天満「一福」食べログに載ってない店漂流記 その2
昨年末
味論と神戸で呑んでいた時
突如 松本さんからLINEが入った
俺が誰にも教えたくない店
お前らに教えたるわ
今から天六来いやー
松本さんというのは
でも紹介した
僕の酒場巡りの師匠である
事前に
1週間ぐらい関西にいるんで
タイミング合えば呑んで下さいませ
とは 伝えてはいたものの
今から とはあまりにも急な召集令状だったが
師匠の
教えたくない店
と聞いたら興奮が抑えられなくなり
予定を全て変更し
味論と
大阪の天神橋筋六丁目に向かった
稲田酒店で待ってるわ
とのことなので
いってみた
酒屋の隣に店舗があり
表には簡易的なテーブルもある
角打ちのようだ
暖簾引きをして
中の様子を伺うと
渋いっ!!
ここで何十年もの間
幾人も先輩方が
膝をガクガクにしてきたんだろうなという
歴史が伝わってくる雰囲気だ
「うわー 渋いなぁー」
「角打ちなのにおつまみも充実してるっぺよー」
と 味論と話していると
「遅いんじゃボケー!! ほふく前進で来たんかダボー!!」
店内に響き渡る
師匠の声が聞こえてきた
この方が僕の師匠の松本さん
酒場ナビで写真を載せるのは初めてだ
夏木ゆたかばりの甘いマスクとは裏腹に
口がむちゃくちゃ悪い
「どんだけ待たすんじゃコラー!!」
「遅なってすいません」
「ケツから手ぇ突っ込んで 奥歯ガタガタいわしてるYOUTUBE見したろかい!!」
「えっ? 映像ですか? 実際にはやらへんのですか?」
「ワシ潔癖症なんじゃい!!」
「はぁ」
「待ちすぎて 100超えてたガンマgtpが下がって 平常値になってもうたやないかい!!」
「おめでとうございます ってかワイン呑んではるやないですか」
「ほな そろそろお会計してもらおか」
「いや 僕らにも呑ませて下さいよ」
「すんませーん この二人にー」
「あっ 師匠が僕らのオーダー決めてくれるんですか?」
「さっきテーブル拭いた 布巾のしぼり汁呑ましてあげてー」
「汚いなー!!」
「濃い目でー」
師匠・・・
相変わらずでらっしゃいますね・・・
おでんが旨そう
いや 関西の出汁が旨そうだったので
豆腐を貰う
とろろ昆布がかかってるところが
西っぽくてまた嬉しい
関西の甘目の出汁をすすり
ハイボールをすする
正直 豆腐はいらないぐらい
出汁がツマミになる
「松本さん この店いいですね 教えたくないのわかりますわ」
と言うと
「ダボッ!! ココちゃうんじゃ!!」
「えっ?」
「今からいくんは こんな有名なとこやなく」
「はいっ!!」
「食べログにも載ってへんような店じゃい!!」
「はいっ!!」
「天満行くでーー!!」
稲田酒店を後にした・・・
天六のゴチャゴチャした方から
JR天満の駅を越えて
扇町の方へ抜けたところに
その店はあった
一福(いっぷく)
路上にテーブルを出し
店内からは
おどろおどろしい雰囲気がだだ寄ってくる・・・
もう一度上の写真に戻って
ご覧頂きたいのだが
僕の酒場巡り人生の中でも
群を抜いてボロボロの暖簾だ!!
おそらく
篠原信一が来て
酔っ払って
暖簾で一本背負いの練習でもしたのだろう・・・
恐る恐る入ってみると
店内もまた
香ばしい
このテーブルの香ばしさよ!!
下に車輪がついており
以前屋台で引いていたモノを
そのまま狭い室内に
無理やり入れただけらしい
今でも引こうと思えば引けるそうだ
香ばしい・・・
厨房から放たれる
家の台所感がまたいい
奥を見渡すと・・・
ただの家やん!!
