
お嬢さんと結婚させて下さいとお願いしに彼女の実家に行った呑み 八戸「ばんや」
「アッカン めっちゃ緊張してきたっ!」
「まぁ 落ち着きなよ」
「シバかれたらどうしよ」
「ないない」
「たじろぐっ! ひるむっ! 尻込みするっ!」
「なんとかなるって」
「逆サウザーかよ」
僕の隣で
涼しい顔をしてグラスを傾けてるのは
先日
なんとか承諾頂けた
となると・・・
次の展開は・・・
ユナちゃんの
ご実家のご両親にご挨拶っ!
Xデーを明日に控え
2人は今
八戸のばんやに居る
のび太の結婚前夜
いや
イカの結婚挨拶前夜
こんなモン
緊張すんなというほうが難しい
ユナちゃんは
秋田県出身
なのになぜ
隣接の青森県八戸に
居るかというと
ユナちゃんのご実家は
秋田県の大館という街で
ソコは
ほぼほぼ青森と言っていい場所らしく
秋田市内に行くより
青森のほうが近いとのこと
だから
僕は八戸に宿を取った
東北の立地に詳しい方は
仰るだろう
それなら
八戸ではなく
弘前や青森市内
そもそも大館に宿を取ればと
確かに
そのほうはフットワークは軽い
どうして遠い八戸に・・・?
その答えは単純明快
そう
僕が
ばんやと館花岸壁朝市に
来たかったから
今回
快速を含む普通列車の自由席が対象の
JR東日本乗り放題きっぷを購入し
この任務に挑んでいる
八戸から大館には
鈍行で3時間半
その移動は
さぞかし骨が折れることだろう
ユナちゃん覚悟はいいかい
それが
酒場ナビのところに嫁に来る
ということなのですよ
ただ
そのばんやを
十二分に堪能できない
心の引っ掛かり
ミッション開始は
18時間後っ!
しくったかなぁ・・・
ばんやは
挨拶の後のご褒美にしたほうが
良かったかなぁ・・・?
いや
ユナちゃんのお父さんに
殴られないにしても怒られでもしたら
その後ばんやどころではないし
挨拶前で良かったはず
いや後・・・?
いや前・・・?
後・・・?
前・・・?
ぬわぁぁぁぁ
ぐわぁぁぁぁぁ
「ビールなんか呑んでる場合じゃないね」
「えっ」
「日本酒いこうよ日本酒」
「おっ おーん」
僕の不安をよそに
ユナちゃんは
ばんやをじっくり味わってやがる
ちくしょう・・・
他人事のように
「アカンッ! 落ち着かれへんわっ!」
「ドッシリ構えてなって」
「いや そんなん言うけどやで」
「なに?」
「何歳 年離れてる思てんねん」
「20歳」
「お父さんお母さんにしてみればやで」
「うん」
「結婚の挨拶で連れてきて男がやで」
「うん」
「大谷翔平みたいなや」
「ん?」
「30歳のプロのホームラン打ち とかやったらエエけど」
「ん・・・」
「50歳のアマチュアのホームレス みたいなヤツやっぱ嫌やで」
「昔のチャンス大城の自己紹介か」
「因みに お父さんてお幾つ?」
「ん」
「僕より年下とかでは・・・」
「まさか もう60超えてるよ」
「ふぅ 耐えた」
「お父さん 見た目は・・・?」
「ん?」
「竹内力みたいとかじゃないよな」
「うん どっちかというと・・・」
「・・・」
「小沢仁志っぽいかなぁ」
「ビーバップッ! めっちゃ怖いやんっ!」
「あはは 津軽弁スゴイけどね」
「玄関開けた瞬間・・・」
「・・・」
「お父さん エンピツ半分に折って・・・」
「・・・」
「・・・」
「ギャーーーッ!」
「アタシの父親を 何だと思ってんのっ!」
「お母さん 見た目は・・・?」
「ん?」
「松本香みたいとかじゃない・・・?」
「まつもとかおる・・・誰っ?」
「ダンプ松本の本名」
「アンタいいかげんにしてよ」
「竹刀で背中を ギャーーーッ!」
「ちょっと冷静になってさ」
「ムグ・・・」
「これ食べてみなよ」
「・・・これ何やっけ?」
「イカの共和え」
「ともあえ・・・」
「えっ バリ旨いやんっ!」
「その口に日本酒を・・・」
「ツイ―ーッ!!」
「どう?」
「よくぞ日本に生まれけりっ!」
共和えって何だ?
要はイカの身と肝を和えたヤツ
その味の深さと広がる旨味は
もはや太平洋をがぶ飲みしたかのうよう
そうか
イカの水揚げ量日本一だったっけ
八戸は
気持ち沈着
心を酒場ナビモードに切り替えると
今まで見えてなかったモノが
見えてきた
噂にたがわぬ
見事なまでの飴色酒場
カウンターで出番を待つ
大皿料理の面構え
お若いお二人の
真摯に酒場と向き合う姿勢
今
来たくて来たくて震えてた
ばんやに居るんじゃないか
うん
動揺しすぎていた
この状況を楽しめないなんて
もったいない
それこそばんやに失礼だ
うん
明日のコトもひっくるめて
楽しもう
「あのさ・・・」
「ん? 何? ユナちゃん」
「あまり 心ここにあらずだとだとさ」
「うん」
「ばんやにも失礼じゃない」
ムグ・・・
今まさに
ソレを言おうとしてたのに
「もったいないよ」
「ん」
「ばんやを楽しまないと」
ムググ・・・
ソレも今言おうと思ってたのに
「目の前の状況を楽しめないとさ」
「ん」
「明日も楽しめないと思うよ」
なんじゃコイツッ!
全てにおいて
一歩先のコメントばっかしやがってっ!
襟裳岬まで届くぐらいの
大きな声で
アホンダラボケカスガボッ!
って叫んだろかっ!
ほんでその後
ケツから手ぇ突っ込んで
奥歯ガタガタいわしたろか
ただ・・・
ぐうの音も出えへん・・・
こんちくしょう・・・
なんか反論でけへんか・・・?
素直にゴメンって言うの
癪に障るな
考えろ・・・
何か反撃材料は・・・?
ん
こんな切り替えしはどうだっ!
「ユナちゃん」
「ん」
「合格っ!」
「へっ」
「必要以上に狼狽えてみたら」
「・・・」
「どういう発言行動するか」
「・・・」
「試してたのさ」
「・・・」
「動揺が感染したりせず」
「・・・」
「自分を見失って 口を尖らせることもなく」
「・・・」
「事態に左右されない ブレない自分を持つ」
「・・・」
「うん合格」
「・・・」
「それこそ酒場ナビの嫁に相応し・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「嘘っ!うそうそうそうそうそうそっ!」
「・・・」
「ゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンッ!」
「ドッシリしてろっ!」
「はいっ!」
八戸の呑み屋街は煌びやか
前も後ろも右も左も
おいでおいで
ただ今夜は肝臓5分目
明日に向けて
ラーメンで〆て宿に戻ったとさ
東北の土地で
長浜ラーメンってのはご愛敬
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