新潟「ちゃこ」バラック酒場を求めて… 沼垂(ぬったり)キャバレー最後の1軒
新潟に来た理由は2つある
1つは
2023年に阪神タイガースを退団した
ある男
を応援する為に
今季から
イースタンリーグに参加した
オイシックス新潟の本拠地
ハードオフエコスタジアム
素晴らしい球場じゃないか
30000人は収容できそうな
大きなスタンド
外野席の向こう側には
芝生の広場もある
解放感は甲子園のごたる
芝も天然かのように
美しい
ある男とは
元天才
当時のタイガースファンは
その秀でたバットコントロールに
魅了された
ドラフトの時
高山
2016年
金本政権1年目に新人王になった
高山
天国の横田慎太郎と1.2番を務めた
高山
甲子園の巨人戦の延長12回に
代打サヨナラ満塁ホームランを打った
高山
今は2軍しかない
オイシックスの一員
1軍の舞台で
もう一花咲かせてるオマエを見たいぜ
頑張れ
六大学野球通算最多安打記録保持者
来年もオイシックスだったとしても・・・
また応援に来るからよ
もう一つの理由は
モチロン
お目当ての酒場があるから
新潟駅から
東に20分歩くと・・・
住所は
中央区沼垂
ぬまにたれるで
ぬったり
と読む
ちょいとシャレオツな
沼垂テラス商店街は表の顔
裏に回ると・・・
あれだな・・・
出たっ!!
ちゃこ!!
龍雲寺横の
通称寺町呑み屋街にある
バラック酒場
呑み屋街とはいえ
周りを見渡しても
この酒場が1軒あるだけで
違和感アリアリの
ポツン感
だ
新潟まで来て
やってなかったじゃ
報われない
昨日電話で
「明日は営業してますか?」
と聞いたところ
おばあちゃまの可愛らしい声で
「4時にゃあおるよ」
とのお返事は聞けていたが
暖簾が出ていて一安心
いざっ!
「誰だっ?」
「わっ 出たっ!」
「出たってなんじゃ」
「昨日電話した亀山です」
「あんたか」
「はい」
「どっから来たんじゃい」
「東京です」
「何しに来たんじゃこねーなところに」
「やってマスよね・・・?」
「オレ やっちょるって言うたよな」
「わぁ お邪魔します」
出会えた・・・
一人称が
オレ
という女性に・・・
絶滅危惧種じゃないだろうか・・・
その口振りは可愛らしいのに
自分のことをオレと呼ぶ
早くも2つ目の違和を感じた
店内は薄暗い
外の光が差し込んではいるが
電気は付けられてはいない
L字カウンターのみで
座席は5つ
おっ
女性店主で
花が飾られてる酒場名店説
店は古いが
まごうことなき清潔感が
ここにはある
「何呑むんじゃい」
「ビール下さい」
「アサヒか サッポロか」
「サッポロ お願いします」
「枝豆ツマむか」
「頂きます」
さりげなく
現れた
つい今しがた
ハードオフスタジアムでも
枝豆食べたが
無問題
炎天下と
ちゃこでツマむそれは
別の味わいがある
「ママさん すいません」
「なんじゃ」
「ママさんのお名前が ちゃこ なんですか?」
「違うんちゃ」
「じゃあ 屋号を受け継いだんですか?」
「そうなんじゃ」
「店名変えちゃダメなんですよね」
「よう知っちょるね」
「静岡の 青葉おでん街もそうでした」
「よそでも そうなんじゃのぉ」
「先代の店主さんの名前が ちゃこ だったんですか?」
「そうスケ」
「やっぱり」
「オレ 客で来ちょったんじゃココに」
「はい」
「お前この店やってみんか って言われたんじゃ」
「ちゃこさんにですね」
「そうじゃ」
「それが いつぐらいの話ですか?」
「50年前じゃ」
「半世紀前っ!」
「オレが 30代の頃じゃったよ」
「ママんさ今80代!お元気だっ!」
「ママさん レンジん中にと手紙かがっ!」
「そりゃあオレの郵便受けじゃ」
「なんてワイルドなっ!」
ママさん・・・
深追いしたい女性だぜ
ママさん劇場は続く
「ビールもう1本いくかい」
「ちょっと変えますね」
「何にするんじゃい」
「チューハイありますか?」
「あるよ」
ママさんは
あるよを仰り
グラスにいいちこを注ぎ始めた
グラス小さいな・・・
「どのくらい入れるんじゃい」
「あっ そんなもんで」
「氷入れるかい」
「お願いします」
「氷の入ったグラス置いとくスケ」
「あ・・ ありがとうございます・・・」
焼酎ロックの横に
氷の入ったグラス
ママさんに炭酸をどうこうする
動きはない
どうやら
ちゃこのチューハイが
完成したようだ
だいぶ・・・
硬いだろうな
「ソーセージ炒めたら 食べるかい」
「頂きます」
ママさんは
包丁を使わず
ハサミでソーセージに切り込みを
入れてらっしゃる
不揃いな切れ込みのブツが
出てきそうだな
「ケチャップかけときんさんな」
「ありがとうございます」
うほっ!