よく関西人は
人の心に土足で入ってくる
なんて言われるが
この店は逆に
ウチの店 土足で踏んづけてくれまっしゃろか
と 言わんばかりオーラを放っている
入店から20秒で
ドキドキが居心地の良さに変った
赤いバンダナに赤いTシャツにピンクのエプロンという
志茂田景樹を彷彿とさせるマスターが
また素敵だ
レモンハイを貰い
松本さんに
「ココどうやって知ったんですか?」
と 聞くと
「天満歩いてて 笑い声聞こえてきたから どこからやろって探してたらココやってん」
と ドヤ顔で放ってきた
この顔好きやからエエけど・・・
「おっちゃん どて頂戴」
松本さんの放つ
おっちゃん
には そこに親しみだけではなく
尊敬が含まれている
聞いていて心地がいい
どて焼き
焼きとはいうものの
要は甘いスジ煮込みだ
懐かしい味と接しやすい人達のいる空間
大好きな時間だ・・・
気付くと店内常連さんで満席だ
男の先輩方は勿論
吉瀬美智子似のキレイな女性まで入ってこられた
そして美智子さんは
「アンタらはよ入りー」
と
なんと3人のお子様を
店内に連れてきた
バッキバキの酒場に
3歳5歳7歳ぐらいのお子様が
お母さんに連れられてるとはいえ
そこにいる
普通で考えたら違和感しかないだろう光景が
一福では馴染みに馴染みすぎている
ただの家やん!!
ここで子供を好きすぎる味論が
「可愛いっぺよー お母さんが綺麗だと お子さんこんな可愛くなるっぺかよー」
と 興奮気味に放った
美智子さんは
「ホンマに!! お兄ちゃんコロッケ食べるか」
と 味論にスーパーで買ってきただろう
コロッケをくれた
これは僕も
と思い
「可愛いですねー 一番下の女の子 しずくちゃんみたいですもんねー」
と 放つと
「ウチ しずくちゃん嫌いやねん アンタ南港に沈めたろか」
と その美貌からは信じられない言葉を
美智子さんに頂いた
関西・・・
流石です・・・
そこから僕は
ずっと美智子さんと喋っていた
「僕ら酒場ナビっていう 酒場巡りのサイトやってるんですよ」
「じゃあなんかオモロイ話してみーや」
「えっ!!」
「ここでオモロイこと話されへんかったら 文もオモロないやろなぁ」
「そうですね・・・ こないだちょっとしたミラクルありましてね」
「うん」
「ベロベロの酔っぱらいのオッサンが 警官に肩担がれて歩いてたんですよ」
「うん」
「そのオッサンのTシャツよく見たらね」
「うん」
「ローマ字でPOLICEって書いてたんですよ」
「アンタ全然オモロないなぁ」
「ちょっと待ってくださいよ ねえさんなんかあります?」
「この子がもっと小さい時な」
「はい」
「家で旦那にコーヒー入れてって頼まれてん」
「はい」
「ウチこの子の授乳やらなんやでバタバタしてるタイミングやったからな」
「はい」
「めんどくさくてフレッシュの代わりに おっぱいちょっと入れて出したってん」
「はい!!」
「ほんなら旦那な」
「はいっ!!」
「今日のコーヒーいつもより旨いなぁ って言いよってん」
「めちゃめちゃオモロイやないすかー!!」
完全に美智子さんにしてやられていた・・・
「ほんならウチら そろそろ帰るわ・・・」
美智子さんとお子様たちが
帰り支度を始めた
「おっちゃん このお兄ちゃんに おでんあげてー」
「えっ!!」
「ほんでお勘定してー」
「ねえさん・・・」
「お兄ちゃん オモロなかったけど楽しかったわ」
「えっ!!」
「酒場ナビやったっけ? 見とくわ ほなサイナラ」
後に味論に聞いたのだが
この時僕はちょっとだけ
涙目だったらしい・・・
「松本さん・・・ エラい店連れてきてくれはりましたなぁ・・・」
「まぁまぁまぁまぁ・・・」
いつか酒場ナビが有名になったら
改めてココに来て
美智子さんに挨拶したいな
と 思いながら
一福を後にした
因みに上の写真の
一番左の方は
今回サプライズで来て頂いた
僕が若い頃お世話になりまくった
丸尾拓さん
丸尾さんとの酒物語は
またいずれ・・・
一福(いっぷく)
住所: | 大阪府大阪市北区天神橋4丁目2−22 |
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TEL: | 090-6603-6689 |
営業時間: | 17時00分~23時00分 |
定休日: | - |