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野田「酒場透泉(中川酒造)」女将さんから〔女の子〕を教えてもらった朝

 

朝活あさかつ》の活動家でもある酒場ナビメンバーは、寝坊気味の冬の御天道様が、まだ昇って間もないころに行動をする。

凛冽な冬の朝に飲む冷えたビール、あえてこれが好きだという呑兵衛も少なくないと思う。

 

 

 

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そんな呑兵衛な私とイカは、朝の八時に大阪梅田から近くの『野田』という駅に来ていた。

私は初めて訪れる街なのだが、この都会に我々が行くような大衆酒場があるのかと疑いつつも、イカが前々から行ってみたかったという酒場へと向うのだった。

 

 

 

『酒場透泉(中川酒造)』

潔い〝酒〟という一文字にして、

幾人もの額や肩を愛撫でてきただろうにして、

――その赤茶の大暖簾が私たちの目の前に堂々と構える。

 

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朝が早すぎるというのもあり、本気で営業中なのかを確認する理由で《暖簾引き》をする。薄暗いが、どうやら蛍光灯は点いているので営業中のようだ。

 

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ガラガラガラとアルミの引き戸を引き中へ入ると、

 

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花やら写真やら賞状やらなんやらが所狭しと店内を占め、その極彩色の中央に人ひとりが通れるほどの細長いコの字カウンターが延びていた。

 

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しかし、客はおろか無人だったので「すんませーん」と呼んでみると奥から女将がひょっこり顔を出した。

 

「仕事帰りかー?」

 

……《仕事帰りか》
私たちに当たり前の如く訊いてきたその一言で、いつもこんな朝早い時間から仕事帰り客のよく来る店なのだと察した。

 

「せやねん。瓶ビールくれまっかー」

 

本当は仕事帰りなどではありもせず、なんなら前日から連休で大阪に飲みに来ていただけなのだが、何となく感じた女将の〔粋な出迎え〕に、イカも同調して仕事帰りということにした。

 

「ひゃっこいでぇ~」

 

……《ひゃっこい》
関西弁なのであろうか、〔ひゃっこい=冷たい〕ということらしく、女将からその〔ひゃっこい〕ビールを受け取った。

 

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たしかに〔ひゃっこい〕ビールであり、頬に当てても〔ひゃっこ〕かった。

「な?ひゃっこいやろ~」という、なんとも愛らしい女将の語り口に、心の方は温まるのだ。

 

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「なに食べはんの?」

女将につまみを促され、周りを見渡すとコの字カウンターのふちに『おばんざい』が並んでいた。その中に『焼きいか』が目に入ったのでそれを頼んだ。

 

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『焼きいか』

〝チン〟と電子レンジで温め直されて出されたこの『焼きいか』は、おそらく味醂で干したり焼いたりしたものであろうが、個人的にこのオレンジ色に照り輝く『焼きいか』には少し思い入れがある。

子供の頃に、酒呑みの父親がたまに肴として作っていたのをよく貰って食べていたのだが、いつも『何で〔いか〕なのにオレンジ色なんだろう……?』と不思議に思っていた。それを、適度に焦げ目があるところにマヨネーズをたっぷり付けて食べていたのだ。上京してから一度も食べたことが無かったが、まさか大阪でこの味を思い出すとは思いもよらなかった。

 

 

 

「あ、銀杏あるや~ん、銀杏ちょうだい」

「待ってやー、奥で焼いてくるわ」

 

『銀杏』なんてものをつまみにするようになったのは、いつからだろうか。『茶碗蒸し』に入っている位にしか記憶がないが、私はそれを何故か子供の頃から毛嫌いしており、いつもよけていた。
そんな微妙な存在だった『銀杏』を炒っている女将に、申し訳なさを感じつつも焼きあがるのを待つ。
因みに今は大・好・物。

 

 

 

「焼けたでー」

「やった!うまそう!」

「兄ちゃんらよかったなー、女の子ふたつも入ってたで」

「え?女の子?」

 

『銀杏』

女将曰く、銀杏には〔男の子〕と〔女の子〕がいるらしい。どういうことかと訊くと、通常の銀杏の殻は〔二面〕で合わさっており、それが〔男の子〕、稀に殻が〔三面〕で合わさっているものが〔女の子〕だというのだ。

適当に銀杏をフライパンに放り込んで、その〔女の子〕が一度にふたつも入ることはかなり珍しいとのこと。

 

「兄ちゃんら、ひとりずつ女の子食べたらええやん!」

 

……っ!!

