神戸三宮「ぼっかけ長田本庄軒」メンバーとバーチャルデート(イカ編2)
個人的に好きな企画の第2弾。
今回はさらに女性ファンのご希望に応えるべく、”デート”というより酒場を絡めた”恋愛ストーリー”をバーチャルリアルにしてみました。
女性読者はイカの彼女になりきってご覧ください。イカのファンは必読です。
(勿論、男性読者も女性になったつもりでどうぞ)
『おいかけて、ぼっかけて』
キャスト:イカ
「はじめまして、(あなたの名前)と申します」
東京から新幹線で約3時間。
イカくんと付き合って約1年の今日、わたしたちは彼の実家がある神戸に来ていた。
新神戸駅へ降り、さらにそこから在来線で30分。イカくんの実家に到着したのは夜の8時過ぎだった。
「疲れましたでしょう?」
「いえ、ぜんぜん平気ですよ~」
そう言って出迎えてくれたイカくんのお母様とお父様。
イカくんと正反対で穏やかで優しそうなご両親……なんて言ったら怒られるかな(笑)
「(あなたの名前)さん、もう明日の夜には東京帰るんやって? もっとゆっくりしてったらええのに」
「ありがとうございます。でも仕事があるので……」
お母様が夕食を作ってくださって4人でテーブルを囲む。
東京出身のわたしは、どの料理もめずらしく、そして美味しかったけれど……。
「アンタも明日東京帰るんやろ?」
「せやで」
「……そんで、今回何しに帰って来たん?」
「いや……観光やねん」
イカくん、わたしが神戸の実家まで来た意味って……わかってるよね?
ご両親に”結婚相手”として紹介するためにわたしを連れてきてくれたんでしょ……? て、いうかここに来る時からそういう話だったじゃない。
実は、まともに”プロポーズ”だってされていなかった。
そんなこともあり、彼への不満がどんどん膨れ上がる。
お母様も察して、さっきから言い出しやすい会話を振ってくれているのに、イカくんはテレビばかり観てまったく話をする素振りはない。
結局、この日ご両親がお休みになるまで”結婚”という二文字を聞くことはなかった。
****
次の日の朝。
もちろん、わたしは機嫌がいいわけがない。
ご両親に気まずい感じもあり、早々に帰る準備をしているとお父様に声をかけられた。
「また来てもらえるんやろか?」
その言葉の答えにまったく自信がなかったわたしは、ご両親の目を見ることなくうつむいて言った。
「……ありがとうございました。 どうもお邪魔しました」
それをよそに、イカくんは「ほな行くわ」だけをご両親に伝え、家を出て行った。
「……どういうつもりなの?」
駅へと向かう川沿いの道。
わたしの我慢はピークに達していた。
「まあちょっと待ちや。 タイミングがあんねん」
タイミング──。
それが昨夜じゃなければいつだっていうの。
わたしはただ、安心させてくれる言葉が一言欲しかっただけなのに。
「どいて、 帰る」
「痛ッ! おいどこ行くねん」
「付いてこないで! さよなら!」
「あ……」
怒りに任せ彼を突き飛ばしたわたしは、小走りで駅へと向かった。
そして、見知らぬ土地の電車へひとり乗り込んだ。
****
“こうべさんのみや~、 神戸三宮です”
何駅くらい乗っていたのだろう。
うつむいていた顔を上げ電車の窓の外を見ると、まるでわたしの心を映すかのようにどんよりとした空模様が広がっていた。
発車音のベルが鳴る。
降りるつもりはなかったけど……
やっぱり、2人で『約束』していたこの街に降りることにした。
駅から程なくして大きな鳥居が見えてきた。
『生田神社』
“縁結び”のご利益で有名なこの神社に、ほんとうは”あのバカ”と一緒に来る『約束』だった。
(次はもっといい男とご縁がありますように……)
少し強めに鈴を鳴らし、ブツブツと神様にお願いを聞いてもらったわたしは、当てもなく神戸の街を歩き始めた。
「あ……ソースのいい匂い」
『ぼっかけ長田本庄軒』
何気なく入った地下街で見つけた焼きそば屋。
丁度お店が開いた11時。イカくんの実家では朝ごはんも食べずに出てきたからお腹も空いていた。
“ええいっ!昼からビールも飲んじゃうもんね!”
