宇ち多”で決死の覚悟で

ユナちゃんにプロポーズした僕だったが

即決ＯＫは貰えず

とりあえずお会計

 

 

宇ち多”の外で

ユナちゃんはスマホをイジっている

 

 

 

 

「あー　くにえもん　4時からだ・・・」

「クニエモン・・・？」

「食べてみたいモノ　見つけたんだよ」

「・・・むう」

「とりあえず　ちょっとだけ丸忠いこうよ」

「・・・おう」

 

 

 

 

あれよあれよで

宇ち多”の斜め向かいの

おでんの丸忠へ

 

 

 

 

ココも立石を代表する

昼呑み酒場の1つ

 

座れるか・・・？

 

 

 

 

神様おおきに

ノーゲスト

 

 

 

 

まな板の上の鯉というのは

こういう心境のことか？

 

一世一代の告白プロポーズをしといて

その答えを棚に上げられては

気持ちがフワフワするばかり

 

 

 

 

まぁ

ジタバタするのも見苦しい

 

ユナちゃんの出方に

身を任せますか

 

 

 

 

いや待てよ・・・

 

今日の宇ち多”は

色んなお客さんがいて

いつもに増してピリピリムードだった

 

緊張感のあるところより

リラックスした場所のほうが

受けやすい

と思っての宇ち多”退店だったかもしれない

 

 

 

 

だとしたら

今の丸忠は

おあつらえ向き

 

神様おおきに

僕らだけ

 

 

 

 

返事・・・

 

あるぞ・・・

 

ココで・・・

 

 

 

 

「ウィー　また来ちゃったー」

「あー　いらっしゃーい」

 

 

ベロベロの常連さんらしき

先輩が入って来られた

 

 

「おっ　紳士淑女　旨い酒呑んどるかね」

「あっ　ハイッ」

「お客さんに絡むんじゃないよ　ゴメンね」

「いえ　旨い酒呑んでるであります」

「お主　気持ちがいいのぉ」

「ありがとうございます」

「褒美に　生でレバー食えるトコを教えて進ぜよう」

「そんなとこあるんですか」

「肉屋で買ってきて　火を通さず」

「先輩っ！命落とす可能性がありますっ！」

 

 

 

 

終始騒がしく・・・

 

 

どうやら・・・

 

 

丸忠で返事は

貰えなさそうだ

 

 

 

 

先輩のおかげで

あっという間に16時

 

丸忠から

駅と反対方向に歩みを進め

立石舟和の前で

ユナちゃんの足は止まった

 

 

 

 

邦右衛門くにえもん

 

ココのことか・・・

 

気にはなっていたが

今まで未入店だった酒場

 

 

 

 

「調べたんだけどね」

「おん」

「めっちゃ美味しそうな」

「おん」

「パエリアがあるんだって」

「パッ　パエリアとなっ！」

 

 

 

 

店内

カウンターと小上がりと

 

第一印象清潔感

 

 

 

 

「パエリアだけってのもアレだし・・・」

「ほな　シメサバも貰おか」

「うん」

「すいません　シメサバとパエリア下さい」

 

 

 

 

いかめしのパエリア

（濃厚肝入り）

 

 

確かに文字だけで

旨さが伝わってくる

 

 

 

 

立石シメサバグランプリ

ファイナリスト

邦右衛門

 

 

自ずと上がる

パエリアへの期待感

 

 

 

 

ぬおっ！

 

パエリア

力強い仕上がりっ！

 

 

イカとイカの肝と

米とネギ・・・

 

おおよその味は

想像できるが・・・

 

 

 

 

遥かに超えてきたっ！

 

想像をっ！

 

濃厚の向こう側っ！

 

 

 

 

立石炭水化物グランプリ

最終決戦上位3組入り

 

 

ふいに出逢えた

誰にも教えたくない酒場

邦右衛門

 

教えてくれてありがとう

ユナちゃん

 

 

パエリア旨すぎて

いいのか悪いのか

ここにいる間は

プロポーズの返事のことは

失念していた

 

