大宮「いづみや」女の子2人を《はべらせて》センベロをした結果──
「……なんですか、ここ?」
「キャップ被ったオジサンばっかり……」
今回、何度か私が記事にしている〝女の子をはべらせ〟シリーズの続編となるのだが、実はその後もあの2人組の女の子たちとは何度か飲みに行っていた。若くて可愛い女子2人と飲みに行けるのはウレシイのだが、毎度のことながら酒場後の〝ワンチャン〟などとは限りなく無縁で、その代わりに生意気度は果てしなく上がるばかりなのだ。
そんな彼女たちは、ある日こんなことを言ってきた。
「センベロがしてみたいです♪」
なるほど……いっちょ前にそんな単語を覚えてしまっていたとは──、よろしい。まぁ、本気のセンベロをしようとなれば、新橋なんかにあるの『赤札屋』、無難に赤羽の『いこい』、あとは意表を突いて私のセンベロ御用達『サイゼリヤ』なんてのもあるが……。しかし、ここはあえて少し遠出して、あそこに連れて行ってみようではないか。
埼玉県大宮『いづみや本店』
「──と、いうわけで連れてきたんだが……」
「それはいいんですけど、味論さんが連れてってくれるとこって、いつもボロんですね」
「ボロいんじゃない、渋いんだよ」
「おんなじじゃーん!」
「……というか、最初に渋いのがいいって言ってってたよね?」
「そーなんだけどぉ~」
そんな小憎たらしい口を叩く彼女たちも、それなりに酒場に対しての興味は沸いている様子で、センベロについても多少、勉強をしてきたというのだ。
「ネットのね、センベロばっかり載せてるサイトみてるんだよねー」
「そーそー、超わかりやすいよね」
センベロばっかり載せてるサイト……
「それって、酒場ナビじゃないよね……?」
「うん。だってー、酒場ナビってボロボロのお店ばっかりじゃん」
「ボロいんじゃない、渋いんだって!」
大宮駅の目と鼻の先にあるこの『いづみや』は、埼玉を代表する名店のひとつ。朝10時から飲れて、さらに安く……と、彼女らにウンタラカンタラ講釈しながらも、いよいよ本題であるセンベロ体験がはじまる。
「君たちセンベロするんだよね? とりあえず、ひとり千円計算でメニューを選んでごらん」
「えーと、瓶ビール1本いくらかなぁ?」
「あれ味論さん、千円もしないよね?」
……不安と共にはじまった女の子とのセンベロ体験。瓶ビール大(550円)は、注文するとすぐに目の前に出された。
「味論さん、注いであげますよ♪」
「おっ、これはどうも……」
いや、片手! 相変わらずの彼女たち。
「えーと、アレ、なんでしたっけー?」
「そう、あの変な名前のカンパイ」
変な名前の乾杯……あっ、なるほど、《酒ゴング》のことか──
「って、変ていうなよ!」
「はいはい、酒ゴングゥ~♪」
勢いよくグラスを鳴らし、各々グーッと飲る。小コップで飲る姿も、だいぶ板についてきたようだ。
「おいしっ!」
「やっぱ、昼酒はうめぇなぁ」
「プシュー……。味論さん、〝プシュー〟って知ってる?」
知ってる! 君らがまだ未成年の頃から知ってる! そんなことはさておき、メニューとにらめっ子しながら、いざ料理を頼もう。
『マグロぬた』(400円)
「あっ! 浅草で食べたやつ!」
「お、ちゃんと覚えてるね」
『ぬた』は酢味噌がベースであるが、この『ぬた』ほど、その酒場の個性が出る料理はないのではないだろうか。その違いを是非とも、彼女たちにも気付いてほしいのだ。
「おいしいけど、これってどうやって作ってるんだろねー?」
「たぶんさ、ネギにお醤油と砂糖をかけて……」
えっ
『ハムエッグ』(350円)
「やった! ハムエッグ大好き!」
「は~い、あたしお醤油かけま~す!」
やはり、キャップオジサンのゴツイ手からより、若い女子の華奢な手で醤油をかけてあげた方が、ハムエッグも喜んでいるようにみえる。そして、ここからが本番……
「なんか、えっちな感じで黄身割ったらいいんだっけ?」
そう! わかってるねぇ……実に、わかってるねぇ。例の《スケベッグ》のことですよ。
「その通り……お願いします!」
「よぅし……えいっ!!」
むっ!!
「こうして……」
むむっ!!
「……こうだっ!!」
むむむっ……!!
