【第6回】ホッピーよ、大志を抱け!ホッピー大使は慶応ボーイ
読者飲み企画の第6回目。
今回は久しぶりに男性からのご応募で、しかもひとりでの参加。
場所は前回に引き続き、最近お気に入りでもある横浜の酒場街『野毛』である。
“なんで連続で野毛に?”と思うかもしれないが、理由は後ほど説明する。
開催日当日の野毛は、土砂降りの大雨。
メンバー全員”晴れ男”で、今まで一緒に飲みに行って雨など降ったことはなかったのに、今回はいつも以上に”嵐”の様なはしご酒を予感させる……。
待ち合わせの都橋商店街にある『ホッピー仙人』に読者とメンバーの4人が集まり、今宵のはしご酒のはじまった。
そして今回の参加読者の紹介。
やのこうじ(こうちゃん) さん
人と酒場で飲むことが大好きという、笑顔がまぶしい千葉県在住の22歳。
現在、大学4年生なのだがその大学とは……
「慶應義塾大学!?メンバー3人の偏差値足しても太刀打ちできひんやないかい!」
学歴コンプレックスのイカが声を荒げる。初めてみる”慶応ボーイ”に、ある意味”芸能人”でもみるかのような好奇の目でしばらく彼を観察するのだが、この彼にはさらに珍しい”肩書き”があったのだ。
「僕、”ホッピー大使”なんです!」
ご依頼のメールにも書いてあったのだが、彼は『ホッピー』が好き過ぎて”ホッピービバレッジ“の『石渡社長』から”ホッピー大使”の称号を直々に貰っているのだ。
“ホッピー大使”なんてものがあることさえ知らなかった私達は、実際の社長とのツーショット写真も見せて貰い、彼のその”ホッピーバイタリティ”に驚いた。
そして前記の”連続野毛開催”にした理由が、このはしご酒一軒目の『ホッピー仙人』にある。
店名を見ていただければ分かると思うが、この酒場にはホッピーの『仙人』という名の店主がいるのだ。『仙人』と言うだけあって、ホッピーに関する知識やこだわりは半端ではなく、もちろん”ホッピー大使”の称号を得ている。
そんな『仙人』がいる酒場を外して今回の読者を満足はあり得ないのでこの酒場を選んだのだった。
まずは目の前の”升”に小銭を入れ、つまみの『ゴーヤチップス』を貰う。そして何といっても『ホッピー』を仙人に注文しないわけにはいかない。
『ラム+黒ホッピー』と『白生ホッピー』
読者飲み恒例、”クロス飲み“を行い4人それぞれグビッっと飲む。
うまいっ!
私が飲んだのは『ラム+黒ホッピー』ではじめて飲むホッピーだったのだが、これがラムの甘い風味と黒ホッピーのマッタリとほろ苦さが相性抜群。家で真似しようと思っても”独自の配合”により、これは仙人にしか作り得ない味なのだろうと悔やむ。
「”こうちゃん(参加読者)”は何でそんなにホッピーが好きなん?」
「僕、ホッピーが好きな理由が”3つ”あるんですよ!」
8席しかない店内は、立ち飲みも含めてあっという間に満席。
そんな満員電車の様な場所で一番気になっていた質問をこうちゃんに聞いた。
「まずひとつは”味”で、ビールよりあっさありして飲みやすいところです!」
ホッピーならではの、あのあっさり味が好きとのこと。確かに”今はビールじゃなくホッピーがいい”って時はある。
「次が値段の”安さ”です!」
なるほど、大衆酒場やチェーン店に限らず安価で飲めてすぐ酔える。
「そして、年配の人に気に入って貰いやすいんですよ!」
22歳という若さでホッピーを飲んでいると、年配の先輩客に「若いのに渋いの飲むじゃねぇか」と気に入って貰い易いらしい。
「さらに、たくさん飲んでも太らないんです!」
たしかにカロリーはビールに比べてかなり低いし、プリン体もほぼない……あれ? その前にこうちゃん、理由が3つじゃなく4つあるじゃないか……。
まぁとにかく語り尽くせない程の”ホッピー愛”は、彼の言葉や表情で十二分に伝わった。
(泡にハートを書いてくれるホッピーがあるらしいで)
徐にイカがつぶやく。
だがその”ハートホッピー”は女性限定メニューらしく、駄目元で私達ひとりひとり仙人に頼んでみたがやはり断られた。
しかし”ホッピー愛”の塊であるこうちゃんは、近くにいた女性客にこう言った。
「僕がお金を出すので、変わりに”ハートホッピー”頼んで貰えませんか!?」
突然、若い男性からの申し入れに対してその女性客も承諾せざるを得なかったが、あの顔は悪い気はしてなかったはず。
さっそく『仙人』に”ハートホッピー”を作ってもらった。
『ハートホッピー』
仙人の巧みの技で、サーバーから注がれたホッピーの泡にあっという間に”ハートマーク”が描かれる。もちろんこれも自宅では不可能な芸当だが、男性読者も、こうちゃんのやり方で女性に注文してもらって口説いてみてはいかがだろうか。
大満足でそろそろ店を出ようとしたが、実は次の酒場を決めていない。
読者飲みは基本的に行く酒場を”あえて”決めずにはしご酒をするのだが、先ほども言ったようにこの日は土砂降りの雨。そう簡単に街を徘徊が出来なく、どうしようかと皆で考えているとさっきの女性客が話しかけてきた。
「なんかさっき皆さんで『けんちゃん』のことを言ってましたけど、よかったら私その店知ってるので連絡してあげましょうか?」
私達がスマホで野毛の酒場を調べているのを聞いていたらしく、その女性客はここから近くの『けんちゃん』という酒場を紹介してくれると言い出したのだ。
すぐさまこの女性にお願いをして席を確保しておいて貰い、土砂降りの雨の中、急いでその店へ向かった。