美しい切れ目っ!
お見事
同じ幅の切れ目が等間隔に
この卓越したハサミ技術・・・
沼垂のシザーハンズ
と
呼ばせてもらおう
ケチャたっぷりの
味濃い濃いソーセージをカジり・・・
ちゃこ特製チューハイを
ツイーーッ!
硬てぇぇぇぇぇ
17時を過ぎて
明かりが灯った
そういや
ママさんって・・・
「ママさんって お酒呑まれるんですか?」
「ちいとだけね」
「よかったら召し上がって下さい」
「ありがとの」
「ご迷惑でなければ」
「じゃあアサヒ貰うスケ」
「この建物は 新潟市の所有物なんじゃ」
ママさんは
寺町呑み屋街の歴史を話し始めた
「ココの生みの親はな」
「はい」
「満州から引き揚げた時 建てたんじゃ」
「昔ですね! 戦後スグ!」
「戦争で旦那さんを亡くした女性にな」
「はい」
「仕事を あてがう為に呑み屋を作ったスケよ」
「ご立派なオシゴトですね」
「今はウチの1軒だけにななってしもうたけど」
「はい」
「全盛期は20軒あったスケ」
「20軒!!」
「店主は全員女性でな」
「塙山キャバレーと同じだっ!」
「去年 ウチ以外の建物は取り壊されたクサ」
「だから ポツンと1軒酒場っ!」
「始めたは頃は ここではオレが一番年下でよ」
「30代で一番下ですか 年齢層高かったんですね」
「いつの頃らからかよ」
「はい」
「市が 店を受け継ぐことを禁止したスケな」
「そうなんですか」
「身内でも受け継いじゃいけんってよ」
「となると・・・」
「一人辞め・・・ 二人辞め・・・」
「・・・」
「オレ一人になっちまったなぁ」
「・・・」
「市から立ち退きの話なんかは・・・?」
「50年やってっからよ」
「はい」
「オレにゃあ 何にも言うてこんよ」
「じゃあ当分の間 安泰ですね」
「でもよ・・・」
「はい」
「オレもこの年だ」
「・・・」
「おめが次 来た時はな」
「・・・」
「更地になっちょるかもなココは」
斜め上を眺めながら
そう言ったママさんの表情は
寂しげだった
「ママさん 僕ですね・・・」
「なんじゃ」
「来年も また新潟に来るかもなんです・・・」
「そうか」
「でも・・・」
「・・・」
「もしかしたら・・・」
「・・・」
「その時は・・・」
「辞めちょる訳ないじゃないか」
「え?」
「おめ もう来年来るのか」
「へ? へ?」
「死ぬるまでやるって 決めちょるんだ」
「お お お」
「来年に くたばってたまっか」
「お お お」
「いつでも来い 待ってるスケ」
「お元気だママさん!!!」
お店を出て振り返り
もう一度ちゃこを眺めた
この外観・・・
尊く見えてきた・・・
酒場ナビ的には
重要文化財だぜ
来年また拝みに来よう
皆様
他にバラック酒場ご存じでしたら
教えて下さいませ
こっちのバラック酒場もどうぞ
↓
塙山キャバレー「いづみ~ラブ」のぼるちゃんとカッちゃんにご挨拶を・・・
ちゃこ(ちゃこ)
住所: | 新潟県新潟市中央区沼垂東3-5-54 |
---|---|
TEL: | 025-241-4310 |