
まさかこんな場所に?郡山「和泉」は酒場の常識を超えた飲れる肉屋だった!
郡山の夜6時。前回『居酒屋 安兵衛』にて、福島のイメージを払拭した私は、意気揚々と次の店へと向かう……とその前に、あともうひとつだけ。福島……というよりは、郡山に抱いていることがあるのだ。
〝郡山駅って、何であんななの!?〟
誤解してもらいたくないのだが、郡山自体がどうとかではなのだ。とにかく、まずはこちらの写真をご覧いただきたい。
『郡山駅 西口』の様子である。高層ビルの『ビッグアイ』が建ち、駅前大通りを中心に広大な繁華街が軒を連ね、アップダウンもなくとても歩きやすい町並みだ。
東北の駅前とは思えない人通りだ。さすがは東北第二の人口を抱える街である。我が故郷である秋田駅前に比べても、かなり発展していて羨ましい限りだ。さて、続けてこちらの写真をご覧いただきたい。
これ……どこだと思います? そう、これが秋田駅前……いいえ、なんと先ほどの郡山西口の反対側『郡山駅 東口』なのである。
東西の落差よ! 南北朝鮮、東西ドイツ時代より落差があるぞ! 地方都市の駅に限らず、東西と北南の出口はどちらかが発展していて、もう片方は何もない、いわゆる〝駅裏〟とされるのはよくあること。にしても、これはやり過ぎじゃないか! 何もないというか、地元で有名な巨大な工場が東口を占有しているのだ(下図・赤枠)
訪れる前にGoogle Mapで見た時からずっと気になっていたが、実際に見てみると「何でこんなことになっちゃったのか……」と、唖然としてしまった。『シムシティ』でこんな街づくりをしたら、完全に廃ビルだらけで即リセット行きだ。素人ながら、街づくりの〝常識〟として不思議でしょうがなかった。
ハイ、酒場にはまったく関係ない話だが、どうしてもこのことを読者に問いたかったのだ。地元の方は何でもないことなのだろうが、街マニアの方は是非とも訪れてみていただきたい。この落差は、絶対に興味をそそると思う。
さて、酒場だ。駅ではなく道を隔てて『安兵衛』の逆サイド、こちらはしっかりとお店がございます。
そうです、『肉の和泉屋』があるのだ。「酒場じゃねぇのかよ!」と言われそうだが、安心して欲しい。その肉屋の横道の奥、煌々と輝く看板が見えただろう。
出たっ、『和泉』だ! こんなところに酒場が……それこそ工場の一角のようで、殺伐とした空気感が漂っている。ただ、よく見ると表の肉屋と直結しており、これぞ正真正銘の〝飲れる肉屋〟と言える。肉屋が営っている酒場なんて、大井町の『肉のまえかわ』くらいしかないと思っていたが、まさか東北のこんなところにもあったとは。
透け透けの暖簾もスバライヤラシイ! 元々は倉庫か何かだったのだろうか、昔の築地にありそうな佇まい。酒場は目立つ通りに面してなんぼ、こういった造りの酒場は中々お目にかかれない。さっそく透け暖簾を捲ろう。
おっつ、結構広いじゃないか! 店に入ると右手にテーブルが三台、奥に小さな小上がり、そして左手には肉屋と繋がっているカウンターがある。
「ご予約でしょうか?」
「いえ、予約はしてませんがイケますか……?」
厨房……いや、精肉室かもしれないカウンターの奥から、女将さんが出てきた。予約でないことを告げると、空いていたテーブル席に案内してくれた。よかった、無事に着席できた……肉屋の神様、ありがとうございます。
「こちらのメモに注文書いて渡してくださいね」
飲れる肉屋でさらにメモ式とは、もはや初めて乗るアトラクションのようにワクワクしてくるじゃないか。ササっと書いて、女将さんに渡す。間もなく、酒がやってくるのである。
はい出ました、『樽ハイクラブ』のレモンサワーだ。フレーバーも多いのだが、大手のASAHIブランドの割にはあまり見かけないのが残念。私、これが結構好きな銘柄なんですよ。
ごぐっ……冷てっ……キーンッ……、やばい、銅製タンブラーが冷た過ぎて、唇に引っ付きそうだ! 一気に口の中がスカッとしたので、今度はコテッといこう。ここでは肉だ肉、肉屋では肉しか食わねーぞ!
