もうダメか・・・

 

今度こそ終わったか・・・

 

そう何度も諦めかけさせて復活する

不死鳥町中華

味楽みらく

 

 

 

 

僕が25年前に

上京してきた街は

高円寺（本当は野方だが）

 

 

25歳の若者は

貧乏でハラヘラシ

 

 

 

 

主食は高円寺の

250円牛丼の

牛丼太郎

 

 

 

 

400円カツ丼の

大陸

 

 

 

 

東中野まで行って

180円ラーメンの

びっくりラーメン一番

 

 

 

 

そして

ボリューム満点の

味楽だった

 

 

 

 

暖簾をくぐると

恰幅のいい親父さんが

 

「いらっしゃーい」

 

と　満面の笑みでお出迎え

 

 

 

 

半チャンラーメン

肉丼

カツカレーなんかを

貪るようにかっ食らい

食欲を満たし

癒しを頂戴して

お値段500円ぐらい

 

高円寺に住んでいた10年間で

通った回数は三桁いってると思う

 

 

 

 

牛丼太郎も

大陸も

びっくりラーメン一番も

疾うの昔に閉店

 

現在も営業してるって

ある意味奇跡だよな味楽

 

しかも

ほとんど値上げせずに

 

 

 

 

高円寺を引っ越してからは

軽く呑みに来る感じで

お付き合い

 

 

 

 

日替わり定食の

オカズだけ注文して

それをツマミに呑る

 

お酒を頼むと

枝豆も出してくれるので

これがだいぶもつんですよ

 

 

 

 

 

焼肉

ポークハム

コロッケ達は

問答無用でツマミになり

 

 

 

 

キャベセンに醤油をちょいと垂らして

味付けのりで巻いたら

これもまたビール泥棒

 

 

 

 

赤星大瓶だけじゃ戦えず

日本酒の力を借りちゃいますよね

 

 

 

 

因みに

日替わりのおかずだけは

130円引き

 

定食が500円なので

すなわちこの一皿で

370円

 

ツマミコスパがエグいぜ

 

 

 

 

エグいのは

丼物のボリュームも同じく

 

 

 

 

若い頃かっ食らっていた肉丼は

今はアタマだけ頼んで

コレもツマミに

 

 

 

 

焼かれた豚肉が

独特のタレに絡み

癖になる味

 

 

 

 

肉汁がしみて

育ったキャベセンが

またいいアテになるんだ

 

 

 

 

帰り際

女性のお客さんには

もれなく

うまい棒が

プレゼントされる

 

羨ましいな・・・

 

こんなに通ってるのに

僕は一度も貰ったことがない

 

 

 

 

待てよ・・・

 

もし

女将さんと親父さんが・・・

 

僕のことを

女性だと思ってくれれば・・・

 

うまい棒をもらえる可能性が

あるんじゃないだろうか

 

 

 

 

というわけで

女装して味楽にやってきた

 

 

 

 

女装のクオリティが

高ければ高いほど

うまい棒貰える率が上がるのは

間違いない

 

が・・・

 

クラリスに手品を見せる

ルパンのセリフを拝借しよう

 

今はこれが精いっぱい

 

 

 

 

こんな

場末のオカマバーのホステス

みたいなヤツが入店してきたら

女将さん親父さん

どんな反応するんだろうな・・・？

 

 

いざっ！

 

 

 

 

無反応だな女将さん・・・

 

そりゃそうか

 

浮世離れ人間の宝庫

高円寺を何十年も見てきたんだもんな

 

この程度の変質者一人で

乱れるような軟弱な精神では

なかろうに

 

 

いや・・・

 

もしかしたら・・・

 

案外

僕のことを

女性だと信じ込んでいるのかも

しれないゾ

 

 

 

 

親父さんも

普通の客として接してくれてる

 

 

なんだかイケそうな気がするぅ～♪

 

 

 

 

オーダーでも

女の子感を印象付けたいな

 

エビとアボカドのサラダとか・・・

カプレーゼとか・・・

サーモンのアマトリチャーナとか・・・

 

あるわけないココは味楽だ！

 

 

無難にラーメンしとこう

 

 

 

 

さぁ

今回の任務で一番の難所

声で注文を伝える

という行為

 

一応確認

タッチパネルは・・・？

 

あるわけないココは味楽だ！

 

 

やしろゆうがやる

芦田愛菜のモノマネ風の声で・・・

 

「ごめんあそばせ」

「あーい」

「おビールと・・・」

「あーい」

「ラーメン頂戴できるかしら」

「あーい」

 

 

手ごたえアリ！

 

女将さんが僕の声を

疑問視してる感じはなかったゾ

 

門関クリア

と言っていいだろう

 

 

 

 

あとは女性っぽい仕草で

呑んで食べるのみ

 

ビールのグラスは

両手で持って女子力アップ

 

 

 

 

ラーメンを持って来て下さった

女将さんには・・・

 

 

 

 

100点の笑顔を

お届けし

 

 

 

 

レンゲにミニラーメンを作って

おしとやかに

口に運んだり

 

 

 

 

クロスの法則で

髪をかき上げながら啜りあげ

杉本彩のごたるセクシーに

 

 

 

 

しなやかに・・・

 

 

 

 

おくゆかしく・・・

 

 

 

 

エレガントに

 

 

 

 

完食完呑

時は来た

 

味楽という舞台で

自分にアッパレ

女形を演じきれたゾ

 

本当に分充やりきれたか・・・？

 

もう一度

自分に問うてみる

 

これでお会計をお願いすると

検証結果が出てしまうんだぞ

 

 

 

 

最後に

ちっちゃいポーチを抱え

これ見よがしにお手洗いに行く姿を

アピールしとくか・・・

 

アカン！

ちっちゃいポーチもってない

 

 

もう腹を決めよう

 

 

「ごちそうさまです」

 

 

 

 

運命の瞬間・・・

 

ドキ・・・

ドキ・・・

ドキ・・・

縄文土器

弥生土器

どっちが好き

 

 

 

どっちもドキ

 

 

 

 

貰えたーー！！

ミッション達成ーー！

お見事まうい棒獲得ーー！

 

 

ただ・・・

 

達成感と共に

襲ってきた罪悪感

 

これよく考えたら

酒場詐欺という重罪じゃないか・・・？

 

 

うん

 

 

正直に言おう

 

 

 

 

「女将さん・・・」

「なんだい」

「アタシね・・・」

「・・」

「信じられないかもだけど・・・」

「・・・」

「実は男なの」

 

 

 

 

「入ってきた時からわかってたよ」

「あっ　バレてた」

「こんな女いないよ」

「うまい棒いいの？」

「いいよいいよ」

 

 

 

よっしゃ

 

女将さんの

しゃあなしギリギリセーフ感は

否めないが

罪にも問われなかったし

まぁ万事OKということで

 

 

 

 

最後に

ヅラとワンピース買った金で

うまい棒350本ぐらい買えたということを

お伝えしときヤス

 

 

 

 

 

 

こっちの高円寺町中華もどうぞ

↓

「七面鳥」オムレツライスの行方