酒場への信念――今の自分が求める理想の酒場像はこれだ!
何だかんだ、今まで酒場にはたくさん行ってきたつもりだ。そこには単に大衆酒場というものだけではなく、食堂や町中華、角打ちに市場なんかもその中に入る。最高に居心地が好いところもあれば、もう二度と行きたくない所もあったが、どれひとつとっても思い出がある。何が言いたいのかというと、若輩者の酒場人生ではあるが、ここで一度〝私はどんな酒場が理想なのか?〟ということを考えてみたいのだ。
そもそも「あ、これはハマっているな」と、私が酒場めぐりにハマったなと確信したことがある。それは〝酒場で酒場の話〟をした時だ。それまでの酒場の存在は、酒を飲んで酔っ払ってドンチャン騒ぐだけだった。それがいつしか酒場で飲りながら「ここの煮込みはあの酒場の煮込みと似ている」や「ここのテーブルの触り心地、あの酒場と一緒だ」などと酒場に居ながらにして他の酒場の話をするようになった。すると、何百軒の酒場からいくつかの〝法則〟なるものが分かってくる。それを元に、私自身の酒場へ対する理想を探ってみたい。
外観は昭和テイストが◎
まずは外観に関していうと、昭和を彷彿とさせるモルタル外壁は外せない。何度も塗り替えたようなクリーム色の外壁、蛍光灯が内側から照らす看板。ある程度外からも中の様子が見えて、老若男女問わず気軽に入れそうな間口が好ましい。
外からでも、メニューや料金が分かるようにしてくれると尚更グッドだ。
やはり広い店内がいいでしょう!
店の中はというと、やはり広いのがいい。いや、小ぢんまりとしたところでカウンター越しにマスターとおしゃべりなんてのもいいのだ。ただ、やはり天井が高くて形は四角、壁いっぱいに手書きの品札やおすすめが書かれたホワイトボードが欲しい。
座敷で足を伸ばして座りたい。こちらはレストランというよりは、スーパー銭湯の食事処的な雰囲気が好みだ。テーブルの上にさりげなくガスコンロがあると、さらにワクワクする。
席に座ると同時に「食事ですか?お飲みになりますか?」なんていう女将さんからのコールに、食い気味で「お飲みになります!」というやり取りだってしたい。
酒はホッピー、できれば焼酎強めで
最近の私の酒の好みは『ホッピー』である。一時期ハマって毎日のように飲んでいたことがあったが、最近になってその熱が再燃。正直なところ、この酒が一番どんな料理にも合うと思っている。
9割なんて無茶なことは言わない。焼酎の水位がジョッキの6割あれば万々歳だ。
ホッピーひと瓶で最低三杯はナカを頼みたい。慎重にジョッキへ注いで一気に飲む。ほら、どんな料理にも合うから、色んな料理が食べたくなってくるだろう?
料理は和洋中のオールマイティ
酒のお供はたくさんの中から、その日の気分、その日の体調で悔いなく選びたい。
例えばこれ。自らの脂で皿から滑り出そうになている『ブリ刺』は、誰もが愛する刺身のひとつ。私はこれにワサビをたっぷりと乗せて食べたい派だ。「トロッ」「甘ッ」「辛ッ」の応酬が、大いに酒を進める。
刺身でもう一つ、常時メニューに『霜降り馬刺』を置いてくれる酒場も安心する。早いうちに頼んでおいて、馬肉の解凍をジワジワと待ちながら酒を愉しむのだ。霜降りのコッテリもいいし、赤身のアッサリもいい。馬刺、これはゼッタイだ。
サッパリと箸休めも欲しいところ。例えば酸味が効いた、そう『カニ酢』なんてあればうれしいね。カニカマでも不満はないが、ここはホンモノでいてほしい。ホッピーのナカを待っている時なんかに、こんなのがスッと手元にあるだけでホクホクえびす顔になれる。
昼から営業していること
そうそう、これも譲れないのが昼飲みが出来ることだ。件のパンデミックで、唯一世の呑兵衛たちに評価されたといえば〝ランチ営業〟を始める酒場が増えたこと。パンデミック後もそのままランチを続けるところも多く、そのまま昼飲みが出来るところが増えたのだ。私も最近は、昼に定食を食べながら飲るってことも多くなった。
料理に戻ろう。『から揚げ』もね、あるとついつい頼んでしまう一品だ。何がいいって、同じから揚げでも店によって全然味が変わること。おそらくは、そこで料理をしている職人の家庭の味付けが影響しているのではないかと踏んでいる。
私は衣の醤油味が強めで好きで、タルタルソース……いや、少なくともマヨネーズが欲しい。
大衆酒場料理の代名詞といっていい『もつ煮』は、正直なところ無くてもよかったりする……が、無いなら無いで寂しい気持ちになる。彼女と別れたら別れたで急に口惜しくなる、そんな〝男のエゴ〟にも似ている。
あーそうだ、もつ煮にはメニューのアタマに〝当店おすすめ〟とか〝自家製〟を付けて欲しい。このフレーズがあるかないかで注文意欲がガラッと変わる。その店の店名がアタマに付いているのもいい。
刺身やから揚げ、ちょっとした箸休めに煮込みとは言ったが、もちろん他にも希望はたくさんある。あり過ぎちゃうから困っちゃうのだが、共通して言えるのは〝めちゃくちゃおいしくなくてもいい〟ということ。もちろん、おいしいに越したことはないのだが、酒場に求めるものは酒や料理のおいしさだけではないのだ。
誰もが一緒に飲れること
老若男女が一緒に同じ場所で同じように飲れる、結局これが一番重要かもしれない。大人が頼んだ馬刺を食べる子供を見ながら「コイツは酒飲みになるなぁ」なんて言いながら飲る。それで今度は、子供が頼んだフライドポテトをつまんで「結構うめぇじゃねぇか」と酔っ払いの大人。50年来の同期会は皆顔が真っ赤、若いカップルのイチャつく。先輩も後輩も、知り合いも他人も関係なく、その時間だけは楽しく過ごせる酒場こそ、私の思い描く理想的な酒場なのだ。
そうなると、どこの酒場を思い浮かべるだろうか? そうだなぁ……例えば大塚にあるこの『大衆割烹 豊川』がかなり理想に近い。
あそこは外観は昭和テイストで、中も広くて天井が高いし──
豊川(とよかわ)
住所: | 東京都豊島区北大塚2-6-8 |
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TEL: | 03-3915-2480 |
営業時間: | 11:30~20:00 |
定休日: | 月曜日 |