老化に抗え!「おじゃれ」で蘇る食欲…基地のある街で味わう肉汁大作戦
〝食べ放題〟に行かなくなってどれくらいだろうか。先日、はじめて食べ放題の『しゃぶ葉』に行ったのだが、これがなかなか……いや、おいしくてコスパも最高だったが、とにかく肉がほとんど食えない。ビュッフェスタイルで、はじめに無意識で取りに行ったのもサラダだ。薄いしゃぶしゃぶ肉も、おそらく10枚も食べていないだろう。一緒にいた家族の二歳児の方が食べていたかもしれない。
つまりは老化ですよ、老化。焼肉でもそう、店に入る前は「よっしゃ焼肉! 食い倒そう!」なんて意気込んで席について、ロースを二、三枚も食べればアラ不思議。もう、お肉はいいかな……なんてことになる。
網の上で焼かれてはいるものの、チリチリと焦げだすまで箸が出なくなるという、このわびしさ。あの食べ始めのままのガッツを持続したまま、肉を楽しめることはもうないのだろうか……
新大統領で大盛り上がりの肉食大国アメリカ。その米軍基地が近くにある拝島・福生へ訪れていた。
歩いていても、料理を食べていても、どこかアメリカ情緒を感じてしまう〝おしゃれ〟な街。そんな街の一角に……
おしゃれ! いや……『おじゃれ』を発見!
おじゃれ……どういう意味かを調べてみると、一部地域の方言で「おいで」や「いらっしゃい」的なニュアンスの意味らしい。
酒場の看板にはデカデカと〝おいで〟と呼び止められていて、素通りするのは呑兵衛として無作法だ。私はすんなりと、店の扉を開けたのだ。
「いらっしゃいませ」
ここは「おじゃれませ」と迎えてくれるのかと思いきや。いやはや、なんとも私好みの店内が迎えてくれた。クリーム色のウッディタイプ、壁には力強い手書きのメニュー札がズラーン!
店の真ん中に酒座を構え、いざ、おじゃれな酒を頂きましょう。
まずはゴールドスターの瓶ビールからいただきましょう。トットットッと、グラスに麦汁を注いだところ、これまた年季の入ったテーブルの色味に合いますこと。
ジュグンッ……ジュグンッ……ジュグンッ……、おじゃれぁぁぁぁっ! おいしいがいらっしゃい、ホップの苦みがたまりません。背骨の真ん中に麦汁がツーッと注がれるような、そんな旨味を感じております。となると、お料理をおじゃれっちゃいましょうか。
料理を選んでいる間にポンと置かれた『鴨ローススモーク』は、ただのお通しではなかった。まるでローソンのプレミアムロールケーキのような、美しい身と脂身のコントラスト。
ぶ厚く切り取られた所を箸で持っていただくと、その肉々さに悶絶。熟成されて引き締まった肉の旨味とバターのようにクリーミーな脂身がたまらない。時折、ピリッとした黒胡椒がいい仕事をしている。
つづいてやってきたのが『オレが作った‼ 肉餃子』だ。〝オレが作った!!〟なんて、どれだけ自信があるのかと思ったが、ひと口食べれば納得だ。これ以上はもはや餃子と呼べない、餃子の限界ギリギリのビッグサイズからは、予想通りの肉汁が溢れだす。ひき肉とニラとニンニク、ベストに絡み合い、まるで大きな肉の塊を食べているような食い応えが最高。
最近、とある地域によく行っていたのだが、そこの餃子がどこもおいしくなくて……餃子不信になっていたが、やっと戻ってこれた気分だ。
またもやメニューに〝!!〟マークがある『自家製!! 焼豚』の登場だ!! まずはなにより、なんと美しいビジュアルなのか。脂のサシが入った薄いピンク色の肉に、ネギがパサリと掛かり、脂のテカリが煌めいている。ラーメンはチャーシュー麵ばかり頼むほど、焼豚は大好きだ。
薄いがその分幅広で、持ち上げるとズシリと重たい。それをズルンッとすする様に食らいつくと──う・ま・い!! とても上品だが、野性味のある肉感が半端ではない。ほんのり生感がありとにかく、旨味のジュースがじわりと口中に襲ってくる。円熟の極致というのか、旨味が凝縮されていて過去一おいしい焼豚と断言できる。
肉ばっかりじゃん!……私はいま、肉を喰らっている、という優越感。老いなんてこわくない! さあ、胃袋におじゃれだ。鴨肉の旨味と餃子の野生味、そしてこの焼豚の肉感がジュワッとあふれ出すように、食欲もまだまだ止まらない。いや、むしろ、今がピークかもしれない。
極めつけ言わんばかりにやってきた肉は『おじゃれ発進 ねぎ豚カツ』だ。これもクセのあるネーミング〝おじゃれ発進〟とは一体……。
「バリッ!」と……そう、決して「パリッ!」ではなく、ザックザクの衣の快音を鳴らすと同時に、中からは極厚の豚ロース肉がお出まし。食い応えが半端ではなく、気持ち的に山賊にならないと食いつくせない。肉も上質で脂たっぷり、この脂と皿に山盛りに敷き詰められたネギとを合わせていただく。これね、本当にうまいなぁ。
まだ、肉がイケそうだという奇跡……これだけ旨い肉料理ならしかたがないか。あんなに縮小していた私の胃袋は、いままさしく〝おじゃれ発進〟状態に陥っている。いや、待てよ。今なら焼肉だってしゃぶしゃぶだって、食べ放題に行ける気がする……!
少なくとも今夜、〝肉の食べ放題、一発目にサラダ野郎〟はここにいない。老化した胃袋へのリハビリテーションセンター、見つけたり。
おじゃれ(おじゃれ)
住所: | 東京都昭島市美堀町5-19-4 |
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TEL: | 042-546-3255 |