高津「タイガーワン」うおぉぉぉハラ減った!これが男のやんちゃ酒場
「ちょっと駅から遠いんやけど行きたい酒場があるんどすえ」
ご存知、幡ヶ谷の”はんなり男”こと、カリススマジュンヤと溝の口の方へ飲みに来ていた時の事。
駅でだいぶ飲んで泥酔した彼は、フラフラと夕焼けの町へと歩き始めていた。
20分程歩いただろうか。馴染みのない町をGoogleMapを見ながら行ったり来たりしていると、カリスマジュンヤが叫んだ。
「あった!タイガーワンや!」
『タイガーワン』
なんというパンチの効いた店名。黄黒の縞模様に工事現場の様な看板、土木作業中を思わせる注意書きのような一風変わった店構え。
ここは一体……。
カリスマジュンヤは”ずっと行きたかった風俗店”にでも入るかのような、恍惚の表情で店へと入り私も中へと入った。
「いらっしゃいませー」
夜も遅かった為か、他に客はおらず中の厨房にはマスターが一人だけであった。
まぁ、一見どこにでもあるような内観……
いや、よくみると外観と同様、やはり”土木関係”をイメージした物がたくさん置かれている。
こんな不思議な酒場、今まで訪れたことがない。
とりあえず、入り口には券売機が置かれていたので、まずは一杯100円という激安『緑茶ハイ』を発券した。
「わぁ!ボクのスイートハニーがおるやん!」
マスターに食券を渡し、まずお迎えをしてくれたのがカリスマジュンヤの”心のハニー”であるという女優さんのポスター。
「久しぶりに今夜は一緒に飲もうやないかい!」
と、照れ臭そうにしていると、緑茶ハイが出来上がった。
『緑茶ハイ』
このサイズで100円とは嬉しい。
というか、よくみると料理もかなり安いので、ひと通りカリスマジュンヤに選んでもらう。
少し強面のマスターに食券を渡し、徐に話しかける。
「この『タイガーワン』て店名、どういう意味なんですか?」
「”寅壱(とらいち)”を英語にして”タイガー(とら)ワン(いち)”なんですよ」
なんと、鳶職の御用達ブランドである『寅壱』にかけた店名だったのだ。道理で土木関係の装飾が多いのだとこれでやっと納得した。
ここは土木作業現場の”詰所”をコンセプトにしている酒場だったのだ。
二人で関心していると料理が出来上がった。
『ガツのにんにく煮』
なんという男らしい料理であろう。細切りのガツにしっかりと、そして強烈なインパクトの”醤油ニンニク味”を染み込ませていて酒がどんどん進む。しかしそんな味とは裏腹に、まるで芸術の様な盛り方がこの男臭い”詰所”に特に映え、あたかも”上品さ”さえ感じさせる『妙』。
『豚もつ煮込み』と『牛すじ煮込み』
んまいっ!!
四の五の言わず、これもまた”男らしい”料理だ。どちらもしっかりと煮込まれており、肉を咀嚼する為の筋力は一切使わずに嚥下することができる。
「それをライスに乗せて食べてみてくださいよ、めちゃめちゃ旨いんで!」
よく見ると”タイガーワン”を着ているマスターが教えてくれた。
さっそくカリスマジュンヤが『めし』を食券で購入。この『めし』っていう料理名にもこだわりを感じざるを得ない。そして茶碗だけを貰い、電子ジャーから『めし』を盛り始める。
「マスター!これどんだけ盛ってええんスか!?」
「もう他にお客さんがいないんで、限界まで盛っちゃってくださいよ!」
“限 界 ま で 盛 っ ち ゃ っ て く だ さ い よ”
それを聞いた食べ盛りのカリスマジュンヤ青年は、顔を天井に向け、「うおぉぉぉおぉぉぉ!!」と発狂しライスを盛りまくる。後ろから”スイートハニー”も応援している。
『めし(限界盛り)』
私が高校生の頃でもこんなに『めし』を盛ったことはないだろう。
それをみたマスターがさらにカリスマジュンヤを煽る。
「じゃあ一旦煮込みにトッピングを掛けて、最後に『めし』に乗せて食べてみてください!」
ネギはいいとして……超激辛党のカリスマジュンヤには『ニンニク辛み』や『七味唐辛子』が危険すぎる。
「マスター!これどんだけ掛けてええんスか!?」
「もう他にお客さんがいないんで、限界まで掛けちゃってくださいよ!」
“限 界 ま で 掛 け ち ゃ っ て く だ さ い よ”
それを聞いた食べ盛りのカリスマジュンヤ青年は、顔をポスターに向け、「ふぅぅぅみぃぃぃかぁあぁぁぁ!!」と発狂しトッピングの『ニンニク辛み』や『七味唐辛子』を掛けまくる。
『めし(限界盛り)+煮込み限界トッピング)』
うわ辛いっ!!