 

さすがは『酒り場さかりば』の女将、知ってかしら知らずか私たち長期独身タッグに、一瞬、下ネタとも捉えかねない助言を喝破かっぱする。

イカと顔を見合わせ〝女の子の銀杏を見つけて食べることができたら結婚できる〟という、何の根拠も証左ない〔謎のラブルール〕を決め、さっそく二十粒ほどある銀杏の中から〔女の子〕を探し出す。

 

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「おかあちゃん!これ女の子やろ!?」

「どれ……ちゃうで、三面やって」

「……これどうですか?」

「ちゃうねんて、ここんとこが三面なんやって!」

 

「……あ! これ三面ちゃうか!?」

「…………せや!これが〔女の子〕や!」

 

 

《ぢゅるッどゅるるるじゅるるッ!!》

 

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イカが遂に一つ目の〔女の子〕を見つけたのだが……
推定七十代の女将を見ながら、女の子の割れ目を舐め食べる・・・・・イカの姿に複雑な気分になった。

 

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分かりづらいが、コレが〔女の子〕だという…………私はまだ二つ目を見つけられない。

 

 

 

――ガラガラガラ

 

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「来たでー」

「おかえりー」

 

銀杏に四苦八苦していると、男性客が入ってきて私たちの近くに座った。

すると、

 

「なんや兄ちゃんら、御堂筋食ってんのか・・・・・・・・・?」

「えっ?御堂筋?」

 

この他人の懐の入り方、さすが関西人と感心したいところだが、それより銀杏のことを〝御堂筋〟という発言の方が気になる。

 

「理由? 御堂筋にイチョウ並木あるやんか。だから〝御堂筋〟いうねん」

 

……なるほど、と言っていいのか、一応ふたりで「おおっ!!」とは言ってみたものの、男性客は気を良くしてか、このような『上方センス』満載のネタを、このあと何度も披露してくれるのだった。

 

 

 

*****

 

 

 

「いつから? 昭和二十三年からや」

「――てことは、来年で創業七十年!?凄いやん!!」

 

男性客を含めた四人で、この店の話になった。

元々、店名にもあるように酒造メーカーとして奈良県の『透泉』という銘柄の日本酒を販売しており、所謂『直営店』として今の場所に酒場を始めたのだという。

「昔は市電も走っててな、朝から仕事がえりの客もよう来てはったで」と述懐する女将からは、未だに朝の八時前から営業するという、馴染み客への何か〔愛情〕のようなものを感じた。

 

 

 

 

――尚も凛冽な冬の朝に、イカと女将と男性客のもはや訛り過ぎて会話に入れない私は、何となく頷きながら『透泉』の熱燗を飲み、銀杏をかじったことが野田の思い出になったノダった。

 

 

 

結局、

私は銀杏の〔女の子〕を見つけることは出来なかった。

 

イカと一緒に探し始めて無かったっていうことは、イカがふたつ〔女の子〕を食べたことになる、

 

……ということには何の恨みもない。

 

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酒場透泉(さかばとうせん)

ジャンル: 居酒屋、焼鳥、天ぷら
最寄り駅: 野田
住所: 大阪府大阪市福島区吉野2丁目13-12
TEL: -
営業時間: 7:30~22:00 (もっと早い時間に閉めることもあります)
定休日: 木曜日

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miron-201710
【出身地】
秋田県秋田市
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信濃路(鴬谷)
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