こんな出会いも酒場のよいところだ。
『けんちゃん』
「うわっ!?”リーゼント居酒屋”やないかい!!」
バリバリロックンロールを否が応にも感じる店名。先ほどの『ホッピー仙人』に続き、野毛は店名にもインパクト感じる酒場が多い。
そんな店名を見て、やはりテンションバリバリに上がったカリスマジュンヤと私とこうちゃんで”暖簾引き“をして店内へと入る。
「いらっしゃいませー」
シュっとしたお姉さまが迎えてくれる。
先ほどの女性客が予約してくれたので、既に人数分のお通しまでしっかりと用意されていた。
全員まったく初めての酒場だったので勝手がわからなかったが、とにかく今回はこうちゃんに合わせてホッピーを注文しようとした時、事件は起こった──。
“ホッピーがメニューにないっ!!”
まさかのホッピーを取り扱っていない酒場だったのだ。
普段ならまったく問題としないのだが、今日はだけはこうちゃんの為にどうしてもホッピーを飲みたかったのだが……。
「ビールで全然いいですよ!」
流石はモテモテ慶応ボーイ、さわやかな笑顔であっさりとビールに”浮気”をする懐の大きさに、本日初めての”酒ゴング“を鳴らす。
『ホッピー仙人』ではゴーヤチップスしか食べていなかったので、ここでやっと料理を注文することに。
「”びっくりドッキリコロッケ”ってなんや!?」
名前のイメージからして、間違いなく”デカ盛り系”を予感させる。”デカ盛り系”と言えばこの男、カリスマジュンヤが黙ってはおらず注文することにした。
『びっくりドッキリコロッケ』
「わー!!こんなん座布団やないかい!!」
さすがに座布団までは大きくはないが、仔猫だったら座れるくらいのビッグサイズ。しかも、味も申し分なく、ハラベコの男4人で一気に平らげた。
「来て頂いてありがとうございます!よかったらこれどうぞ!」
突然、リーゼントの男性がテーブルに来たと思ったら、店のマスターがサービスで料理を直々に持って来てくれたのだ。
そのロックンロールな風貌も載せたかったが、時間帯的に忙しいようだったので断念。是非とも直接、店へ訪れてみていただきたい。
『ふわふわさつま揚げ』
んまいっ!!
マスターが薦めて出してくれるのも無理はない。”さつま揚げ”とは言っているものの、そこらへんにある硬くてパサパサしてるものではない。とにかく”ふわふわ”なのだ、いや、そのまんまだが”ふわふわ”としか言いようがない。それでいて、味は上品かつ旨味たっぷりに仕上がっており、こうちゃんは「美味すぎて震える!!」と、どこかの女性歌手の歌詞の様に感情を露にしていた。
そんなロックンロールから急にバラードを感じさせてくれる中、”酒浮気者”のこうちゃんがまたもや浮気酒をしたいと、あんず棒を凍らせて酎ハイに入れた『あんず棒サワー』を注文した。それにつられて、『リアル・あんず棒』の持ち主である我々酒場ナビメンバーも同じく注文する。
『あんず棒サワー』
この画はこれで、”メンズ棒”が好きな方々には嬉しいショットなのではないだろうか。
そんな事はさておき、そろそろホッピーも嫉妬し始める頃なので、ホッピーを探しに店を出ることにした。
店を出ると、今夜一番の土砂降りとなっていた。
「そういえばさっき、ホッピーの種類がめっちゃある店を見ましたわ!!」
『けんちゃん』に来る前、カリスマジュンヤがホッピーメインの酒場を偶然目にしたという。それを頼りに土砂降りの中、人影の少ない野毛の町を奔走すること10分、やっとその酒場を見つけた。
『ミラクル商會』
見た目は酒場ナビメンバーには似合わないオシャレなBAR風。
しかし、外の看板には『ホッピー祭り』と銘打った、聞いたこともないようなホッピーメニューが並ぶ。
中へ入ってみると、やはりオシャレなBARのようだった。
しかし席に着くと皆が次々に叫ぶ。
「”赤まむしホッピー”ってなんや!?」
「”炎の激辛ホッピー”ヤバ過ぎるやん!!」
「”ゴーヤホッピー”飲んでみたいです!!」
普通においしそうなホッピーもあれば、ネタ要素たっぷりのホッピーが何十種類もあったのだ。
そのままイカは『赤まむしホッピー』、カリスマジュンヤは『炎の激辛ホッピー』、こうちゃんは『ゴーヤホッピー』を頼み、”食に冒険をしないタイプ”の私は『トマトホッピー』というアンパイを頼んだ。
そして今夜最後の”酒ゴング”を、ホッピーへの感謝の気持ちを込めて鳴らす。
『赤まむしホッピー』は、薬膳的な味がしてまぁまぁ、『ゴーヤホッピー』は、普通の白ホッピーにゴーヤを乗せたもので、『トマトホッピー』は予想通り”レッドアイ”の様な味わい。
意外とネタ要素と思っていた『炎の激辛ホッピー』がかなりうまかった。ピリッとした唐辛子風味のホッピーで、つまみがなくてもこれだけでイケてしまう不思議なホッピーだった。
次から次へと気になるホッピーを見つけてしまい、まだ飲みきらないうちに『ホッピーカウボーイ』や『みつまめホッピー』など次々に頼んでいると……
“ホッピーまみれ”で、こうちゃんが『昇天』寸前となってしまったのだ。私は久しくこんな状態になっていないので、羨ましい限りである。
「えっ!?”リクエストホッピー”ってなんやねん!?」
よくみると、ホッピーメニューの一番下に『リクエストホッピー』というものをイカが発見。もしかして、自分で好きな材料を選ばせてもらってホッピーを作ってくれるのだろうか?
