野毛「阿武茶″」誰が行くねんこんな店っ!!
酒場ナビメンバー3人は
定期的に集まり
情報の交換なんぞをやっていたりする
やれ 呑める魚屋があるぞ
やれ 山谷のにくまん を出す店をみつけたぞ
やれ あの呑み集団からお誘いがあったぞ
などなど
呑みながら喋っていて
僕らはソレのことを
なんて呼んでいる
いつだったか
カリスマジュンヤが
「わっ 野毛に 朝3時から開店する店ありますわっ!!」
と 興奮しながら
スマホを見せてきた
Googleマイビジネスを見ると
確かに
3時00分~8時00分
と記載してある
「野毛で店やってる人が終わってからいくんかな?」
「アフターにも使える店とかでっしゃろか?」
「どっちにしろ 都内に住んでたらいかれへんなぁ」
「ちょいと無理せなあきまへんな」
「いや 誰が行くねんこんな店!!」
その時から
ずっと気になっていた・・・
誰が行くねん・・・
誰が行くねん・・・
僕だ・・・
先日
数人で野毛で呑むタイミングがあった
その日は
何軒かハシゴしたのだが
僕はその間
ずっと
心ここに在らずだった・・・
そう
3時開店の店のことばかりが
頭をよぎってしまうのだ・・・
終電の時間となり
皆 帰り支度を始めるのだが・・・
「僕 残ります!!」
「残るって・・・? 電車なくなるよ」
「朝帰ります」
「なんでまた?」
「使命があるんです!! 誰にも頼まれてないけど!!」
皆と別れた
その足でネットカフェにいき
仮眠をとり
時刻は2時50分
いざっ!!
何時間前かとは
うってかわって静かな野毛
目的地に向け
歩みを進めると・・・
出たっ!!
阿武茶″
この表記で
あぶぢゃ
と 読むらしい
あぶぢゃ・・・
変な店名だ・・・
当たり前だが
ここに暖簾がかかっているのは
初めて見た
どんな方が
切り盛りなさっているのだろう・・・
それこそ
深夜食堂の
小林薫さんのような
強面のマスターなのだろうか・・・?
ドキドキしながら
扉を開いた
わっ!!
いきなり目に入ってくるのが
寿司屋にあるような
ネタケース
お魚さんが
沢山並んでらっしゃる
そして
カウンター中には
高齢のお母サマと
ロマンスグレーのマスター
ご夫婦だろうか・・・?
違うか・・・?
まぁ
どっちにしろ
優しさがにじみ出すぎているような
お二人だ・・・
変形L字カウンターだけの店内
ほかにお客さんはおらず
この環境を独り占め
ならばと
ネタケース前の
特等席を頂いた
瓶ビールを貰い
喉掃除
時計を見ると
三時半
この時間に
本日の1軒目を楽しんでいる
バカな自分が好きだ
正直少し
二日酔いだが
そんなの阿武茶″を堪能していたら
治るに決まっている
壁のメニューに目をやる
焼きなす
オムレツ
トンテキ
どれも気にはなるが
何と言っても気になるのが・・・
やはり
このネタケース
「すいません このケースの中って・・・?」
「ああ・・・ 言ってくれたら お好きな感じで作りますよ」
わっ!!
まさに小林薫さんが
言ってたセリフのようだ
目移りする・・・
マグロのお刺身にするか・・・
贅沢に刺し盛りお願いしてみるか・・・
これはカマスかな・・・
焼いてもらったら旨いやろな・・・
うーん・・・
迷った挙句
蒸しエビを頂戴する
僕はこの
蒸しエビってヤツが
大好物だ
回転寿司にいっても
3皿ぐらいはコイツを食べる
大ぶりの蒸しエビが5尾も・・・
贅沢だ・・・
味も美味しい
エビの旨みが濃ゆい濃ゆい
食感もちょうど良すぎる
これは
他の お魚も楽しみだ・・・
と
このタイミングで
お客さんが何組か入って来られた
耳に入る会話からして
やはり
お店終わりに来られてる
同業の方々のようだ
皆様
ご常連なのだろう
慣れた感じでご注文なさっている
お静かだった
お二人の厨房が
急かせかし始めた
急かせかと言っても
お二人はマイペース
じっくり慌てることなく
調理をなさっている
料理一品一品が提供されるまで
多少お時間がかかっている
この感じだと
今僕が何か注文しても
目の前に置かれるのは
20分以上経った後ではないだろうか・・・?
もっと食べたいが・・・
いや
このまま帰るなんて出来ない
あっ!!
あれは是非ともっ!!
「お母サマすいません おにぎりと味噌汁下さい!!」
「ちょっと お時間頂きますよぉ~」
「はい 待ちます」
「中は何入れますかぁ~?」
「この スジコ入れれますか?」
「はい~ お待ちください~」
二日酔いを引きずっているのだろう
無性に
汁物が啜りたくなった・・・
「はい~ お待たせぇ~」
待ちに待った
おにぎりと味噌汁が運ばれてきた
まず
味噌汁を一啜り
わぁ 気持ちいい・・・
胸の苦しさを
一瞬にして治療してくれてるかのようだ
そして
潤った口中に
おにぎりを近づける
ご飯の握り具合が絶妙だ
適度に空気を含んだような
お米たちが
口の中でほろほろと崩る
塩加減もいい
スジコのしょっぱさとの
バランスが堪らない
おにぎりが
まだ残っている口に
味噌汁を追っかけ
再び潤った口中に
おにぎりを頬張らせるこのループ
永遠に続けられる・・・
このおにぎりと味噌汁の為だけに
無理しても
また来たいと思わせてくれる・・・
阿武茶″
来て良かった・・・
帰り際
お母サマに聞いてみた
「お母サマ 阿武茶″ ってどういう意味なんですか?」
「あはは あぶない っていう意味かしらねぇ~」
「あぶない どっかの方言ですか?」
「方言っていうかねぇ~」
「はい」
「あたしの娘が子供の頃 オテンバでねぇ~」
「はい」
「いつも 危ない って怒られてたのぉ~」
「はい」
「いつのまにか あぶぢゃ って呼ばれるようになってねぇ~」
「はい」
「そっから付けたのぉ~」
「へー それを漢字にしてみたってことですか?」
「そういうことですぅ~」
あはは
そういうことか
お店を後にし
駅に向かったが
始発にはまだ時間がありそうだ
ホームのベンチに座って待とう
あっ・・・
眠い・・・
寝てしまいそうだ・・・
いっそのこと床に寝転がって・・・
いかんいかん
駅員さんに
「お客さん!! あぶぢゃ!!」
って 言われてしまう
阿武茶″(あぶぢゃ)
住所: | 神奈川県横浜市中区宮川町2-15 |
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TEL: | 045-242-9727 |
営業時間: | 深夜03:00近く~午前08:00頃まで |
定休日: | 日曜と祝日の月曜 |