立川「玉河」アフターBBQに必ず行きたい酒場のススメ ─秋川編─
夏が去り、読者諸兄姉みなさん。今年もBBQは楽しんだだろうか? 私はBBQが大好きで、一時期は季節関係なく毎月誰かを誘って、一種の〝定例会〟のようにBBQをしていたこともある。多い時だと五十人くらいで、場所は海でも山でも、デパートの屋上でもどこだっていい。とにかく、あの炭を囲んで飲るのが大好きなのだ。
毎月とはいかなくなったが、今でも毎夏訪れるBBQ場がある。それが東京・あきる野市にある『秋川渓谷』だ。ここがまたいいところで、都心からでも一時間半もあれば辿り着くし、近くになんでも揃うスーパーもあり、現地で予約なしで機材を借りられるという手軽さ。人数制限がないのでいつも賑わっているのだが、もっと落ち着いたところでBBQをしたければ、そこからバスで十分ほど行くと、静かに自然を満喫ができる場所だってある。
無論、私は今夏も訪れた。最寄り駅の『武蔵五日市』に降り立つ時の興奮は、何回経験しても変わらない。例によって何でも揃うスーパー『パーク』で買い出しをして、そこから歩いてすぐにお目当てのBBQ場『秋川橋河川公園』があるのだ。
この日は私を入れて三名での肉宴。今までの最低催行人数は二人だが、ひとりBBQもそのうちやってみたい。少人数も良いもので、〝ワイワイ〟ではなく〝シミジミ〟と炭を熾しつつ酒をグビリ。火が点いたらソーセージで試し焼き、それから肉や魚をのらりくらりと焼き始めるのだ。
パチッ……パチパチッ……、炭火のいい香り。
キャッキャと川に飛び込んだりはせず、川の流れる音を愉しみながら、じっくり焼いた肉を愉しむ。あとは、家からわざわざ持ってきたお気に入りのグラスで飲る。ちょうど、馴染みの酒場で飲っているようでもある。大衆酒場『地球屋』という大きな酒場で、気の合う仲間と同じ酒を酌み交わすのだ。あぁ……だからか、こんなにBBQが好きなのは。
そう、忘れてはいけない。『パーク』にはホッピーのリタ瓶やバイスなど、結構マニアックな酒を扱っているのもナイスだ。
ほろ酔いになって時計を見ると、大抵は昼の三時過ぎになっている。ササッと機材を返却、ぼちぼち駅に戻る。そこから都心へと戻るのだが、ほとんどの場合『立川駅』で皆一度乗り換えのためにホームを出ることになる。では、ここで各路線に乗り継いで解散……とはならない。打ち上げというシメ作業が、これから待っているのだ。
その会場に欠かすことのできない酒場が『玉河』である。〝秋川の次は玉河〟と〝カワ〟繋がりで覚えてほしい。ここは、そのまま酒場としてもたいへん優秀なのだが、この秋川BBQ帰りには持っていの酒場なのである。
まずは駅から一分もないという、好立地であること。北口改札を出てコンコースを降りると、そこにはもう玉河がある。BBQで疲れていても、この近さなら問題ない。店先のショーケースを横目に、地下へと続くド派手な黄色い壁の階段を下ろう。
広いっ! テーブル、カウンター、小上がりと、パッと見でも100人はいける大箱ぶりも好条件のひとつだ。BBQ後の大人数でもビクともしないキャパに、今回も余裕の小上がりに着席である。
そして、ここは冷房がギュンギュン効いているのがうれしい。川で遊んだ後の火照った身体に、だいぶ気持ちいいのだ。「あ”あ”~」と言いながら足を延ばし、いざBBQ打ち上げのはじまりだ。まずはしっかりと酒で喉を流して、心も身体も再起動させよう。
トクトクトクトク……、こりゃ冷てそうだ。
ゴグンッ……バッ……バベッ……、バーベサイコォォォォッ!! ガギンガギンに爆冷えの麦汁がたまらん。これでもう、完全にBBQモードはリセットされた。ここからは酒場モードでよろしく!
