久里浜「くりはま家」仲良くなった客とキスをしてお金まで貰った夜
番外編からのつづき(番外編の記事はこちら)
『浜金谷』での観光の後、フェリーで『久里浜』の港へ上陸した私とイカ、カリスマジュンヤの酒場ナビメンバーは、久里浜の酒場を目指すべく町へと向かった。
「ええ感じのアーケード街やん!」
『黒船仲通り』
時間がまだ早かったせいもあり、営業している酒場は少なかったものの、その中でも一際オレンジ色の看板と煌々とした提灯群が目に引く店が見えた。
『くりはま家』
「立ち飲みやん! ここにしよか!」
男3人、ましてや酒場ナビの3人が珍しく揃っておきながら、〝立ち飲み〟というジャンルを外す訳がない……いや、外せる訳がないのだ。
アルコールが切れ始めていたのもあり、我先にといつもの《暖簾引き》さえ忘れつつ店内へと入る。
「いらっしゃいませー!」
正方形の立ち飲みカウンターの内側から、若いマスターの威勢のいい声が出迎えてくれた。
壁や天井もいい具合にちゃんと色褪せており、色黒のイカなど自分の肌色と一瞬で同化してしまった。たまたまこんな素敵な酒場へと導いてくれたのも、ひとえに《酒場の神様》のおかげなのである。
酒場の神様、いつもありがとうございます。
まずは、フェリーの〝デッキ酒場〟で潮風を呑み過ぎたことによる〝潮疲れした喉〟を酎ハイで掃除する。そして、お通しの『柿ピー』をポリつきながら料理を注文した。
『煮込み』
シンプルな見た目にネギがもっさりと乗っている。七味唐辛子でサっと〝お化粧〟をして、サラサラとお茶漬け感覚で3人と回し食べれば、すっかりハラペコ感も落ち着くのだ。
「ハムんまぁぁあぁぁッ!!」
ハム好きのカリハムジュンヤが、大きめにカットされたジューシーな『ハム串』に嗜み喰らう。焦げるか焦げないかの絶妙な焼き具合の『ウインナー串』も、パリっとした歯ざわりがまさに男の〝勃ち飲みつまみ〟として昂奮させる。
そこには、メンバーのいつもと変わらない風景があったのだが……間もなく、『酒場ナビ』という触れ込み通りの出来事が起こるのだ。
皆が酎ハイを一杯飲み終えたくらいだろうか、その男性客の《先輩》は唐突に現れ、私の横の席へと立った。
「マスター、緑茶割りとやきとん頂戴」
常連なのであろう、先輩は慣れたように酒とやきとんを注文した。
少し強面なくらいで、どこの立ち飲み屋にもいるような先輩だった。私たちもそれを特に気になどはしていなかったのだが、
次の瞬間──
「お兄さん、年いくつ?」
「……え? あー、僕ですか?」
先輩は突然……いや、本当に突然、私に年齢を訊ねてきたのだ。
何の脈略もなく、あまりの唐突な質問に《酒場ナンパ》慣れしている私もさすがに面食らったものの、それに応えるのだ。
「38歳です。先輩はおいくつですか?」
「いくつに見える!?」
合コンかよ……。
隣のイカとカリスマジュンヤの顔を見ると、『これ、ドラマが始まるんちゃうか……!?』という表情をしている。
……どうやら、今回は私が〝引いて〟しまったようだ。
とにかく、先輩の合コンクイズには〝乗っかる〟しかない。
「そうですね……48歳くらい?」
「ハズレー!! 60歳!! もうすぐ還暦!!」
「えっ!? 嘘でしょ!?」
あまりの若作りに、思わず声が出た。
強面は別として、肌感からしておよそ60代には見えなかったのだ。思わず先輩に質問を返す。
「全然みえないっスねぇ~、若作りの秘訣はなんスか?」
「そりゃあ、しっかりと……こう、普段から〝セッ○ス〟することだよ」
「……は?」
一瞬、私は言われた意味が分からなかったのだが、先輩は〝若作りの秘訣〟というその仕草を両手を使って、しっかりと……こう、説明し始めたのだ。
隣のイカとカリスマジュンヤを見ると、先輩と同じ仕草をしながら『完全に始まったな……!!』という表情をしている。
〝出会って5分でセッ○ス〟というタイトルのアダルトビデオは何度も観たことはあるが、こっちの〝出会って5分でセッ○ス〟は初めてである。
