小岩「新町ストアー」人生で1番旨かったビール
下町酒場巡礼
という本がある
僕が酒場巡りにする
キッカケになった本といっても過言ではない
その著者の大川渉さんの
酒場めざして
という本に
最も旨いビールとは
というコラムがある
ビールには幾度か命を救ってもらった
の 書き出しで始まるこの一節が好きだ
要約すると
登山の際に脱水症状になり
命からがら宿に着いた時に飲んだビールが
体の細胞に水分が染み通っていくようで生き返った
と 乾いた体にビールを流し込む気持ちよさを
ビンビンに想像させてくれる内容だ
ただ
特筆すべきは
この時飲んだビールがうまかったかというと
そうでもない
水分補給のために流し込んだというのが正確なところだ
では どんな条件で飲むのが一番うまいビールなのだろうか?
それには 前夜からの準備が必要で・・・
の 流れから続く
大川さんの自論の部分で・・・
小岩にやってきた
酒友に
呑めるスーパーマーケット
があると聞いたからだ
8月上旬
その日は
午前中から
これでもかっていうぐらいの
ギンラギンラの太陽
駅からは遠いと聞いていたが
まぁ 大丈夫やろ
と 軽い気持ちで歩き始めた
新中川
を超えたぐらいまでは
スキップ混じりぐらいの足取りだったが
ここで問題発生
実はこの日
すでに4軒ハシゴしていた為
写真を撮りまくりスマホの充電が切れてしまった
マップを頼りに向かうことが出来ない・・・
まぁ サカバーの感でなんとかなるやろ
と 気にせず歩き続けたのだが
これがマズかった
川沿いの住宅地を歩くのだが
一向にそれらしきスーパーなど見当たらない
それどころか
ほとんど人の気配すらない
陸の孤島
に 足を踏み入れてしまったようだ
気温は体感40度以上
駅からはすでに40分は歩いている
コンビニもない
汗と不安が止まらない
脱水症状で
なおかつ頭も朦朧としてきた
しんどすぎて
本気で道端で横になろうとした時
地獄に仏
遠くに自転車に乗った
お巡りさんが見えた
ドラクエでいえば
HP残り1
ぐらいの状態で
なんとかお巡りさんに駆け寄り
「すいません 新町ストアーってどこですか?」
「新町ストアー? 知りませんねぇ」
「なんか お酒の呑めるスーパーマーケットで」
「あー もしかしたら あそこかなぁ」
「どこらへんですか?」
「川沿いを 奥戸街道の方へいったところだけど」
「近いですか?」
「歩いたら30分ぐらいかかると思いますよ」
「・・・あの ・・・一番近いコンビニ教えて下さい」
どうやら
全くの逆方向に歩いてたみたいだ・・・
コンビニに行き
充電器を買い
今度こそスマホのマップを頼りに
新町ストアー
にたどり着いたのは
小岩駅を出て
1時間半後だった・・・
見つけたっ!!
長かった!!
僕は
中山美穂に囁く
辻仁成ばりに
「やっと逢えたね・・・」
と 小さく声に出してしまった
店頭に構えてらっしゃる
この看板の文字に釘付けだ
冷たい生ビール有ります
素敵な言葉だ
野々村友紀子さんの
お笑いなんて
目から血出るぐらい
オモロイこと考えな出来へん
の 言葉ぐらい素敵だ・・・
新町ストアーに
入店した
店内は
やはりスーパーマーケットだ
レジに
店員のお母サマがいらっしゃったので
「すいません 生ビール呑みたいんですけど」
と 告げると
「はいはい あっち座って待っててー」
と 指を刺された
見ると
お酒のコーナーのところに
テーブルと椅子がある
そこに座り
待っていると
おそらく この店のオーナーさんであろう
男性の方がいらっしゃって・・・
冷凍庫から
キンキンに冷えた
ジョッキを取り出し
横のサーバーからビールを注ぎ
「お兄ちゃん お待たせっ!!」
と 言いながら
僕の前に置いて下さった
出たっ!!
凍った霜の付いたジョッキに越しに見える
黄色が美しすぎる
はやる気持ちを抑え
なんとかこの写真だけ撮り
ジョッキを両手で
ガシッ
っと掴み
口に近づけ
ンゴッンゴッンゴッ
ほぼ一息で1杯呑み干した
その様は
のごたるだったろう・・・
めちゃめちゃ旨いっ!!
看板に偽りなく
本当に冷たい
ビールなんて
冷たければ冷たいほどいいに決まっている
まさに
体の細胞に水分が染み通っていくようで生き返った
だ
いつだったか
10日ぐらい禁酒していて
解禁した時のビールより
なんかのコンテストで優勝した時の
打ち上げのビールより
この1杯のほうが
旨く感じる
今まで1番のビールといっても
いいのではないだろうか
店主さんに
おかわりをお願いした・・・
ちょっと落ち着き
メニューを見てみる
わっ!!
めちゃめちゃしっかりしている
店主さんに
「ステーキとかすき焼きとかも 今できるんですか?」
と尋ねると
「できるんだけどねぇ 今 昼の弁当作りで忙しいんだよ 肉屋とか魚屋の惣菜じゃダメかなぁ」
と 店の反対側に
いざなわれた
そこには
昭和の市場を
彷彿とさせる空間があった
子供の頃いった
尼崎の三和市場を思い出す
焼き鳥とお刺身を購入し
席に戻り
それらをツマミに
今度はゆっくりビールを呑む
店内には
お昼のお弁当を買いに来る
お客さんが増えてきた
この店では
当たり前の光景なのだろうか
この時間から
一人で呑んでいる僕を
不思議そうに見る人はいない
さっきまでの地獄を
忘れるぐらいの
いい時間
が 流れ出してきた
レジのお母さんに
「鍋とか頼むんでしたら 何時ぐらいがご迷惑ではないですかねぇ」
と 尋ねると
「夕方前ぐらいだったら ゆっくりしてるからー」
と 優しく答えて下さった
今度は
そのぐらいの時間に来るか・・・
贅沢にタクシー使って・・・
新町ストアーを
後にした
因みに
冒頭の大川渉さんの
一番うまいビールの飲み方というのが
前夜に酒をたくさん飲み
翌朝 軽い二日酔いの状態にしておく
朝食を抜いて昼ごろまで横になる
午後二時頃おもむろに起き出し
少し汗ばむ程度に歩いて
そば屋に行く
そこで
エビスかキリンラガーの中瓶
あまり冷えすぎてない方がありがたい
これを小振りのグラスに注ぎ
きゅーっと飲る
朝食を取ってないから喉が渇いている
前夜の酒が残っているから
1本飲み干す頃にはほどよく回ってくる
店内にいると昼か夜かわからなくなり
時間の感覚が麻痺してくる
前夜からずっと飲んでる気がする
これが目下のところ最もうまいと思える
ビールの飲み方である
とのことだ
深いなぁ・・・
新町ストアー(しんまちすとあー)
住所: | 東京都葛飾区奥戸6-16-10 |
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TEL: | 03-3692-2856 |
営業時間: | 9:00~19:30 |
定休日: | 日曜日 |