ここで料理の選ぶポイントは、ズバリ〝BBQで出来ないもの〟だ。言わずもがな、ずっと肉が基本だったので、身体が必然的に肉以外を欲しているのである。
そうなると『刺身』になる。〝BBQ後に刺身食べたくなるあるある〟だ。メニューで目についた魚を、ドンドコ持って来い!
おひょひょっ、マグロの一番マグロなところ『中トロ』の存在感よ。舌の上に触れたか触れてないかくらいで、あっという間に舌と融合する。旨味が濃過ぎて、自分の舌がウマいんじゃないかと錯覚が起こるうれしさ。
さらに〝BBQ後に中華食べたくなるあるある〟というものも存在する。もはや、医学的にも何か理由があるはずだ。さて、どんな中華にしようか……
悩んだ挙句の『麻婆茄子』が大正解! 大皿に大盛られた堂々たる存在感はさすがである。
ザックザックにブツ切られた食い応え抜群のナス、挽肉を絡めた濃い味トロトロの餡に、ピーマンとネギがさっぱりといいアクセントだ。
さらに、追加で悩んだ挙句の『青椒肉絲』もドン・ピシャリ! シャグシャグとした照り照りのタケノコの歯応え、瑞々しいホロニガのピーマンは、BBQではやはり味わえないおいしさである。
ここはまったく、なんてBBQ後の気持ちを理解している酒場だ。肉のあとに欲しい味が、ここでは何の造作もなく有り付けるのだ。逆に有り付けるのが分かっているからこそ、あえてBBQの時には作らないものだってある。それが『カレー』だ。私は、秋川のBBQでカレーは決して作らない。なぜなら……
玉河には最高の『カツカレー』があるからだいっ! 見てください、この圧巻のヴィジュアル。カレーとカツの交じり合う芳醇な香りが、Tシャツに染み付いた煙臭さを一気に吹き飛ばすようだ。まずはこんがり茶色のカツだけを箸で取り、カレーに拭って丸かじる──ウマいっ、ウマ過ぎる! カツから溢れ出るジューシーな旨味と、ちょうどいい辛さのカレーが胃袋にガツンとくる。
続けてスプーンを握りしめ、今度は皿底から丸ごとすくい上げると一気に口の中へブッ込んだ。クセのない辛さ、肉汁、ホッカホカのライス、また肉汁……言うことはない、ただただ至福である。不思議なんだよ……昼間っからあれだけ飲んで食ってたのに、こいつだけはいくらでもイケてしまうんだから。
すごいな……和洋中なんでも揃い、尚且つ抜群にウマい。もちろん、酒もビール、焼酎、日本酒、ウイスキー何でも揃っている。やっぱり、すごいぞ玉河!
はじめての秋川BBQは、チャラチャラした合コンみたいなノリだった。いつしか定番となり、女子の水着姿が見たくて、夏は煙で頭がおかしくなるほど炭を熾したのが懐かしい。地形が変わるほどの豪雨の翌日に訪れた時は、中国の川の色みたいになっていて、急遽中止になったことも何度かあった。そうそう、ここのBBQがきっかけで結婚したなんて話もある。それからだいぶ大人になって、友人らの子供を含めて穏やかにやるBBQこそ至高であると感じている。
そんなBBQのあとには、必ず『玉河』が待っていて、これからもきっと待っていてくれるのだろう。
因みに九月現在、年内にあと二回ほど秋川BBQが決まっている。読者諸兄姉のみなさんとも、いつか100人くらいでBBQをやって、その後にはやはり100人くらいで玉河の打ち上げをしてみたいものだ。
玉河(たまがわ)
住所: | 東京都立川市曙町2-12-19 |
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TEL: | 042-522-2654 |
営業時間: | 11:00~23:00 |
定休日: | 無休 |