金町「ブウちゃん」縄のれん 死んだ親父に 会いに行く
僕の父は今年で78歳だ
今でこそだいぶ量は減ったが
昔は
四六時中酒ばっか呑んでいた
深夜姿が見えず
家族で近所を探していると
ベロベロで自転車ごと川に突っ込んで
身動きのとれなくなっていたり
酔った勢いで連れて帰ってきただろう
知らないおっさんが
朝起きたらしょっちゅう居たり
γ-GTP値が
ピーク時の春一番さんと同じ
1500になり入院したり
そりゃあもう浴びるように
いや
呑むように浴びていた
金町
ブウちゃん
この店の暖簾をくぐるのは
もう
何回目になるのだろうか
大好きな酒場だ
いつ来ても
ちょうどいい活気
が溢れ
若い女性の店員さんの
笑顔に首ったけだ
そしてマスター
この
落ち着かれた雰囲気・・・
カッコいいな
周りが騒がしくしていても
ブレること無くマイペースで
淡々と仕事をなさってる
もはや酒場職人
僕がここに来る理由の一つに
マスターを眺めたい
という要素があるのは間違いない
酎ハイには
氷はいれない
グラスに
宮
の文字
まさに正統派下町スタイル
いつだったか
隣で呑ってらっしゃる先輩に
「お兄ちゃん レバーゴマ って注文してみな」
と お教え頂いたことがあった
それ以来
イキってそのセリフを連呼している
旨い・・・
先輩その説は有難う御座いました
売り切れてなければ
ノド軟骨の大ガリを
お願いすることもしばしば
隣で
コイツを噛まずに
ずっと舐めてる先輩がいたな
理由は多分アレなんだろう
黒はんぺんが
置いてあるのには驚いた
月曜日火曜日限定
ってのがまた憎い
聞くと
奥様が静岡出身とのこと
静岡茶割り ワサビのくき漬け
などのラインナップも
奥様のアイデアだろう
水曜日木曜日は
ポテサラにありつける
酢豚にパイナップル
冷やし中華にサクランボ
ポテサラにリンゴ
アリアリ ナシナシ
と
会話に花が咲くこと請け合いの一品だ
長年通っていると
運のいい日もある
アホはスペイン語でニンニクのことやったっけ・・・
などと思いながら
メニューを物色していると
お隣に・・・
マスターが腰を下ろされた
なんだか・・・
告白のタイミングを探してた女の子が
近くに来たみたいだ
ドキドキしてきた・・・
緊張するが・・・
話しかけてみよう・・・
「マスター・・・」
「ん・・」
「このお店って マスターが作られたんですか?」
「親父がやってた店だよ」
「そうなんですね お子様のころから継ごうとか思ってらしたんですか?」
「全然考えてなかったよ」
「えっ?」
「ただ 母親が倒れちゃってね」
「・・・はい」
「とんかつ屋やってたんだけど それ閉めてね」
「えっ??」
「親父と ココやってくって決めたよ」
「・・・そうなんですね」
「あちらにいらっしゃるのは・・・?」
「三代目だね」
「継がれるってなった時は 嬉しかったですか・・・?」
「まぁ・・・ うん・・・ まぁねぇ・・・」
その時
ふと思い出した
ここは・・・
なぎら健壱さんが
お父さんを迎えに来てた店だった・・・
著書
酒にまじわれば
の中に一際テイストの違う
あのエッセイ
小学生の時
母親に
「お父さんを迎えに行ってきてちょうだい」
と 頼まれ
ブウちゃんの扉を開け
一斉にお客さんの視線を突き刺され嫌な思いをし
それでも
親父の密かな楽しみを奪ってしまったようで
複雑だ
というあのエッセイ
今あたしは親父と同じよなことをやっている
ふと友人の作った
縄のれん 死んだ親父に 会いに行く
という句が思い出された
の 部分で胸が苦しくなったっけ・・・
なんだか感情が
整理できずにぐちゃぐちゃだ
自分の父親のことも
頭に浮かんでくる
大酒呑みだった父の息子が
酒場ナビなんてやってるんだ
なんて考えたりする
そもそも・・・
今まで
迷惑しかかけずに
何一つ親孝行らしいことをしたことのない僕を
父はどう思っているのだろうか・・・?
いかん
ちょっと酔ったか・・・
「マスター お話させて頂いてありがとうございます」
「いやぁ」
「また来ます」
いつもとは違う胸懐で
ブウちゃんを後にした
そういや父と
サシで呑んだことってなかったな
久々に実家帰るか
因みに上の写真以外は
移転前のブウちゃんのモノです
ブウちゃん(ぶうちゃん)
住所: | 東京都葛飾区金町5-35-5 |
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TEL: | 03-3600-5895 |
営業時間: | 16:30~23:00 |
定休日: | 日曜・祝日 |