東高円寺「川中屋」酒呑みになった大人の話
酒場ナビの読者はきっと、古くて、渋くて、趣きのある店が好きな人が多いと思うが、
私は綺麗なレストランやオシャレなカフェも大好きだ。
もちろん、それは酒が飲める店という前提だが。
先日、東高円寺にある「川中屋」へ行った。
店構えはシンプル綺麗でどこにでもありそうな佇まいなのだが、この店は一部変わった料理がある。
それが「ささみ刺」なのだ。
私は子供の頃から父親の影響で「刺身」が大好物だった。魚の刺身は勿論、今は亡き牛のレバ刺なんてのは、思い出す限りでも小学校5年生くらいには、毎週末に父親が肉屋でレバ刺を買ってくるのを楽しみにして食べていた。
「めずらしいやつだな。お前は大人になったら酒呑みになるな」などと、よく考えたらとんでもない父親である。
この店を見つけたのは偶然で、たまたま住んでいる高円寺の酒場を探していた時に発見したのだが、メニューをみて「ささみの刺身!?」と驚いたものだ。
今回で訪問は2回目なのだが、前回初めて訪問した時は「予約して当たり前」程の盛況ぶりだったので、今回は予約をした。
この”予約をして呑みに行く”ってこと自体、ディープ酒場好きには野暮なことなのかもしれない。
以前、酒場ナビライターのイカ氏とカリスマジュンヤ氏の三人である酒場に行った時のこと。
店の雰囲気は”ディープ感”たっぷりで好評価だったのだが、
イカ氏とカリスマジュンヤ氏が「トイレにウォシュレットが付いていた」ということで2人共々「減点対象」としていたのを思い出したが、私のこの行為も減点されるかもしれない。
そんなことはいいとして、久しぶりの”整備された店”である。
真っ白な「川中屋」と記された暖簾を潜ると、入口に小さいテーブルが2つ、右に厨房とカウンター席が10席程と奥にテーブル席が3つで、割とこじんまりしてる。
奥のテーブル席に座り、生ビールを頼む。
備え付けてある醤油や七味を触っても、ベタベタしない。こんなの、久しぶりだ。
清潔さに乾杯する。
もちろん「ささみ刺」からスタートする。
元々、ささみを焼いたり煮たりして食べるのはパサパサしてあまり好きではなかったのだが、「刺身」にするだけでなんでこんなに旨くなるのだろうか。
さらに、ささみ肉自体安価なものなので値段も安い。
ここでは「鶏のレバ刺」も安く食べることができる。
この鶏のレバ刺も、かなり肉厚で見た目も赤々としてレバ刺としてはかなりの美人である。臭みが無く、レバーが苦手な人でもきっと食べれるはずだ。
どんどん食べる。
名物の「ポテサラ」は味も然る事乍ら、てんこ盛りの量も嬉しい。
意外と嵌ったのは「納豆きつね」だ。油揚げに納豆とネギを乗せたものだが、こんなにも安い食材ばかり集まった料理のくせに、こいつら遠慮せずに旨い。
“焼き”も負けてはいない。
ハツの色艶やヤゲンの焼きあがり具合をもう一度、写真で見ていただければわかるはずだ。
〆に「煮込み」を頼んだのだが、これもまた変わった煮込みで、デカ切りされた大根がメインで鶏ガラスープで煮込まれており、一般的な煮込みとは違うものの、あっさりして〆にはかなり具合が良い。
気がつくと、平日だったにもかかわらず満席になっていた。
前回来た時もそうだったのだが、この店は客層の幅が広い。
女性客もよく目立つし、子供連れの客もいる。
きっとお父さんが子供に、ここのおいしい「レバ刺」を食べさせて、
「めずらしいやつだな。お前は大人になったら酒呑みになるな」なんて微笑んでいるに違いない。
そんな訳ねーか。
川中屋(かわなかや)
住所: | 東京都杉並区和田3-60-10 |
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TEL: | 03-3313-6691 |
営業時間: | 17:00~23:00 |
定休日: | 火曜日 |