秋田「立ち呑み おひとりさま」 独り静かに呑みたいのなら…

法事があるということなので、久しぶりに地元の秋田県へと帰郷することになった。
その合間にでも酒場探しをしようと思っていたが、”外に飲みに行く”というイメージが少ない我が地元。人を自宅に呼んでおもてなしをするのが風習らしいので、そもそも”ディープ酒場”自体ないのでは?と危惧しつつも夕暮れの秋田駅へと向かった。

 

駅前はやはりチェーン店や綺麗に改装された外観のお店が目立つ。
他にないかと、駅から歩いて3分程の場所にその店はあった。

 

「立ち呑み おひとりさま」

 

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建物本体には店名の記載はなく、入口の小さな看板に店名が書いているだけであった。
名前からすると、ふらっと一人で寄って静かに呑むような酒場なのだろう。

とにかく、秋田にも”立ち呑み屋”があったのかと嬉しくなり、外から中を覗いてみる。かなり狭そうだが一応営業はしているようだった。
私は期待を胸に古びたドアを押した。

 

「いらっしゃいませ」

 

2坪あるかないかの店内。カウンターの中から粋な角刈りをした店主が登場した。

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店名に”立ち呑み”と書いておきながら、しっかりと全席に椅子が配置されていた。まぁよくあることと言えばよくある事なのだが。

他に客はおらず、7席あるうちの一番奥の席に体を曲げたり伸ばしたりしてやっと座る。
まずはビールを店主に頼み、彼の粋な角刈りに乾杯する。

続けて「ポテトサラダ」と「いぶりがっこ」と「ホタテバター」を頼んだ。

店主は秋田男子らしく、寡黙だ。これは店名通り、静かに秋田の時間を過ごせそうだ。
彼は、注文した料理を静かに作り、静かに目の前に出すのであった――。

 

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味の方は、出来合いの物に少し手を加えただけなので特筆するものはなかったのだが、この後、寡黙な店主から意外な発言があった。

 

「玉子サービスするよ」

 

(なぜ玉子を…?)と一瞬思ったが、出てきたものに驚いた。

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「この食べ方はスリーミニッツって言うんだよ」と教えてくれたのだが、店主に聞くと、東南アジアに旅行に行った時に宿泊先のホテルで出された玉子の食べ方なのだそうだ。
要するに”3分(スリーミニッツ)茹でて半熟状態で食べる”ということらしい。玉子の頭を切り取ってスプーンですくって食べるだけなのだが、美味しいし面白い。

そしてこれをきっかけに、店主との距離が急速に縮むことになるのだった。

 

店主「俺もね、釣りが好きで色々と車で行くんだよ~」

 

この日は地元の友人と2人で来ていたのだが、秋田の釣り話を始めると突然、店主が会話に入ってくる。

 

私「へぇ~、車でならちょっと遠い穴場も行けていいですね」

店主「まぁでも、一人で行くと大変なこともあるよ」

私「何かあったんですか?」

店主「前に、一人で釣りに行って、車を砂浜に停めてたんだけどね、帰るときにタイヤが砂に嵌って全く抜け出せなくなったんだよ」

私「えぇ?それでどうしたんですか?」

店主「近くにいた子供連れの家族みんなに手伝って貰ったんだけど、どうしても抜けなくてね~」

私「うわぁ、最悪ですね。JAFとか呼んだんですか?」

 

店主「はいっ!! ここで問題です!!」(ジャジャン!!)

 

…もちろん実際に”ジャジャン!!”なんて効果音は鳴っていないが、急に弁舌になった店主からの急なクイズが始まったので一瞬聞こえた気がしたのだ。
少し変な空気になる私達を余所目に店主はクイズを読み上げる。

 

店主「実は、私の持ってきた物で簡単に砂浜から脱出することが出来たのです。その持ち物とは、”ジャッキアップ”と”バケツ”と”脱出機”です。さて、私はこの中からどれを使って砂浜から脱出できたのでしょうか?」

 

まず、”脱出機”て何だ?と思ったが、インターネットで調べても戦闘機からパイロットがコックピットごと噴射されている画像しか出てこない。まさかこの角刈りが車ごと砂浜から噴射して脱出ってことではあるまい。

正直、全然解らないし店主の”これ解るかな?わらないだろ~なぁ?”感がギンギンに押し付けられたので、直ぐにギブアップした。

 

店主「わからない?じゃあ正解はバケツを使ったでした~」

私「バケツ!?」

店主「そう!バケツに海水を汲んできてタイヤと砂の間に海水をかけてやる。そうすると砂が固まってタイヤとの摩擦が起こるから脱出することが出来るんだな~」

 

………ふ~ん。

 

店主「これはね、ネットで調べてもどこにも出てないし、JAFも多分知らない方法で俺がみつけたんだぞ」

私「…なるほどね~、すごいっすね~」

店主「ただね、この前また同じ様に砂浜にタイヤ嵌めちゃったんだけど、この方法をすっかり忘れちゃっててJAF呼んで15,000円もとられちゃったんだよ~、あっはっは」

しっかり”オチ”を付けやがった。
店主のトークショーはまだ続く。

 

店主「そこの後ろに貼ってる写真みてよ」

 

言われた通りに後ろの壁をみると、随分と大きな魚を抱えた男性の写真がたくさん貼られていた。

 

店主「俺の友達の友達なんだけど、”怪魚ハンター”ってのをやっててこの店にも来たことがあるんだよ」

 

“怪魚ハンター”は世界中の海や川に行って、超巨大魚を釣竿一本で釣り上げる人達のことである。
そして店主は写真の状況を一枚一枚説明する。

 

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店主「これは全然小さい方。もっと大きいのも釣ってるよ」

 

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店主「この巨大タコが秋田で釣れたっていうから凄いだろ?」

 

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私「いや、これもう魚じゃねぇじゃん!!」
店主「いやいや、これも大分苦労したみたいよ?」

 

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私「もう釣り関係ねぇだろ!!」
店主「いやいや、これも… …」

 

天然なのか、
作り物のキャラなのか、
あの寡黙だった店主はもうそこにはいなかった。

 

トークショーの途中であったが、次の予定があったため店を出る。
店主はまだまだ話したりないといった表情で、お勘定をオマケしてくれた。

 

 

そして、店を出た後にもう一度看板をみた。

 

「立ち呑み おひとりさま」

 

 

 

店の名前、変えちまえ。

 

 

 

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おひとりさま

ジャンル: 居酒屋
最寄り駅: 秋田駅から226m
住所: 秋田県秋田市中通4丁目16‐18
TEL:
営業時間: 16:00~24:00
定休日: 日曜日

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投稿者プロフィール
2016-11-30-11-56-03
【出身地】
秋田県秋田市
【オススメの酒場】
信濃路(鴬谷)
【お気に入りの酒】
焼酎紅茶割り
【個人SNS】
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