「右手を負傷したどすえ」

 

2016年の大晦日。
カリスマジュンヤから京都・福知山弁で一通のLINEが届いた。

 

どうやら地元の京都へ帰っているらしいのだが、実家の裏山で熊と相撲をした際、右手を打撲してパンパンに腫れさせてしまったとのこと。
さすがは”金髪太郎”。年の最後まで全開フルパワーで無茶をしてくれる……。

 

それはさておき、私とイカの東京組みも酒場ナビとして、どう年を越すかなどと考えていたのだが、『浅草からのハシゴ酒』で新年を迎えるということが最善策だと結論。

そうと決まったら、今年最後の酒場センサーを働かせ、いざ、浅草へ。

 

 

 

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1軒目『松よし』

 

浅草の花やしきに程近い路地にあり、店先にテーブルをズラリと並べた外飲みスタイル。
おでんや煮込みの鍋からは、もうもうと湯気が立ち上り”これぞ冬の酒場”と演出する。

 

 

そこへ私とイカと役者の知人の3人で座り、2016年最後の日に乾杯。

 

 

 

夜の寒さも相俟って、ホカホカの『煮込み』が信じられない程旨く感じる。
そこへあえてキンキンに冷えた瓶ビールでモツ肉を流し込めば、どんな一年だったろうと最高の年越しが出来る。

 

暫し3人で、2016年の思い出を語らい、次の店へと向かう。

 

 

 

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2軒目『正ちゃん』

 

通称”ホッピー通り”にある店のひとつだが、何よりこの通りの賑わいに驚いた。
店に入るのに行列が出来ている店も少なくない。さすがは”浅草寺”の御膝下。

 

こちらの店は冬の酒場ではよく見るテント型で、人気店だったがなんとか入ることができた。

 

 

 

『牛煮込み』

 

うまいッ！

 

味付けが抜群によく、上に乗せている絹豆腐とモツを一緒にズルッと口へ流し込めば、どんな一年だったろうと最高の年越しが出来る。
大してうまくもないお節料理を食べるよりよほど縁起がいい。酒場ナビの名文句、”酎ハイ焼酎濃い目”も注文して”ヘベレケ”へまた一歩近づく。

 

 

 

年明けにも徐々に近づき、いつの間にか23時を回っていた。

いよいよ”年越し酒場”を求め上野へ歩き出す。

 

 

 

 

“ゴーン”と除夜の鐘が聞こえ始め、にわかに上野の街は厳粛な雰囲気を漂わせる。

 

 

 

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3軒目『大統領』

 

 

 

「煮込みは食わんで！」

 

イカがこの『大統領』の話をするとき必ず煮込みに触れるのだが、とにかくイカはここの煮込みが苦手なのだ。
牛や豚ではなく”馬”の肉で作った煮込みらしいので独特の風味がするらしい。

しかたがないので”年越し煮込み”ならぬ”年越しやきとん”で108回目の除夜の鐘の音を待った。

 

 

 

 

──昼間の活気とは裏腹に、2017年は静かな上野から始まった。

 

2016年、どれだけのやきとんをかじり、どれだけの酒を啜ってきたのだろうか。
元日の0時を迎え、客も自分たちだけになり店も片づけを始めた頃、男3人は新年を酒場で迎える事が出来た慶びを噛み締め、新しい年の、新しい酒場へとまた歩き出す。

 

 

 

 

 

4軒目を目指し、築地・銀座方面へと向かう途中に寄った『築地本願寺』

 

無事に元日をベロベロで迎え、2017年の酒場ナビ発展を願いイカが渾身の祈りを捧げる。

 

 

 

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祈りを捧げた後、イカが「日本人なら正月は寿司やろ！」と騒ぎ出したため、急遽4軒目は『すしざんまい 築地本店』へ行くことになった。

しかしさすがは本店。未明の時間帯でも行列が出来ていた。

 

 

 

「社長はん、早く寿司食わせてもらえまへんか～」

 

イカの持ち前のコミュニティ力で、名物社長が割とすぐに席へ通してくれた。

 

 

 

 

 

 

久しぶりの回らない寿司屋で、寿司とビールのローテーション。ささやかなラグジュアリーを読者へも”お年玉”。

イカ得意の”紅白食い”
正月からなんて縁起がいい男なのだろうか。

 

“お年玉”で読者もお腹いっぱいになったところで最後に新宿へと向かう。

 

 

 

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途中、今度は芸事のご利益で有名な”芸能浅間神社”がある『花園神社』へと立ち寄る。

 

勿論、ここでもイカが全身全霊の祈りを捧げるのだ。

※今年度最初の1,100Hzを達成

 

 

 

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「なんだテメェ！？」

「やんのかコラァ！」

 

花園神社を出て、最後にダメ押しの酒場を探しに歌舞伎町を通ると、若者10名程の殴り合い大乱闘と遭遇。

今年も変わらない歌舞伎町にホッと胸を撫で下ろし、この若者達だって殴り合いよりもっと好きであろう5軒目の『天下一品』へ入る。

 

男3人揃って『唐揚げ定食』を貪る。

煮込み、やきとん、寿司、ラーメン……年齢を合計して”一世紀”以上のオジサン3人の胃袋は、年明け早々、完膚無きまで満たされたのだった──。

 

 

 

 

 

大満足の年明けを過ごし、帰ろうとしたところでカリスマジュンヤからのLINE画像が届く。

 

 

 

そこには、山の頂上からパンツ一丁で御来光を浴び、”やはり今年も無茶をする青年”が写っていた……。

 

 

 

そんなモチハダジュンヤを含め、2017年も酒場ナビをよろしくお願いします。