「お願いあるんだけど・・・　アタシと別れてくれない」

 

「えっ？？」

 

 

 

 

「俺　就職することにしてん　解散してーや」

 

「えっ？？」

 

 

 

 

 

2015年の暮れ

二つの別れを告げられた

 

自暴自棄というか

全てにおいて

やる気が無くなってしまった

 

現実逃避を繰り返す日々

 

出歩くのは

酒場巡り

だけ

 

今まで

行きそびれていた

酒場に行きまくった

 

酒場にいくことで

必要とされてない自分を

客としての役には立ててる

とでも思いたかったのだろうか

 

酒場にいく

というよりは

酒場に逃げていた

の表現が正しいだろう

 

 

そんなあの時期に

ちょっとした言葉を頂けた

あの酒場

あの女将さん

 

 

久々にいってみるか

 

 

 

 

新小岩駅を降りて

平和橋通りにまで出る

 

魚三

も気になるが

逆方向へ

 

途中

行列の出来ているラーメン屋さんがあるが

それを横目に歩みを進めると・・・

 

 

 

 

出たっ！！

 

赤城っ！！

 

 

水色のテントを拝むこと

実に6年ぶり

 

年月も経った

流行り病もあった

 

営業しているってことが

何より嬉しく感じる

 

 

 

 

手前にカウンター

奥にテーブル

 

そうだった・・・

 

飴色ではなく

全体的にモスグリーンな色合い

 

懐かしいな

 

 

 

 

お父サマとお母サマも

お元気そうだ

 

お父サマのご出身が

群馬県の赤城山のお近くだったから

赤城という屋号だったっけな

 

可愛い子分と別れ別れになり

新小岩に逃げてきたのかしら

 

 

 

 

座らせて頂く席は

勿論カウンター

 

ウホッ！！

 

お品書きの眺めが

絶景だ

 

 

 

 

振り返っても

壁に短冊が掲げられている

 

情報の多さは

安心につながる

 

先ずは

瓶ビールをお願いしておこう

 

 

 

 

ツマミ始め

はどうしようか・・・

 

むぅ

 

安さを再確認

 

 

 

 

もつ焼きは

少々値上がりしたか

 

かつては

4本で3百円台だったと記憶する

 

 

 

 

小袋刺し・・・

 

ガツ刺し・・・

 

 

あっ！！

これやっ！！

 

 

 

 

鳥刺し

が　おいでおいでしていた

 

 

おっ！！

凄いボリュームッ！！

 

 

 

 

美しい鳥刺しが15切れも

 

肉のまえかわ

のササミの量が少なくなってる昨今

赤城は

いい意味でそこに鈍感でらっしゃる

 

 

 

 

鮮度バツグン

味絶品

 

これで380円とは

もはやオモウマイ店

 

近々

中京テレビが取材に来るんじゃなかろうか

 

 

 

 

およっ！！

 

およよっ！！

 

刺身から刺身になってしまうが

これも所望しよう

 

 

 

 

呑み物を

焼酎ハイボールに変えて

それに合わせるのは

いなだ刺し

 

 

ムフフ・・・

 

これまた

ケチってない重量感

 

 

 

 

イナダって

愛おしい

 

味はブリやハマチと大差ないのに

まだ出世してないと判断され

安い値段を付けられがち

 

 

イナちゃん・・・

 

 

僕はあなたを

ちゃんと見ていますよ

 

 

 

 

うん旨い

 

 

間違いのない実力・・・

 

 

イナダと阪神の江越は

もっと評価されていい

 

 

 

 

ん・・・

 

値段早見表が目についた・・・

 

 

1本70円のホルモンを100本まで表記した

大正のホルモンちからや

1本90円の串かつを100本まで表記した

神戸の稲田串かつ

の早見表は理解できる

 

何十本もテイクアウトする

お客さんがいるからだ

 

しかし

赤城のそれは

360円のフルーツハイとやらの料金が

10杯分まで書かれている

 

 

 

 

そもそも

特製フルーツハイボール

って何なんだろう？

 

メロンとマンゴーとシャインマスカットの

トロピカルチューハイか？

 

一口呑んだら

何杯もお代わりせずにはいられなくなる

中毒性があるのか？

 

 

それ故に早見表が・・・

 

 

気になるな・・・

 

 

 

「すいません　フルーツハイ下さい」

 

 

 

どんな

煌びやかなお酒が

出てくるのだろうか・・・？

 

 

 

 

生グレープフルーツハイ

だった

 

 

裏切られた気もしたが

本当にトロピカルチューハイが出てきたら

どんなツマミと

合わせればいいのかわからないので

逆に一安心

 

 

〆に

もう一品食べてやろう・・・

 

 

 

 

定番のコイツを・・・

 

あっ！！

こっちは随分とご無沙汰だぞ

 

 

 

 

焼うどん

が湯気を上げてご登場

 

焼きそばとのコンビだったら

じゃないほう麺類

の焼うどん

 

イナダと同じく

その腕前は相当のクオリティなのに

世間から軽んじられてる

哀れな英雄

 

 

僕はあなたを

ちゃんと見ていますよ

 

 

 

 

優しい醤油味で

温もりを感じる

 

その温かさは物理的なモノではなく

お父サマとお母サマの

なんか

 

 

なんというか・・・

 

 

アレだ

 

 

 

 

6年前・・・

 

 

酒友と

このカウンターで酔っぱらっている僕に

女将さんは

こう言って下さった

 

 

「お客さん　ホント楽しそうね」

 

 

楽しそう・・・？

 

現実逃避している僕が・・・？

 

案外・・・

 

笑えてるんだな

 

 

 

 

その言葉が

少なからず背中を押してくれたのは

間違いないだろう

 

 

「女将さん・・・

 

あの後しばらくしてから

酒場ナビなんて始めたんですよ

 

あの時

僕を見て下さって

ありがとうございます」

 

 

などとは

恥ずかしくて告げれず

無言で赤城を後にした

 

 

 

 

こっちの新小岩もどうぞ

↓

「おばこ」隣の席の先輩が酒場放浪記にレギュラー出演していた