でも、んまいっ!!
決して出来たてホカホカの『めし』ではないが、学生の頃に部活帰りで立ち寄った大衆食堂のオバチャンが、”これ以上圧縮したらダイヤモンドになるんじゃないか?”と思うくらいにパンパンに盛ったライスで食べる定食を思い出した。遊び疲れた体に、あれは本当にうまかったと思わないか男性読者諸君。
「もうマスターも一緒に飲んじゃいましょうよ!」
「え?いいんですか?でもお客さんに言われたら飲むしかありませんね!」
この気さくでサービス精神旺盛なマスターに感動した私たちは、遂にいつもの”酒場ナビ的宴”を開始させるべく、三人で一緒に”酒ゴング“を鳴らしたのだった。
宴がはじまり私たちの活動の話や、マスターの「この店毎月●●円も赤字なんですよ(笑)」などと、プライベートの悩みまでもが”酒の肴”としてこの”詰所”で語られ始めた。
「ここって二階席もあるんスか!?」
「外出て、階段上がったらありますよ。見ますか?」
もはや何でもネタを提供してくれるマスター。
私たちは外に出て階段を上がり、二階席へのドアを開ける。
「うわっ!なんか落ち着く!」
四畳半ほどの二階席は畳張りの座敷。
なんだか先輩ヤンキーの溜り場に連れ込まれてしまった写真に見えなくもない。
「ひゃっほーい!!」
カリスマジュンヤはこの実家の様な懐かしい雰囲気に酔い、大の字になって寝転ぶ。
「ママぁ~!!マ~マぁ~!!」
「どうしたのボクちゃん、さぁママのお膝でおねんねしなさい」
「ばぁ~ぶぅ~!」
と、いうような茶番劇にマスターもしっかりノッてくれる始末。
もはや飲みに来たというよりも、友達んちに遊びに来たという感覚に近かった。
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しかし楽しい時間はあっという間で、この”詰所”を去らなければいけない時間となった。
店内へ戻り、感謝の気持ちを込めて名刺を渡すと、マスターからも名刺のお返しを差し出されたのだが……。
「え!?これなんですか!?」
「この店のキャッシュカードです。持って行ってください!」
「なんでやねん!」
名刺を持っていなかったマスターは代わりにキャッシュカードを出してきたのだ。
勿論お返ししたが、最後までこの男だらけの”詰所”には笑いが絶えなかった。
今、客観的にこの記事をみてみたが、これが本当に初めて訪れた酒場とは自分でも驚く……。
そして、こんな楽しい酒場、他に中々ないだろう。
卓越した『ユーモア性』
瞬発力に優れた『柔軟性』
そして特筆すべき『サービス精神』……。
この『タイガーワン』にはどこを見ても、我々酒場ナビの”好物”しかなく、この日メンバーのイカがいなかった事が非常に悔やまれる。
まぁ、また三人で来ればよい話なのだが。
これからも私は、こんな酒場と出会い、そして伝えていきたいと改めて思った”やんちゃな夜”であった。
タイガーワン(たいがーわん)
住所: | 神奈川県川崎市高津区溝口5-16-18 |
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TEL: | 090-4425-0001 |
営業時間: | [月~金] 11:30~14:30 17:30~23:00 [土] 11:30~14:30 17:30~22:00 |
定休日: | 日曜 祝日 |