横須賀「猿島」勝手にオープン!?東京湾の無人島酒場
私は、将来どうしても住みたい環境がある。
それは『島』だ。
沖縄はもちろん、伊豆諸島や奄美諸島、小笠原諸島に外国の島も捨てがたい。とにかく『島』という環境で生活したいのだ。
なぜ住みたいのか。
観光などで小さな島を訪れたことのある方はわかると思うが、あの360度海に囲まれている”閉鎖されている空間”が堪らないからだ。
一度、日本の最西端の島『与那国島』に行ったことがあるが、あそこの”孤立感”は今まで色々な島へ行ってきた中でも最上級だったといえる。どこを見ても本当に海しかない。
しかし、東京に住んでいるとなかなか行ける機会がないし行くのにも金がかかる。
そんな”島欲求不満”を『横須賀』で解消できると知ったのは、割と最近のことであった。
横須賀のどの海からも大抵見ることが出来る『猿島』という小さな島がある。
陸から船で10分程度で行ける、東京湾で唯一の無人島である。
夏はBBQ、釣りや島内めぐりなどが楽しめ、とにかく気軽に『島』を堪能することが出来るのだ。
ある日、私は思いついた。
『大衆酒場 猿島屋』で酒が飲みたい……!!
もちろん、そんな酒場は島には無い。あるのはいいとこ売店くらいだ。
ならば酒場を”自分で作るしかない”と急遽、自前で酒場グッズを用意して、猿島行きの船に飛び乗ったのである──。
普段、キャラ的にこういうことをするのはカリスマジュンヤなのだが、今回だけは私の”島欲望”を抑えることが出来なかった。
そして港を出て数分も経つと、猿島が目の前に現れた。
『猿島』
島名の由来は、むかし偉い人が船で遭難したときに、どっかから出てきた猿がこの島に誘導してくれたとかどうとか……とにかく久しぶりの『島』に気持ちが高ぶる。
島に下りて船が戻っていくと、もう私はこの島に取り残された状態なのだ。特にこの島は無人島なので”閉鎖感”は高めだ。
まずは酒場として利用させてもらうために、島内の”挨拶まわり”に出かける。
元々、軍事施設として利用していた島の為、島はまるで要塞の様な造りとなっている。
要塞と言えばこれも以前、長崎にある”廃墟マニア”垂涎の『軍艦島』に行ったこともあるのだが、あの島も相当迫力があり孤島感も満載だ。
さすがに住みたいとは思わなかったが。
島の挨拶まわりも終わり、海が一望できる”外飲み席”でいよいよ『大衆酒場 猿島屋』の暖簾が出される。
まずは”喉の掃除“に白ホッピーを、架空の『マスター』に心の中で注文した。
“マスター、ホッピー白でください!”
なんとこの酒場は、アイスペールに入った氷のおかわりが自由なので、いつでもキンキンな状態で酒を飲めるのだ。
濃い目の焼酎に、ホッピーを注ぎ……
まずは東京湾と”酒ゴング“をする。
梅雨だってのに、発狂するくらい快晴だったので特に冷えたホッピーがうまい。
一気に飲み干した後、今度は本格焼酎を無愛想そうな架空の『女将』に心の中で注文した。
“す、すみません女将さん!一刻者を水割りでください!”
『一刻者』
大衆酒場といったら『宝酒造』。そのいつも飲みなれている”宝焼酎”のメーカーが作ってる芋100%の本格焼酎が『一刻者』である。
少し口に含むだけで突き抜ける濃い芋の甘い香りと甘い味が、猿島のしょっぱい潮風と相性抜群である。
こうなると”アテ”が欲しくなる。
「コレ、タケノコ、ニョッキデス」
マレーシア人の架空の『アルバイト』が、注文したクイックメニューを持ってきた。
『タケノコの煮物』
シャキリうまいっ!
旬は少し過ぎたものの、歯ごたえを残す程度に煮詰められたタケノコに、しんなりした鰹節が合うのはこの『大衆酒場 猿島屋』でも同じである。
続けて料理が届く。
『アジフライ』
大衆酒場の定番メニューといったら『アジフライ』もその一つ。
揚げたてではないが、この無人島で海を見ながら食べる魚……いや厳密にはそれをさらに”揚げている魚”を食べる気持ちよさは、この酒場ならではだろう。
気持ちが高ぶった私は、追加注文で思わず声を出してしまった。
「マスター!唐揚げください!」
「……」
大将からの返事は無かったが、しばらくすると『唐揚げ』の用意は出来ていた。
『唐揚げ』
んまいっ!!
唐揚げに関して、この様に衣が”しんなり”している方が好きだ。さらに言うと醤油味が好きなのだが、この唐揚げはそれを完璧に満たしている。
仮に横須賀のスーパーで100gを150円と、少し高めで売っていても間違いなく買ってしまうだろう。
大衆酒場感のある料理が続き、そろそろ箸休めも兼ねて最後に大好物の”あのアテ”をスーパーの袋から取り出し……いや、もちろん架空の『マスター』に注文した。
『ポテトサラダ』
ついでに酒も『一刻者』の炭酸割りに変えた。
芋のスカッっとした炭酸で喉を流した後、こってりとマヨネーズの効いた、これまた定番メニューである『ポテトサラダ』は締めの一品にピタリとハマった。
「マスター!このポテサラ絶品だね!」
「……」
──目を閉じると架空の『マスター』の、ハニかんだ笑顔が見えた気がした。
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もうすぐ17時。
横須賀に戻る船の最終便は早い。
さーて、そろそろ店を出るかぁ~と、『唐揚げ』や『ポテトサラダ』の入っていた空のパックを、持って来たスーパーの袋に入れて、無言でゴミの集積所へ捨てた。
まぁ茶番劇はこれくらいにして、広い海にぷっかり浮かんだ島で酒を飲むのは最高であることは間違いない。
海や自然が好きな読者は、是非こんな飲み方も試してみてはいかがだろうか。
最終便の船に乗り、振り向けばまたこの島は”無人島”となるのだと、ふと思う。
この独特な寂しい雰囲気も、やはり私にとって『島』の魅力のひとつでもあり、さらに島に住みたい欲求は増すばかり。
“将来、絶対に島に住んでやるからな……!”
固く想いを馳せ、遠ざかっていく島を見つめながら、いつも思うことがある。
まぁ日本自体、おもいっきり『島』なんだけどな……と。
猿島(さるしま)
住所: | 神奈川県横須賀市猿島 |
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営業時間: | 8:30~17:00(船) |