若松河田「のどか」お笑い芸人に会える大衆酒場
木枯らしの吹く晩秋の夜。
とある酒場の灯火と一緒に笑い声が漏れる。
お題「小学校以来30年ぶりに再会した友人の田中。こいつ全然変わらんなぁ。なぜそう思った?」
答え「会うや否や、”ドッヂやろうぜー”って言ってきた!」
『若松河田』なんて初めて聞く駅名であった。
どことなく地方の駅名を感じさせるが、ここは世界の大都市・東京、しかも新宿に存在する駅なのだ。
そんな見知らぬ大都会の駅にポツリとある酒場『のどか』へとやってきた。
実は今夜ここで、酒場ナビのイカが他何組かの芸人さんと「大喜利ライブ」をする。
まだ知らない読者も多いと思うが、元々イカは『お笑い芸人』なのである。
前から話は聞いていたが、この『のどか』では酒場とは別で定期的にお笑いライブの”ステージ”となる日があるのだ。
この年季の入った”渋い酒場でお笑いライブ”なんて中々面白い発想だ。
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お題「死んだふりをした時、ノリのいい熊なら何をしてくれる?」
答え「お腹いっぱいのフリをする!」
ここで言う『大喜利』とは、司会が”お題”を言い、それに対して2人1組の芸人さんがトーナメント方式で互いにおもしろ回答をボードで出して、客からの”投げ銭”の金額が多い方を勝者とするというもの。
店内はテーブル席と座敷席があり、外観からは想像以上に広い内観。
この日は座敷の奥に簡易ステージとその手前は客席としてテーブルを並べてあるライブ仕様。
客の年齢層は、およそ20代から70代くらいで、なんとなく見てる客もいれば大笑いしてる客もいる。
この雰囲気で飲む酒……悪くない。
そしてイカの出番。
「どぉ~もぉ~! 酒場ナビ イカで~す~!」
ブッ!と、私はレモンサワーを噴出す。
いつの間にか”酒場ナビ”がコンビ名みたいになってるじゃないか。
“大衆酒場芸人としてアメトークに出されたらどうしよう……”
と、不安に思いつつ、最初に出された料理に箸を入れる。
「!? うまいっ!」
『玉子焼きのあんかけ』なのだが、なんと表現すれば正しいのか…。
私的に一番近い表現なのが、実家の祖母が作った煮物のような味付けで、餡の美味さに加えなんとも懐かしい”風味”を感じさせてくれる。
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お題「マジシャンがショー中にいきなり引退宣言。何があった?」
イカ「大谷翔平のホームランボールが当たって死亡!」
イカはプロフィールにも書いてあるように無類の”野球好き”である。お笑いライブは勿論、普段の私生活でも多くの野球ネタを発し、夢は”阪神タイガースのお嫁さん”とのこと。
残念ながら初戦敗退したイカが去る時を同じくして、このとき旬でもあった『あん肝』が登場。
『あん肝』って一口目が特に美味いのだが、はっきり言って何切れか食べてると飽きる。だがこの『あん肝』は味付けと素材を相殺させない絶妙なバランスで最後まで美味しく食べれた。
そして何も言わずとも、旬の物を旬の時期に出すという事も客へのサービスのひとつではないだろうか。
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お題「43年間洞窟に住んでたおじさんが洞窟から出てきた!その理由とは?」
答え「隣にもっといい洞窟があったから!」
決勝戦にもなり、店の中がますます笑いに包まれる頃、『竜田揚げ』を頂いた。
これもまたうまい。
外側を丁寧に揚げており、そこらへんの揚げ物にある”ベッタリした油感”はまったくなく、中の白身魚もふっくら。
これらの料理は、このお笑いイベントの時に出されるセットメニューらしく、個々の値段は分からなかったが普段のメニューも是非食べてみたいと思った。
そして料理を食べ終わると共に、大喜利ライブも幕を閉じた。
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ライブ後、酒場ナビの”ミスター・あいさつ”でもあるイカが、客や出演者に手厚くあいさつ回りをする。
共演者の芸人『チャンス大城』さん。
イカと同期の芸人さんとのことだが、この日私が一番笑った芸人さんだった。
客で来ていた常連のお姉様。
“船乗りは港、港に女あり”と言うが、イカも”酒場、酒場に女あり”なのだ。
この親密度、もしかてし本命のオンナか……?
そして自分の店をライブ会場として提供している店主。
この後、この店主の粋な計らいで、残った芸人さんやお客さんの数名と、少しだけ(本当はかなり)閉店後のお店で飲ませて頂くことになった。
話を聞くと店主は”酒場ナビファン”ということで、盛大にサービスをして頂いたのだ。
ライブ中に出されたあの美味い料理をまた一通り出してくれるし、酒のグラスが空くとすぐに継ぎ足してくれたのだが……かなり甘えてしまった。
「どの記事が一番はないんです」
店主に参考の為にと、酒場ナビでどの記事が一番面白かったかと聞いたときの答えだ。
要するに全体の記事を総じて好評を頂いており、それはある意味一番嬉しい答えだった。
大分、酔っ払ってしまってはいたが、店主のそのさりげない言葉やサービス精神は、私やイカを感化させるには事足りるものであった。
突然、店主に感動したイカが立ち上がる。
「店長はん!ワイ、お返しにお手伝いしまっせ!」
酒場ナビの”ミスター・サービス精神旺盛”でもあるイカが、そう言って空いた食器やグラスを持って厨房へ走った。
それをきっかけに、私を含む残っていた人達も自らテーブルを拭いたりなどの片付けを手伝い始める。
一心不乱に食器を洗うイカ。
“優しさが優しさを生む”とはまさにこのこと。
そして、そんな気持ちが自然とイカにこう言わせるのだ。
“ありがとうございました”
『のどか』にて定期開催する『チャリンチャリン大喜利』は、主催者の方のツイッターなどで告知しているようなので、酒場で美味しい料理と大喜利を楽しみたい方は是非。
のどか(のどか)
住所: | 東京都新宿区新宿7-3-36 |
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TEL: | 03-3204-4644 |
営業時間: | 不明 |
定休日: | 不明 |