「うまく割れた!……あれ、味論さん?」
大丈夫……私はもう、食べる前から御馳走になった気分だ……。しかしよく育ったものだ。なにしろ、手つきが素晴らしい。
****
「そろそろ、ひとり千円くらい?」
「550円……170円……そうかも? お会計しよっか」
スケベッグ後も、追加のレモンハイや厚揚げなどを注文。一応、彼女らなりにセンベロを意識しながら飲っているのが、いじらしいではないか。残りの酒を飲み干すと、ちょっと早いが会計へと向かった。
「えーっ!? 285円だって!」
「ほんとだ、超やすーい!」
いやいや、レジの1桁のところが壊れて表示されてないだけだろ。ということは、3人で合計2,850円か。まぁ、こんなところでしょう……
「安いから……味論さん、ゴチでーす!」
「やった! ごちそうさまでーす!」
「なんでだよ!」
とりあえず払っておいたが、いや、さすがは『いづみや』である。令和時代&消費税10%だってなんのその。3人で来れば、ひとり千円以下でもそれなりに愉しむことができる。女の子たちだって、満足できているはずだが……
「あたし、全然べろべろじゃないんですけど」
「あたしもー」
まぁ……普通のセンベロなんてそんなもんだけどね。如何に本気のセンベロが難しいかということを、彼女たちが分かってくれればいいのである。
「わかってるよ。じゃあ、次の酒場に向かおうか」
「へー、どこですか? 近い?」
「まず、今の店を出て……」
「はーい」
「すぐ右へ曲がり……」
「うんうん……あれ?」
『いづみや 第二支店』
「は? 隣じゃん」
「おんなじお店でしょ?」
「いやいや、酒場に『同じ』ということはないのだよ」
いづみやの第二支店は、本店の真隣りにあるのだが、たとえ屋号が同じであろうと、その酒場の個性はまったく違うものなのだ。
「えー、またボロいじゃん」
「ボロいって! 言うんじゃ! ないよっ!」
〝渋さ〟というものを理解してもらうには、まだまだ時間がかかりそうだ。
「いらっしゃいませー」
本当は奥のコの字カウンターがよかったが、贅沢は言わない。私たちは間口からすぐのテーブルへと案内された。こちらもまた、キャップの先輩らで賑わっている。
「やっぱ、さっきのお店と似てるねー」
「よく見てみな、造りと雰囲気が全然ちがうだろ?」
「〝梅割り〟ってなんですか?」
無視はされたが、いい酒に目を付けたねぇ。そいつはセンベロには欠かせない酒だ。
「めっちゃ強い酒だよ。まぁ、強い酒だからこそ、安くベロベロに、すなわちセンベロに……」
「ふーん。あたし、梅干しサワーでいいや」
「あたしはレモンサワー♪」
こんのぉ……
「はい、梅割りです」
これこれ、焼酎ストレート系は店員さんがシロップを目の前で割ってくれるパフォーマンスが醍醐味だ。
『梅割り』250円
分厚いグラスのモッキリ姿がうまそうだ。おっと、一応彼女たちにはこの酒の注意事項を教えておくか。
「この酒はね、一日3杯というルールが……」
「……今? センベロ中だからムリー。え? センベロ知らないのー? ウケるー!」
お友達と、デンワ中……
「お待たせしましたー! はい、ゴングゴング~♪」
「じゃあ……また千円以内で選んでみようか」
「はーい!」
『ハムサラダ』370円
プレスハム3枚とポテサラ、キャベツの千切り……サラダといいつつ、この良い意味のチープさが堪らない。こんなのをチビチビやりながら、ヨッパライへと目指すのがセンベロの醍醐味というものだ。
「レモンサワー、おかわりくださーい!」
「じゃ、あたしはね……」
『もつ煮込み』
出たっ、170円のもつ煮込み! この質と量でこの値段は、まさにセンベロ専用の煮込みだろう。こいつに梅割りを合わせたら、本気のセンベロも夢じゃない。よし、もう一度彼女たちにも梅割りを勧めてみるか。
「梅割り、ちょっとだけ飲んでみる?」
「あたしはいいです。あ、梅干しサワーおかわりください!」
「しめ鯖も頼もーっと」
……ですよね。
『しめ鯖』350円
ンまい! 大胆なキッツケと抜群な酢の締め具合。これで350円はだいぶ安いが、さすがにセンベロとなると少し値が張ってくるな……
「もう一杯飲もうかな~。すいませーん!」
「あたしもー」
さらに一杯ずつ……煮込み170円、しめ鯖350円にハムサラダが……あれ?
「ちょっと待った! 君たち、ちゃんとセンベロの計算してる?」
「なんかー……計算めんどくなってきたよねー?」
「ねー。あたしたち、センベロじゃなくてもいいかも!」
えっ!? センベロじゃなくても、いい!?
「そーそー、疲れちゃうもんね~」
「あっ、これ飲んだらスタバ行かない!?」
えっ!? スタバ!?
これは……
「もしもし~? うん、センベロ終わったよ~!」
「やば! まだ14時じゃ~ん♪」
さっきの、お友達を……
「じゃあ味論さん、また飲みましょうね!」
「えっ!? あ……お、おう!」
「ごちそうさまで~す♪」
しかも、スタバには誘ってくれないっていう!!
「──お会計が、2,790円です」
「はい、じゃあ三千円からで……」
2軒で6,000円、か。
なるほど……
そりゃセンベロじゃなく〝タダベロ〟の方がいいよなぁ……
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いづみや 本店(いづみや ほんてん)
住所: | 埼玉県さいたま市大宮区大門町1-29 |
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TEL: | 048-641-0211 |
営業時間: | 10:00~22:15 |
定休日: | 月2回不定休 |