日曜日

 

 

いつもより遅めに目覚め

働いていない頭で

今日の予定を思い出す

 

 

今日何するんやったかなぁ・・・

 

どこの酒場にいくつもりやったかなぁ・・・

 

えっと・・・

 

あっ・・・

 

何も決めてへんねやった・・・

 

どうしようか・・・

 

何にもないって事・・・

 

そりゃあ　なんでもありってこと・・・

 

僕の行きたい場所へ何処でも行ける・・・

 

 

 

 

日曜日・・・

 

 

 

あそこにしようか・・・

 

 

 

 

とかく

日曜定休の多い

大衆酒場

 

平日より

酔い酒場率

が

ぐんと下がる曜日だ

 

 

 

でも・・・

 

 

あそこは

呑らせてくれる・・・

 

 

 

 

京成本線で上野から６ツ目の駅

堀切菖蒲園

にやってきた

 

 

時刻は

１５時

 

平日よりちょいと早め

だからといって早すぎない

 

ちょうどいい

呑り始めの頃合だ

 

 

 

 

きよし

 

 

おっ！！

 

開店を待っている

お客さんがチラホラ

 

 

旨くて安い

きよし

 

 

日曜日のご褒美として

口開けの客になろうとしているのが

僕だけではないのは

当然だろう

 

 

 

 

暖簾が掛けられ

待ってましたと

皆がくぐっていく

 

皆様　大人なので

何食わぬ顔をしてらっしゃるが

心の中は

 

「よっしゃー！！呑めるでー！！」

「もう何食うか決めとんのじゃ　ワシャ」

「この瞬間のために生きとんのじゃい！！」

 

と

踊りまくっているだろう

 

 

僕も

シュートダンスをしながら

後から続いた

 

 

 

 

入って左側に

カウンターがカタカナの

ハの字

に２つ並んでおり

右側には

テーブルともひとつカウンター

 

 

奥のカウンターに

陣取るつもりだが

ちょいと準備を

 

 

 

 

店内中央にある

本棚から

漫画を拝借して

席へ向かう

 

 

一人呑みに漫画は

強い味方だ

 

待ってる間

手持ち無沙汰にならなくていい

 

 

 

 

椅子に腰を下ろし

お姉サマに

ボールをお願いする

 

 

お姉サマは

瓶の炭酸を

１本全部グラスに注いでから・・・

 

 

 

 

そこに

エキス

を　なみなみと流し込んで下さる

 

 

上京したての頃は

ホッピー同様

 

東京の人は　なんちゅうモン呑んどんのやっ！！

 

と感じさせられたが

 

今では

ベロが心が体が

コイツを欲してやまない

 

 

 

 

ウハッ

 

この溢れんばかりの

表面張力はどうだ

 

一滴もこぼしてなるものか

 

１６歳の初接吻の時のように

ゆっくりと顔を近づける

 

下唇がグラスにふれる

 

冷たい

 

氷が入ってないのに

すごく冷たい

 

体中の神経が唇に集中している

 

呼吸をするのが怖い

 

息を吐いたら

コイツに嫌われるんじゃないか

という感情に襲われる

 

少し舌を出し

上唇を被せるように包み込み

ジュルル

と吸い上げる

 

口当たりの良い甘みとレモンの酸味が

口いっぱいに広がる

 

０．５秒遅れて

炭酸が舌の上で

オテンバにはしゃぐ

 

このシュワシュワが

アタシもあなたのこと好き・・・

と言ってくれてる錯覚に陥れる

 

 

ふうーー

っと息を吐き

２回目に・・・

 

 

 

そんなコイツは２５０円

 

 

 

 

おつまみも安い

 

ほとんどが２００円台か３００円台の

立ち呑み価格

 

とんかつ３００円って

正気なのか・・・

 

 

若干読みづらい

今日のおすすめの中から

かつお刺し身

を所望する

 

 

 

 

お客様の多さからして

おそらく

カツオにありつけるのには

時間がかかるだろう

 

 

「すいません　柿ピーもらってていいですか？」

 

 

 

 

うわぁ

 

１００円なのに

まぁまぁの量がある

 

これは心強い

 

店がめちゃめちゃ混んだとて

ツマミなし地獄

に落ちることはないだろう

 

 

 

 

チョイスしておいた

美味しんぼ

を読みながらゆっくり待つ

 

 

何回も読んだことのある

美味しんぼだが

酒場での漫画は

内容がわかっているぐらいが

ちょうどいい

 

 

 

 

心の中で

富井副部長の声マネをしていると

カツオのご登場

 

 

 

わぁ

 

 

 

 

本当にこの店は

量をケチらない

 

わざわざ

電車に乗ってでも

来たくなる理由の一つだ

 

 

 

 

でっかく包丁を入れられた

カツオが８切れも・・・

 

しかも

旨いときたもんだから

そりゃあもうゴキゲンです

 

 

 

コイツが３００円・・・

 

 

 

「すいませーん　ボールおかわり下さーい」

 

 

 

 

美味しんぼなんか読んでると

食欲も出てくる

 

壁に貼ってある

チキンライス２５０円

が目に入る

 

気になったらもう止められない

 

お姉サマに

お願いすると

本日はやってないとのこと

 

 

残念・・・

 

どうしようか・・・

 

口が完全に

コッテリとしたモノを求めている・・・

 

 

その時

隣のお客様が

 

「白身の天ぷらちょーだーい」

 

と仰った

 

僕は間髪置かずに

 

「コッチにもソレお願いしますっ！！」

 

と

ツマミ泥棒

をやってしまった

 

 

 

 

間髪置かずに・・・

 

 

 

重罪だ・・・

 

 

 

 

白身の天ぷらのご登場

 

位置関係上で

隣のお客様より

一瞬早く

僕の前に皿が置かれたのが

少々気まずい

 

先輩に

軽く会釈してから

コイツとにらめっこ

 

 

 

 

天ぷら・・・

 

 

お前もか・・・

 

 

 

 

これまた

大きいサイズの天ぷらが

７個もおいでなすった

 

天つゆも頂けて

もう

至れり尽くせりだ

 

 

 

 

ハフハフホクホクと

コイツと戯れる

 

 

うんまい

 

 

何の魚かなんてのは

どうでもいい

 

この

白身

っていうモノの天ぷらが

旨い旨い

 

 

 

コイツも３００円・・・

 

 

 

「すいませーん　ボールおかわり下さーい」

 

 

 

 

ふぅ

 

酔っぱらったな・・・

 

何杯呑んだ・・・？

 

ボール３杯か・・・

 

そこそこお腹もいっぱいだ・・・

 

うん

大満足

 

お姉サマにお会計をお願いすると

 

「１４５０円ですー」

 

とのこと

 

 

 

 

 

 

 

 

安いっ！！

 

 

 

 

お店を出て

 

やっぱり安かったなぁ・・・

 

なんて思いながら

改めて

きよしを拝んでいると

 

 

 

看板の下に・・・

 

 

 

 

猫ちゃんがいらっしゃった

 

僕は

 

「きよし安かったから　タカノで３５０円ラーメン食うて帰っても怒らへんかい？」

 

と聞いてみた

 

 

返事はなかったが

 

「餃子もつけてもいいかもニャー」

 

と

言いたそうな表情に

僕は見えた