【船橋3部作】船橋「大衆あさひ」船橋のんべえ達と優しい夜
前回のつづき。
初めての船橋酒場巡りに訪れた私とカリスマジュンヤは、『増やま』で見かけた”粋なお兄さん”を偶然にも、次に立ち寄った『大衆あさひ』で遭遇したのだった。
ジュンヤ「あれ?さっき”増やま”にいませんでした?」
何の躊躇いもなく、カリスマジュンヤはお兄さんに話しかけた。
正直、ちょっと強面のお兄さん。
だが、ウチのカリスマジュンヤはそんな事、お構いなしなんだいっ!
お兄さん「……え、 ああ、さっき隣にいましたね」
ジュンヤ「やっぱりそうですよね!梯子酒ですか!?」
お兄さん「いやぁ、”増やま”もこの店も知り合いがやってるんで」
ジュンヤ「”おつりはお小遣いで”って出て行ったのメッチャ粋でしたよ!」
お兄さん「いやいや(笑)そんなことないですよ」
あさひ店主「え?じゃあウチにもお小遣い置いてってよ~」(一同笑い)
お兄さんは生粋の”船橋っ子”だった。
サーフィン帰りに同級生が経営している『増やま』と『大衆あさひ』にたまたま立ち寄ったらしい。
偶然にも私と同い年であり、話をしてみると色々船橋の事を教えてくれる優しいお兄さんだった。
ジュンヤ「僕たち本当は『一平』にも行きたかったんですよ!でも、今日休みなんですね!」
お兄さん「そうですね。因みに”増やま”は、僕の同級生が元々”一平”で働いていて、独立して開いた店なんですよ」
驚く事に、まだ開業一年足らずであの”ディープ酒場感”を醸し出していたのだ。
訪れると分かると思うが、一年であの雰囲気を出せる酒場なんて中々あるもんじゃない。
──そんな話をしていると、
お兄さん「あ!この人”一平”の店長ですよ!」
と、店の前を歩いていた一人の男性を呼び止めた。
私達が「えぇっ!?」と声を出した先にいた人物こそが、丁度話していた”一平”の店主だったのだ。
お兄さんに紹介してもらった一平の男性店主は、真っピンクのシャツにスカイブルーのエナメルの靴、そして愛くるしい顔立ちで私達にあいさつをしてくれた。
ジュンヤ「今日行こうと思ったら休みだったんですよ!」
お兄さん「この2人、わざわざ東京から”一平”に来たみたいだから、店開けてやってよ」
一平店主「いやいや、無理だよ~」
仮に「開けてもいいよ」なんて言われたら面白かっただろうなあ。
しかし、ここまで”偶然の出会い”が続くと読者も”ヤラセ”ではないかと疑うかと思うが、我々酒場ナビにその技量はまだない。
****
これを書いてて思い出したが、ここ『大衆あさひ』の料理もかなり美味しかった。
と、言うよりはこの厨房の広さからは想像つかない料理の”品数”と”質”と言うべきか。
『まぐろブツ刺し』は、粒が大きくカットされ嫌な”スジ”もあまり気にならない。
実は苦手な『うなぎ肝串』も全然臭みや苦みが無く、子供でも食べられるんじゃないかと思うくらい食べやすい。
『ネギチャーシュー』も、ちょっと残してしまったくらい量が多くて嬉しい。
さすが、お兄さんの同級生。”ケチらない”料理の出し方がこれまた粋である。
そんなお店だもの、
日も暮れるにつれ、客もますます増えてくる。
ふらっと、マッサージ師をしているというお兄さんの知人が現れた。
この方も新参者の私達の相手をして頂いたのだが、「いつもの!」と店主に一言いうと、出てきたのがピッチャー程あるジョッキに入れられた”男梅サワー”だった。
手に持つのでさえ大変そうなジョッキを片手であっという間に飲み干して、同じものをおかわりする始末。なんと清々しい飲みっぷりなのだ。
続けて、とんでもない船橋美人を連れたスーツ姿の男性も現れた。
この狭い店には不釣り合いかつ、殆ど路上にある椅子に座って酒を飲みだすフォーマルな2人。
私「めちゃめちゃ美人さんじゃないですか! 彼女さんですか!?」
男性「いやぁ~、違うんですよ~」
船橋美人「(クスクス)」
駅周辺を散策中にも思ったのだが、すらりとしたスタイルに聡明な顔立ちの美人が多い。
しかしこの男性……こんな美人と飲めるなんて羨ましい限りだ。
それを見たお兄さんが、私達に気を利かせてなのか、ここに女の子を呼ぼうと言う。
私「マジですか!?」
お兄さん「友達の巨乳女と、そのお母さんを呼びますので待って下さい」
と、慣れた感じで言うお兄さん。
さてはお兄さん……その親子と三人で”特殊な体験”をしているな?
強面な容姿、スマホで女の子と電話をするその姿は、まるで夜の歌舞伎町で見る”ソレ”だった。
残念ながら巨乳親子が来ることはなかったが、気づくと店内(?)はパンパンになっていた。
お兄さん「今日はマシな方で、道に人が溢れて警察に通報される事もあるし、客がお店の材料を買い出しに行くこともありますよ」
う~む、”やんちゃ”な酒場だなあ。
それに加えて、数時間前に偶然出会ったこのお兄さんの存在。
船橋の事や、知り合いを紹介してくれたりと私達2人に”何故か”本当に良くして頂いた。
そして、暫くすると”何故か”の答えをお兄さんが語った。
お兄さん「実は”増やま”の時に2人の事を横で見ていて、2人とも注文が届く度に『ありがとうございます』って言ってたのが凄く好感を持てたんですよ」
誰が言い出しのものでもなく、酒場ナビでは店から出して頂いたものにはお礼をする。
それが普通だと思っていた私は、ふいに言葉に出されると何だかハッとさせられた。
こんな優しいお兄さんや酒場で出会う様々な人々、料理、ドラマをもたらすものとは、そんな小さな事の積み重ねなのかもしれないと今一度、身の引き締まる思いになった。
改めて、
船橋のんべえのみなさん。ありがとうございました。
きっと、また来ます。
素晴らしい体験をさせてくれたこの酒場を、そろそろ出ようとカリスマジュンヤをふと見ると、
客と腕相撲してたんだいっ!
つづく
次回、”船橋3部作”のラストはカリスマジュンヤによる『中華料理 大輦』編です。お楽しみに。
大衆あさひ 船橋店(たいしゅうあさひ ふなばしてん)
住所: | 千葉県船橋市本町1-13-1 |
---|---|
TEL: | 047-435-0323 |
営業時間: | [月~土] 12:00~24:00 [日] 12:00~18:00 |
定休日: | 不定休 |