と、鬱憤ばらしついでにお店へ入った。
“ぼっかけ”とは『牛スジ煮込み』のようなもので、ここでは焼きそばと一緒に食べるらしい。
ホイルで蒸された煮込みは、甘辛でついついビールが進んじゃう。
お店の人が目の前の鉄板で焼きそばを焼いてくれる。
熱いソースの湯気を見ていると、ふと、こんな事を思い出した──。
“関西やと焼きそばをライスで食うんやで”
“はあ?絶対ありえないんだけど”
“ほんまやって。地元に来た時食わせたるわ”
──それが、今日だったのに。
わたし、なんでここに一人でいるんだろ。
なぜか口が開いた。
「あの……すみません。 ライス……ください」
にわかな寂しさをビールで流し込み、はじめて一緒に食べる『焼きそば』と『ライス』。
やっぱり変なの。
でも、
おいしいなぁ。
イカくんの言ってたとおり、東京ではあまり見かけない太麺の焼きそばとライスはベストマッチだったけど、その驚きを伝えることは叶わなかった。
瓶ビールを一本空け、ちょっとほろ酔いになりながら、ひとり静かに店を出た。
****
酔い覚ましに暫く歩いていると『元町駅』という駅に着いた。
「ここ……何だろ?」
駅から続く高架下にあった通路。
そこは両側面がシャッターで閉まっていて、昼だっていうのに薄暗く、奥がかすむくらいの長い一本道だった。
「あ、イカくんが言ってた”モトコー”ってここのことか」
行きの新幹線の中でイカくんが言っていた。
高校生の頃、学校帰りによくこの『モトコー(元町高架下)』に来て遊んでたって。
きっと、夜になるとすごい賑わいなんだろうな。
そういえばこの”モトコー”にも連れて行くって言ったけど……いくらなんでも長過ぎない?
イカくんは東京で遊びに行くときも、古い居酒屋ばかりに何軒も付き合わせられて、すごく歩かされるけど、君はいなくたってわたしを歩かせる。
『神戸港』
ヘトヘトになりながら、わたしが一番来たかった『神戸港』に着くと、目の前はテレビでよく見る風景が広がっていた。観光地なのに意外と人がいないのが、よりわたしの孤独感を高める。
“神戸港は夜もええけど昼も雰囲気ええんやで”
めずらしく、柄にもないこと言っていたな。
ここもイカくんが青春を過ごした思い出の場所。
わたしも、
わたしもここでその思い出のひとつになりたかった──。
雨がポツリ、
またポツリとわたしの前髪を叩く。
そして、
目から頬をつたう雫もポツリ。
ポツリ
目の前には何も言わずに、ただただ、わたしを見下ろす真っ赤なポートタワー。
……イカくん
なんでいないの──
指で涙を払い、帰ろうと振り向いた。
「泣くんやない、お嬢ちゃん」
え?
「プッ! なにしてんの?(笑)」
「港やから、かっこよく係船柱に足かけよう思ったら無かってん」
聞き慣れた関西訛り。
そこには、何事もなかった様に、いつもの彼がいた。
「……バッカみたい。てか、係船柱ってなに?」
「係船柱って、石原裕次郎なんかが足を乗せて……そんなんええねん!」
「うん」
「今やな」
「え?」
「俺と結婚して……」
ブオォォォォォ──……ン
ふいに、
停泊中の船から大きな汽笛が鳴り、それは数秒の間、神戸の港に響き渡った。
2人で音のする方を見つめていると、やがて元の静かな港へと戻った。
「結果、タイミング悪ッ!!」
「あはは、大丈夫だよ。イカくん声大きいから、聞こえたよ」
「……そうなん?」
「はい。 よろしくおねがいします」
雲の間からは少しだけ光が射し、
無口に重なったわたし達を、さっきより赤くなったように見えるポートタワーが見下ろし続けていた──。
ほな、今から神戸案内したるわ
いかがであっただろうか。
たまにこんな酒場ナビもあってはいいのでないだろうか。勿論、ストーリーの設定はフィクションだが、こんなメンバー・イカと”リアルな飲み”をしてみたい方はコチラまで。
長田本庄軒 三宮センタープラザ店(ながたほんじょうけん さんのみやせんたーぷらざてん)
住所: | 兵庫県神戸市中央区三宮町1丁目9-1 東館 B1F |
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TEL: | 078-391-3314 |
営業時間: | 11:00~21:00 |
定休日: | 無休(※1月1日のみ休み) |