 

 

 

邦右衛門を後にした

僕らはまぁまぁ

いい感じ酔っ払い

 

 

「絆いこうよ」

「おん」

 

 

 

 

絆きずな

ってなんぞや

 

 

 

 

正式な屋号は

カラオケ居酒屋　絆

 

 

立石には歌える酒場は

わんさかある

 

が

 

最近の僕らは絆一筋ひとすじ

 

 

 

 

店内

広めでゆったりソファー

 

 

出迎えて頂けるのは・・・

 

 

 

 

出たっ！

 

立石の菩薩

江戸っ子のママッ！

 

 

呑めて歌えるからだけでなく

この方を拝みたくて

ココに来る

 

 

 

 

時々

寝顔も見れたりして

もう愛おしさ1000パーセント

 

 

日本にパンダがいなくなったら

ママを見に来ればいいじゃない

 

 

 

 

前掛けを外した

江戸っ子パパもいらっしゃる

 

ご縁球の向かいという

立地もまたオモロ

 

 

 

 

「キラキラ光るー硝子坂ー♪」

「よっ　若島津の嫁っ！」

 

 

 

 

「いーつでも　ふーたりは　シンデレラハネムーン♪」

「もっと　シャクれてシャクれてっ！」

 

 

 

 

んっ？

 

なんか忘れてないか・・・？

 

せやっ！

 

プロポーズの返事やっ！

 

 

 

 

酔いも手伝ってか

純粋にカラオケ楽しんでもうてた・・・

 

アカン・・・

 

蛇の生殺し状態は

なるべく短くしたい

 

 

 

 

今日中に・・・

 

いや

もうココで返事が欲しい

 

 

でも

 

さっきの話どない？

なんて聞くのもスマートじゃないよな

 

 

 

 

そうだっ！

 

一生一緒にいてくれや

って曲あったよな・・・

 

アレって

女バージョンのアンサーソングみたいなの

無かったっけ・・・

 

アレを歌って・・・

 

 

アカンアカンッ！

 

 

サビの部分しか知らんし

よしんば歌えたとしても

ユナちゃんが女バージョン知ってるとも

考えにくい

 

 

 

でも・・・

 

歌で

つっついてみるのは

アリじゃないか

 

 

 

 

何の曲だ・・・？

 

SMAPのらいおんハート・・・？

 

中井君の件で

今はイメージ良くないか

 

藤井フミヤのTRUE LOVE・・・？

 

ユナちゃん鈍いから

ピンと来ないか

 

 

うん

 

赤面しちまいそうだが

 

雅治兄さんにお世話になろう

 

 

 

 

「いつか父さんみたいに大きな背中で～♪

いつか母さんみたいな静かな優しさで～♪」

 

 

 

ド直球中のド直球・・・

 

ユナちゃんの反応は・・・？

 

 

 

 

「小柳ルミ子歌おうかな」

「大澄賢也の元嫁ですか」

 

 

 

 

「瀬戸は日暮れて夕波小波～♪

あなたの島にお嫁にゆくの～♪」

 

 

 

えっ！

 

 

 

 

「ってことは・・・」

「さっきの返事なんだけど・・・」

「・・・おん」

「望むところです」

「ホンマにっ！」

「うん」

「自分から言うてアレやけど・・・」

「ん？」

「ホンマにええのん・・・？」

「望むところです」

「・・・」

「・・・」

「うおー家族になろうよっ！」

 

 

 

 

「ってか　なんでスッと言わんかったん？」

「・・・なんか　ほぼシラフで」

「ん」

「返事するの　恥ずかしくて」

「・・・」

「・・・」

「ってことは・・・」

「・・・」

「この街が・・・」

「・・・」

「昼から呑める酒場が　多いおかげで・・・」

「・・・」

「今　返事聞けたってことか」

「・・・だね」

 

 

 

 

ありがとう立石

 

 

 

 

この結果に伴い

ユナちゃんのご実家に

例のお願いをしに行くことになるのだが

それは別の話

 

 

 

 

 

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