
平野「やっこ寿司」幻の”美人寿司屋台”の記憶をたどって・・・
思い出を
捻じ曲げてるだけだろうか
30年前
大学に入学した僕は
大阪の平野という街で
一人暮らしを始めた
石を投げれば
串かつ屋か寺に当たる
独特な空気感が漂うその街に
渋く薄暗い
商店街があった
安いうどん屋さん
安いお好み焼き屋さん
肉屋の店頭で焼いてるホルモン串
金は無いが
必要以上に腹が減る10代の胃袋を
その商店街は助けてくれた
ある深夜
その商店街を僕は一人で歩いていた
全ての店舗のシャッターが下りていて
昼間よりずいぶんと薄暗い
ん?
遠くにぼんやりと
明りが灯っている
赤提灯・・・?
近寄るとそこには
昼間には存在しない
小さな屋台の姿があった
おでん・・・?
ラーメン・・・?
いや違う
提灯には寿司の文字が・・・
屋台の寿司屋なんて
生まれて初めて見たぞ・・・
けげんな面持ちでソレを
覗き込む僕の眼に
もう一つの衝撃
店員さんは・・・
女性だ・・・
年の頃なら
35歳ぐらいの黒髪美人
好奇心旺盛19歳
コレは素通りできないと
財布を確認
何貫か食べれるだろう
お金はある
こわごわ椅子に座り
お姉サマの出方を見る
「いらっしゃ~い」
ガキが来んなや
みたいな表情ではなく
笑顔を頂けて安心
並んでいる寿司ネタを見て
またまた衝撃
こんな大きなエビあるんや・・・
コレは食うとけと
寿司神様からのお告げ
「このエビ下さい・・・」
「はい」
お姉サマは
大きなエビを握り始めた
「エビお待たせ」
「いただきます・・・」
でっかいソレを大口で・・・
めっちゃ旨いやんっ!
深夜屋台
寿司
美人
巨大絶品エビ
もうこんなん
池波正太郎作のファンタジー時代劇
やん
ココで食べたことを
誰かに自慢したい
で
後日
イキッって女の子を
連れてきたことを覚えている
ただ・・・
程なくして
僕は平野を引っ越し
その屋台に行ったのは
2度きり
今にして思うが・・・
あんな
おとぎ話のような屋台
本当にあったのだろうか
なんか違う店を
30年の間に
記憶を操作してやしないか
現実か幻か確かめたい
あの商店街の
古い店の人に
話を聞きに行こう
JR大和路線
平野駅
2丁目劇場にも出て
アメ村でバイトしていたあの頃
JRなんばまで1本で行けるので
重宝してましたよ
駅前にあったパチンコ屋
無くなったんだ
保留7連チャンぐらい
したことあったな
思い出した
ココ食堂だったゾ
吉野屋
っていう屋号の
吉野家の向かいに吉野屋あんねん
って
よく言ってた
まだあるんやっ!
ゴリラの理髪店っ!
通ってたなぁ
近鉄バファローズの
江坂投手が
隣の席で散髪してたと記憶するが・・・
捻じ曲げてないよな
出た・・・
平野本通商店街
ただいま
なんて言ってみる
相変わらず
シビィーーー
30年前の
あのまんまやん
ココの
お好み焼き屋さん
閉店したかぁ
山芋タップリふわふわ生地の
でっかい豚玉
400円とかで食べれたなぁ
屋台が出てたのは
この辺りだった
あの乾物屋さん
歴史ありそう
アソコで・・・
ん?
お寿司屋さん・・・
当時ココには無かったゾ・・・
寿司繋がりで
何か情報が得れるかもしれない
おじゃましまんにゃわ
「いらっしゃ~い」
えっ・・・
店員さんは
女性お一人だ
まさか・・・
ちょっと現状を整理しよう
30年前
女屋台があった場所の側に
寿司屋の店舗ができていて
店主が女性
ここまではいいよな
当時
お姉サマは35歳ぐらい・・・
店主さんは
65歳ぐらいにお見受けできる・・・
計算合うぞ
んっ??
大えびっ!
あるやんっ!
こんなんだったっ!
こんなんだったっ!
「このエビ下さい・・・」
「エビ お待たせー」
あ・・・
四等分・・・
一匹まるまるの巨大エビに
かぶりついた印象だったが
ソコは捻じ曲げてたみたいだな
うん旨いっ!
肉厚のエビの噛み応えたるや
あの日のあの食感
もう・・・
まさかじゃないっ!
「あの お姉サマ・・・」
「どしたん」
「つかぬことをお聞きしますが・・・」
「なんや 怖いなぁ」
「30年ぐらい前ですね・・・」
「なんなんよ」
「この近くの屋台で 握ってませんでしたか?」
「やってたで」
「ホンマすかっ やっぱりっ」
「声デカいわっ!」
「僕ソコで 2度ほどたべたことあるんですよ」
「そうなん」
「当時ここら辺住んでて」
「おん」
「ファンタジーの屋台あるいうて」
「なんやそれ」
「寿司の屋台も珍しいし」
「おん」
「握ってんの女性やし」
「おん」
「エビでかいし」
「おん」
「めっちゃ記憶に残ってるんですよ」
「おん」
「でも 夢かもしれへんし」
「おーん」
「今日 東京から確かめに来たんすよ」
「たいそうなこっちゃな」
「記憶がホンマモンで 嬉しいです」
「ようござんしたね」
「あん時 女の子と一緒に」
「もう うるさいわっ!」
興奮しすぎて怒られちゃいましたが・・・
お姉サマ・・・
あの屋台で食べた経験は
僕の一生の自慢です
こちらの平野もどうぞ
↓
平野「綿安酒店」角打ちにまだ行ったことのない方は読まないでください
奴寿司(やっこすし)
住所: | 大阪府大阪市平野区平野本町4丁目1−6 |
---|