まずは、肉屋が焼く『やきとり』をいただいてみようじゃないか。レバ、タン、チューリップ、ピーマン……香りでもうやばい、肉の香ばしい匂いがプァァァァン。レバは抜群に新鮮で臭みゼロ、タンのコリシコ歯ざわり、チューリップは簡単に骨からポロンと解ける柔らかさ。ピーマンなんか、焼き具合が完璧だ。
さすがお肉屋さんだ、これはもう何を食べても裏切らないと確信した。続けまっしょい。
肉屋の『馬刺し(ヒレ)』は、根本的に鮮度が違う。角皿のツマに乗っている感じは、まさに刺身感がある。こいつをポン酢でと女将さんに勧められたので、辛味噌と一緒にひと口食べてみると──うんまぁぁぁぁいっ! 分かってました、分かってましたがとんでもなくウマい。舌にネトリと絡みついて、蕩けるようなヒレの旨味と共に溶けていく、絶っ品ですよ。馬肉の本場、会津若松の『籠太』と『麦とろ』の馬刺しも本当においしかったが、こちらは肉屋ならではの仕上がりを感じる。〝肉のこと〟を解っているんでしょうね。
福島で飲るのは今回が初めてだが、全部で十軒ほど回って一番ウマかったもの……といえば、実はこの『牛串焼き』だったと思う。パッと見、どこにでもありそうな牛串なのだが、串焼きメニューで530円とダントツに高価だったので、興味本位で頼んでみたのだ。ただ、目の前に出てきたサイズを見て「ちと高いなぁ……」と思いつつ、ひと口食べて吃驚した。
溶・け・る!
舌に乗った瞬間、物凄い牛脂の旨味と共にワーッと溶けるのだ。あのね、「エーッ!?」って声出ますよ、これ。今までに高級肉は何度か食べてきたつもりだったが、全部忘れた。元々が相当いい肉なのか、肉屋の特権で何か特別な処理しているかは分からないが……郡山在住、観光で来た方でこれを食してないのは罪である。
牛串のおかわりを頼もうとするが、ひっきりなし予約の電話が鳴る。そして、いつの間にかほぼ満席だ。そりゃこんな肉料理を出す店なら、人気があるでしょうよ。
店の電話が現役の黒電話ってところもいい。受話器にはしっかりと牛の旨味が染みついているのでしょうか……おっ、先にメインディッシュがやって来たぞ。
看板にもしっかり記された『牛めし』は、絶対に食べてみたかったのだ。最初に牛めしのメモを渡した時、女将さんが「お時間ちょっとかかります」と言っていたが、本当にどの料理よりも最後に届いた。これが肉屋の牛めし……うな重の様に厳かな椀の蓋を開けると、たちまち目の前は牛汁の湯気でいっぱいになった。
久しぶりだ、〝おいしそう!早く食べたーい!〟っていう衝動に駆られるのは。箸を椀の底にブッ刺し、グワンと持ち上げ、大きく口を開いてカブりついた──ぐぉぉぉぉうんめぇぇぇぇっ!! もう、全部が〝牛〟だ。私の口の中、持っている箸、丼が乗っているテーブル、着ている服……すべてが〝牛〟の旨味で溢れかえったのだ。
堰を切ったように、丼を片手に箸でカッ込んだ。白飯に染み込んだ牛のスープがジャブジャブ、夢中でカッ込み、一気に食いあげて最後に味噌汁をズズーッと流し込む。ただウマかった……何だったんだ、それは夢の様だった。
「旨い!安い!早い!」が信条の牛めしだが、ここは「旨い!安い!遅い!」〟という常識を覆いしているが、牛めしの旨さの常識も遥かに覆いしている。
私、ちょっと前に郡山駅の東口が「何でこんなことになっちゃったのか……」って言いましたね。
そんな常識も、どうでもよくなっちゃいましたね。理由は〝西口に和泉があるから〟それでいいじゃないか。日本で平和に飲れるのも〝西口に和泉があるから〟それでいいじゃないか。最後にもう一度だけ言おう。郡山在住、観光で来たこの肉屋を体験していない方、早急に体験してみてください。ちなみにこれ〝常識〟です。
和泉(いずみ)
住所: | 福島県郡山市駅前2-1-3 |
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TEL: | 024-932-8328 |
営業時間: | [月~金] 17:00~22:00 [土祝] 17:00~22:00 |
定休日: | 日曜日 |