店員男性に聞いてみると、店にある材料にあるものだったら何でもホッピーにするとこのことだった。
しかし、イカとカリスマジュンヤいる今、嫌な予感しかしない……。
「ワテは”生卵”がええな!」
「ボクは大好きな”もずく酢”入れて欲しいッスわ!」
ホラ出たよ。そんなふざけたホッピー、そもそも注文を受けてくれるハズが…、
「えーと、”生卵”と”もずく酢”ですね。すぐ作るんでお待ちください」
……しっかり受けてくれるのだ。
なんの躊躇もなく”謎”のホッピーを作る男性店員。……私は知らんぞ。
『リクエストホッピー(生卵&もずく酢)』
「あ!意外と『生卵』の方が沈んで『もずく酢』が浮かぶんやね!」
そんな事どうでもいいのだ。
なんなんだ、この何年も洗ってない金魚鉢の様なホッピーは……いや、もはやホッピーと言っていいのだろうか?
“ここはホッピー大使から飲むべきだ”
誰も口には出さなかったが、酒場ナビメンバー全員は半ば強引にそんな”空気作り”をして、大人げなくダントツ年下のこうちゃんに”コレ”を飲ませたのだ。
まさに恐る恐るとはこのこと。
口に入れると一瞬”ウッ!!”といった表情をするこうちゃん。少し飲み、グラスから口を離すと口から”もずく酢”が垂れ下がる。
「でも……そんなに不味くはないです!」
こうちゃん、君は何を言っているんだ?金魚鉢だぞ金魚鉢。
そんな彼の発言に、なぜか興味を持ったイカが続けて飲む。
「ホッピー飲むのに箸使うの初めてや!」
と、言いながら”もずく酢”をズルッズルッと啜りながら飲む……いや、食べる。
「……ホンマや!もずくがめっちゃうまいやんな!」
「ホンマでっか!?ボクも飲みますわ!!」
カリスマジュンヤまでもが、”コレ”を奪うようにして飲み始めた。
「わぁ!!ボクこれ好物ですわ!!」
年中”激辛料理”を食べているカリスマジュンヤは、常に舌が麻痺状態であるため彼の意見は一旦置いといて、他の二人までもが”そこまで悪くはない”という評価だった。
すごく嫌だったが空気的に私も飲んでみる。だが、写真の表情を見ていただいて分かる通り、一瞬”戻しそう”になるほど飲めるモンではなかった。
興味のある方だけ試していただきたいが、決してお勧めはしない。
その後も変わったホッピーを頼んでみては交換をし合って飲んだりと、ただただホッピーを飲んでいるだけなのに笑いは絶えない。
そんな様子を察してか、『ホッピー神様』が土砂降りだった雨を止めてくれて、それに合わせて解散の時を迎えるのだった。
『ホッピー仙人』で出会い、そこの客が手配をしてくれた『けんちゃん』に行き、偶然みつけた『ミラクル商會』でのホッピー遊戯。
今回の読者飲みほど”酒場が呼んでくれた”という言葉が相応しい会はなかったかもしれない。そんな経験をこんなにも若い読者と経験できたことも、きっと何かの縁だった事を信じて止まないのだ。
やのこうじさん、楽しいはしご酒をありがとうございました。
これから”ホッピー大使”としての永いホッピー人生を、酒場ナビメンバーは応援しております。
また、
土砂降りの日の酒場で会いましょう。
ホッピー仙人(ほっぴーせんにん)
住所: | 神奈川県横浜市中区宮川町1-1-214 都橋商店街 2F |
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TEL: | 045-242-1731 |
営業時間: | [月~土] 19:00~22:00 |
定休日: | 日曜、仙人(店主)からのお知らせがあった日 |