沼袋「たつや」同じメンバーにだってオススメしたい極味やきとん
「沼袋? え──と、沼袋、沼袋……それ、どこだっけ?」
失礼しました。
だが正直、住んでいる方には悪いが、私の『沼袋』のイメージといえば──
〝野方駅の何個か隣の駅……?〟
〝もちろん、急行は止まらない〟
〝何か、デッカい煙突みたいなのが建ってて……あ、それは『井荻駅』か〟
……とまぁ、それくらいなもので、ただでさえマイナー路線の『西武新宿線』の、その中でもマイナーな駅が『沼袋』である(個人の意見)
そんな風に言えるのも、実はそのマイナー路線に上京当初から十数年も住んでいた生粋の〝西武新宿線っ子〟であったりもする。
──9月の初秋
そんなマイナー駅……いやいや、〝まぁ、イイナー❤〟な駅である沼袋に訪れた理由はただひとつ、《酒場》である。
『高田馬場駅』を出て『田無駅』までの間の十数駅は、コピペで作ったのかと思えるほど同じような駅が続く中、この沼袋駅の一角には雰囲気の良い酒場地帯が形成されていたのだ。
『たつや』
その中でも人気と噂の酒場。いい塩梅に染まった梅紫蘇暖簾から洩れる光に、初秋にも関わらずまるで夏の街灯に誘われる虫の如く、ブーン引き寄せられる。
そんな私は、早速《暖簾引き》をしてブーンと店内に入ったのだ。
「いらっしゃいませー!」
──いい、ですねぇ……
何がいいって、まずその店内の〝造り〟がいい。
中央に〝約M字〟のカウンターがあり、奥にも極小〝コの字〟カウンターもある。2、3人組の客らは、そのカウンターの〝入り組んだ席〟をあちらこちら酒座にして、こぢんまりと愉しんでいる……好きだなぁ。
それをさらに演出するのが、オレンジ色で暖かみのある傘付き電球だ。配置、設置数もすばらしく、これも私のタイプである。
〝出会って5分でセッ○ス〟というタイトルのアダルトビデオは何度も観たことはあるが、〝出会って5分で惚れ酒場〟は久しぶりだ。
私は店全体が見渡せる酒座を決め、まずはこの雰囲気をアテに飲む酒を注文する。
《たつやのシャリハイ》
〝たつやの〟というからには飲んでみない訳にはいかない。妥当にシャリキンかと思いきや、カッキリと凍らせたまるでカキ氷のような酎ハイであった。心憎いのがガラスではなくステンレスタンプラーであることで、独特な口当たりがカキ酎をより一層気持ちよく呑ませてくれる。
見た目に派手な金色が、酒場ナビメンバーのカリスマジュンヤの金髪を彷彿とさせ、是非とも彼にも飲んでもらいたい。
理想的な《スタートダッ酒》を切らせてくれるこの酒場なら、きっと料理の方も期待できると──いざ、肴。
《もつカレー》
かねてから〝モツ肉でカレーを作ったら安くてウマいだろうな〟とは思っていたが、それを沼袋で食べることになるとは思わなかった。付け加えて〝甘いカレーにモツ肉は合わないはず〟という、私の〝モツカレー予言〟もしっかりとお見通しだったようで、辛口のカレーにはおそらく長時間煮込んだ溶肉がマッチ──思わず「モツカレ様でした」と手を合わせて労った。不思議とライスではなく、酒の方が合うというカレーナイスな一品。
《赤ウインナー炒め》
少しややこしいが、赤ウインナーといったら『タコさんウインナー』で、タコさんウインナーといったら酒場ナビメンバーの『イカ』であることは周知のとおり。
〝カリッ、プリッ〟と見事な食感に、つぶつぶマスタードがタコの短足によく絡んでおいしい。やはり赤ウインナーは、足を生やすひと手間で大いに味も可愛らしさも変わる。
「あみやき、注文できますよ!」
「わっ! じゃあお願いします!」
実は最初の注文では、ウマいと評判の〝あみやきシリーズ〟が売り切れだったのだが、ここに来て注文可能になったとのこと。もちろんお願いしない手はない。
《あみれば・あみはつ》
ッ──!!
……ン、
ンま──いッ!!
鰻の〝くりから焼き〟のように串へ巻きつけられた油肉──これがとにかく凄い。奥歯をそれに当てると、じゅううぅううわぁ──……ブクブクと音を立てるように口内の隅々まで甘油が浸透する。それなのに〝油っぽい〟ということは決してなく、最近食べた〝肉〟というカテゴリーの中では一番衝撃的かつ、驚異的にウマい肉であった。
これこそ、普段こんなことなど思わないのだが、
〝他のメンバー2人にも、マジで食べてみてほしい〟
とすら思えるほどの極味──
奇しくも、自宅から歩いて行ける距離に、こんな名酒場があったなんて……これもまた《酒場の神様》の思し召しなのだろう──酒場の神様、今夜もありがとうございます。
「あっ! 懐かしい!」
『おみくじ器』
名酒肴に陶然とする中、昭和40~50年代生まれなら間違いなく懐古するであろう『おみくじ器』がなぜか置いてあったのだ。
「そうそう、自分の星座のところに100円入れるんだっけな」と思い出しながら弄っていると、若い女性店員と外国人男性店員(韓国)の2人が話しかけてきた。
「あたし、それやったことないです」
「韓国ニハ星占イ、ナイヨー」
そこまで言われて占わない訳にはいかない。私の星座である双子座の場所へ100円を入れ、ガシャンとレバーを引くと小さな巻紙がポロリと穴から落ちた。30年以上ぶりにしては意外とやり方を覚えているものだ。
大吉出ろ……大吉出ろ……
と念じながら巻紙を広げる。
その結果は──
『小吉』
う──ん、
ビミョ──……
結局、『小吉』と『末吉』はどっちが良いのだろう? などとよくある疑問はあったが、おみくじは小吉でも、この酒場に出会えたことは『超吉』であると満足するのだった。
んー、
この懐かしいおみくじ器も、メンバーにやってほしいところだ。
まぁ、
占わなくても、いつだって酔っ払っているあの2人は『大狂(大凶)』であることに間違いないのだけれども。
たつや(たつや)
住所: | 東京都中野区沼袋3-27-6 |
---|---|
TEL: | 03-5942-9986 |
営業時間: | [月〜金] 17:00~24:00 [土・日・祝] 17:00~23:00 |
定休日: | 不定休 |