「そ、そうですか……」
「何歳になっても〝おさね〟はいいもんだからね」
「……は?」
隣のイカとカリスマジュンヤの顔を見ると、これは私と同じく『は?』という表情をしている。
初めて聞いた〝おさね〟を先輩は私たちに詳しく説明してくれたが、どうやら『風俗用語』の一種らしく記事上でそれを明記すことはコンプライアンス上《不可能》な為、読者の諸氏は各々インターネットなどで調べていただきたい。
ヒントは、ここ『久里浜』の地名である。
〝因みにおさね用のブラシがあってだな……〟
〝それなんスか先輩!?〟
〝略して『さねブラ』といってだな……〟
〝知らんがなっ!!〟
一瞬にして酒場ナビとの『輪』に溶け込んだ先輩は、喝破と……主に〝下ネタ〟で笑わせてくれるのだ。
それに加えて気風も良く、
「あれ? 兄ちゃんたち、もう酒ないのか?」
「はい、でもこれから次の店に行……」
「マスター! この兄ちゃんたちに俺から一杯ずつツケてあげてー」
なんと、メンバー全員分の酒まで奢ってくれたのだ。
先輩からの嬉しい厚意に、そのまま4人で《酒ゴング》を鳴らす。やはりタダ酒の酒ゴングの音色は、より〝高音〟で美しい。
こうなってしまうと、誰にもこの呑み助4人を止めることなど出来ない──。
「うわっ!? 先輩の腕の筋肉えげつないやん!?」
「まぁ、ずっと力仕事してるからね」
『寅一』を履いた先輩は、見るからに力仕事をしていそうで〝筋肉好き〟の私たちは、
先輩の腕筋を触り、ガッチリと握力を確かめたり──、
自分の〝おさね〟を、そっと後ろから先輩の『大臀筋(尻肉)』に擦り付けるなどをして愉しむのだった。
そして、気がつけば……
「うおりゃあぁぁあぁぁっ!!」
「パパぁぁあぁぁあぁぁっ!!」
〝先輩!! 腕相撲で勝負や!!〟
〝おー、相手してやるぞ〟
〝好きやで筋肉先輩!!〟
〝バカヤロー!! オレはソッチの趣味はないんだよっ!!〟
〝ワハハハハ──!!〟
次の店に移動しようとしてから、1時間以上経っていたのだ……。
びっくりするやら、あきれるやら、
だが、時間も差し迫ったところで、今度こそ次の酒場へ行こうと店を出ることにしたのだ。
「じゃーなー兄ちゃんたち、楽しかったよ」
「こちらこそ、ありがとうございました!!」
先輩は私たちを見送るために、わざわざ外まで出てきてくれた。
なぜだろう、少しの時間であったがちょっぴりセンチメンタルな気持ちにならないでもない。
すると先輩が、
「次の店でも、これ使って呑みなー」
と言って、
次の店の飲み代として、お金までくれたのだった。
これには思わず私たちも──
「うわぁぁあぁぁせんぱぁぁあいぃぃッ!!」
「ちょっ、ま、まてまてお前ら──ッ!!」
「ら、らぁぁあぁぁめぇぇえぇぇっ!!」
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…………。
この後、はしご酒でしっかりとお金は使わせていただきました。
名前も知らない先輩、本当にありがとうございました。
〝メンバー3人の記事が少ない〟ことから始めたこのプチ観光旅行。
結局、酒場ナビのオチはこうなるのだ……いや、こうなってしまうのだ。
それは、メンバーが1人で酒場へ挑んだとしても、変わらないことなのかも知れないが……
でも、
まあ、
きっとまた3人で、これからも酒を呑みに行くのだろう。
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くりはま家(くりはまや)
住所: | 神奈川県横須賀市久里浜4-15-2 1F |
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TEL: | 046-835-3113 |
営業時間: | 12:00~23:00 |
定休日: | 年末年始 |