまんすまん。じゃあ発表してくれ」

 

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「よっしゃ! ワイの中でポテサラゆーたら、恵比須駅の『こづち』や!」

「お前も食堂のポテトサラダか。なかなかいい着眼点だな」

 

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「せやねん味論先生!粗めに潰されてジャガイモの主張がしっかりしてて、”イモ食ってる感”を刺激してきて最高に心地いいんや!正直、何も特徴ない味付けやが、それが食べたくてまたここに来てまう!」

「ごく普通な味ってのが”特徴”ってことか。確かに、”大衆好き”なイカらしい選択だな」

 

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「卓上に漬け物も置いてあって、それをポテサラに絡めてみるのも楽しいんや!さらに200円ってのも嬉しいやん!」

「大衆食堂らしく”安く”て”うまい”。これはいい研究をしたなイカ」

「テヘヘやでぇ~!」

 

 

イカの発表が終わった頃、外の廊下からこの教室に向かってくる騒がしい声が聞こえた。

 

「キャーッ!!」

「コラ待てジュンヤー!!」

「どけどけ~!!発表会に間に合わなくなるやないかい!!」

 

それは、他のクラスの生徒や生活指導主任を払いのけて、猛烈に廊下を駆けるカリスマジュンヤだった。

 

 

 

バンッ!!

勢いよく開いた教室のドアの向こうには、カリスマジュンヤが汗だくで仁王立ちしていた。

 

「遅いぞ、カリスマジュンヤ。もう今日の発表会は終わりだぞ」

「待ってや味論先生!ポテサラの課題研究はちゃんとやってきてんで!殺生やないかい!」

「ほー、一応発表できるほど研究はしてきたということか」

「当たり前や!ボクの金髪は、ポテサラのイメージなんやで!」

「……しかたないな。じゃあ自分の席に着いて発表してみなさい」

「ダーッシャッシャッシャッ!!」

 

周りにクスクスと笑われながら、自分の席に着くカリスマジュンヤ。

 

 

 

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「ボクがメッチャメチャ調べたポテサラは『むさし』んとこのや!」

「曳舟駅の酒場か。どうだったんだ、そこのポテトサラダは?」

 

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「とにかく、何故かめちゃくちゃ箸が進むんや!なんでこんなん美味しいんやと考えた結果、やっぱ一番のポイントは豪快にかけられたマヨネーズやろ!!」

「確かに、大量にマヨネーズがかかってるな」

 

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「”マヨラー”のヤツは絶対にハマる一品や!更に驚くんのがこのボリューム!普通のポテサラは小鉢で出される前菜の役割ばっかやけど、デカ目の皿で出されて充分メインとしても戦える一品なんや!」

「ポテトサラダへの愛情、そしてこの全力投球感……、カリスマジュンヤらしいな」

「その通りや味論先生!ダーッシャッシャッシャッ!!」

 

 

 

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カリスマジュンヤの発表が終わると同時に、終業のベルが教室に響いた。

 

「よーし、今回のポテトサラダ研究発表会はこれまでだ。みんなよくがんばってきたな」

「ちと待ってや、味論先生!!」

「ん? なんだカリスマジュンヤ」

「ボクらばっかりで、そもそも味論先生は一体どこのポテサラが好きなんや!?」

「せやな、ワイも今まで味論先生の好きなポテサラ聞いた事ないわ!」

 

イカとカリスマジュンヤが教壇に詰め寄り、にわかに教室がざわめく。

 

 

 

「月島駅の『岸田屋』だ」

 

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教室中にどよめきが起こる。
イカとカリスマジュンヤも驚きを隠せないようだ。

 

「岸田屋やて!?あそこは『煮込み』の有名店やろ!?」

「せやで!”東京三大煮込み”言われてるくらいやからな!」

 

「ふー、 お前らはまだまだ若いな」

「なんやて!?どーゆーこっちゃ先せ…、」

 

「――ゆで卵が入ってるんだ」

 

「なっ……ゆで、たまご…やと…!?」

 

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「ああそうだ。岸田屋のポテトサラダはな、ごく荒く潰したゆで卵が混ざっていて、これがジャガイモ、マヨネーズとの相性が抜群なんだ。あのゴロゴロとした白身のアクセントといったら格別極まりないぞ」

「そ、そら……うまそうやな、なぁカリスマジュンヤくん?」

「ほんまや……、ボクもそんなうまそうなポテサラ、食ーたことないわ……」

 

「お前らは、”岸田屋イコール煮込み”という既成概念に囚われ過ぎなんだ。それじゃあ他の店でも、本当は優れているポテトサラダを見逃しているのかもしれない。それこそお前たちも、まだまだ”卵”から孵ったばかりの”ひよっこ”だ」

 

そう言って、味論先生は二人の頭を軽く撫でた。

 

「……め、目から鱗やで、味論先生!!」

「ボクらポテトサラダのこと、なんも知ってへんかった……」

「いや、それいいんだ、また今学期からも皆で勉強していこう、――ポテトサラダのことをな」

 

 

 

 

 

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私立ポテトサラダ学園――。

彼らの”ポテトサラダ人生”は、まだまだ始まったばかりなのである。

 

 

 

つづく。

 

 

 

この物語はフィクションです。店舗は実在しますが学園、一部登場人物などとは関係ありません。

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miron-201710
【出身地】
秋田県秋田市
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信濃路(鴬谷)
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