王子「平澤かまぼこ」老舗店の特等席で絶品コース料理を食べた話
だいぶ久しぶりの『読者リクエスト』企画。
『王子駅』に行く機会があったのだが、確かこの地域もリクエストがあったはず……。
先日訪問し、昭和な佇まいと味に惚れ ぜひ酒ナビメンバー様に暖簾をくぐって頂きたいと思いました。
かまぼこ店を名乗るだけあり、練り物が美味いです。
やはりこの時期は、『おでん』に限ります。たけらら♂ さん
『たけらら♂』さんは、以前にもリクエストを採用させて頂いた事もあり今回も期待していたのだが……
“メール受信日:2016年12月14日”
2016年の12月!!
“この時期は、『おでん』”と言ってるのに、もうすぐ夏になってしまうという失態を犯してしまった……。
たけらら♂さん、申し訳ありません!やっと行きます!
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『王子駅』
20代前半に、何かの用事でチラっと寄ったことはあったが殆ど未開の地である。
地理的には『赤羽』『十条』『板橋』などの”大衆酒場激戦区”と同地区なので、それ相応の酒場があるに違いない。
王子駅を出て10秒くらいだろう、今回リクエストをいただいた『平澤かまぼこ』が見えてきた。
『平澤かまぼこ』
赤羽の『丸健水産』や大井町の『肉のまえかわ』的な酒場と、勝手にイメージしていたのだが根本的に造りが違う。
とにかく店が小さいはいいとして、まるで”すし詰め満員電車”の様な状態で客が立ち飲んでいる光景に驚愕した。
しかし店に入らないわけには行かないので、ラッシュ時の新宿駅の山手線に乗り込むが如く、私は中へ突進した。
「あ!お兄さんこっちの特等席空いてるよ~っへっへっへ!」
ギュウギュウの店の中から、店先に立っていた男性店員さんから声を掛けられた。
「え!?特等席ですか!?」
「ここの『おでん鍋』の前が特等席~っへっへっへ!」
「じゃあ、そこに行きます!」
その店員さんが薦めてくれた席は、店先で煮ている大きな『おでん鍋』の目の前のカウンターの事であった。
確かにこの展望、ある意味特等席に見えなくもない。
「なーに飲みます~っへっへっへ!」
「ごきげんですけど、酔っ払ってますか!?」
「いやいや、仕事中だから酔ってないよ~っへっへっへ!」
……この店員さん、とにかく陽気かつ、必ず語尾に”笑い”があるのだ。例えるなら『高田純次』の笑い方を想像して頂ければよい。
なんか、前に行った曳舟の立ち飲み屋の店長もこんな感じだったような……。
「はーい、生ビールとこれ無料のお通しね~っへっへっへ!」
『お通し』
この『お通し』が”無料”だというのが信じられないくらい旨い。カブと葉の漬物なのだが、漬かり具合が秀逸でかなり漬物の性質を理解している”達人”が作っているに違いない。
「このお通し、めちゃめちゃうまいですね!」
「でしょ?俺が作ってるんだ~っへっへっへ!」
「じゃあ”かまぼこ”って店名なくらいだから、かまぼこもおいしいですか?」
「今日は入ってるよ~、食べる?」
「お願いします!」
「かまぼこ一丁~っへっへっへ!」
その店員さんは特に客を呼び込んだりするわけでもなく、ずっと店先でタバコを吸いながら立っていてる。丁度そのすぐ横が私の特等席だったので、特に私に気を掛けてくれた。
『かまぼこ』
うまいっ!!
市販の”ツルツル”した表面の歯ざわりとは違い、デコボコした”手作り感”満載の白い身にワサビを付けて食べると、今まで味わったことのない歯ごたえと旨味が楽しめる。
「どう?美味しい?っへっへっへ!」
「今まで食べた中で一番うまいかまぼこです!」
「あっはっはっは!」
おっと、オススメの『おでん』食べないといけないな。
「あの、『おでん』貰ってもいいで…、」
「まぁゆっくり順番に行こうよ~っへっへっへ!因みにおなか空いてます!?」
「え?……ああ、はい空いてます!」
「じゃあ『チャーシュー』なんてどう!?」
「そんなのもあるんですか!?ください!」
「こちらにチャーシュー頂戴ね~っへっへっへ!」
店員さんの”語尾笑い”はどんどん加速、料理を待っている間もガンガン話し掛けてくれるのだ。
「この店とは別でかまぼこを作ってて、そこは60年近くやってるよ~っへっへっへ!」
「そんなに!?老舗ですね!」
「俺もここで20年やってるしね~っへっへっへ!」
20年だって!?
ああ、この人はただの店員ではなく、”店長さん”だったんだな。
なるほど、だからこうやって店の前に率先して立ち、厨房の若いバイト店員に指示や入ってくる客を上手に誘導してるのか。
「はいチャーシューおまたせ~っへっへっへ!」
『チャーシュー』
「え!?ライスも付いてるんですか!?」
「いやあ、おなか空いてるって言ってたからさ~っへっへっへ!」
この店長さんの心意気、さらに私の大好きな『紅しょうが』まで付いている。新潟のコシヒカリだというライスに、トロトロチャーシューを乗せて口へ入れる。甘しょっぱいチャーシューにライスが合わない訳がない。
これが”かまぼこ屋”の出す酒のつまみだっていうから驚きだ。
「じゃあそろそろ『おでん』を…、」
「まーまーゆっくりいこうよ~、”鳥皮”なんて好き!?」
「あ、はい、好きで…、」
「ちょーっと待ってて~っへっへっへ!」
そう言って自ら厨房へと入り、フライパンを振り始めたのだ。なんという自由な店長さんなんだ……。
『鳥皮とネギの炒め物』
ちょっと調べてみたのだが、このメニューが見当たらなかった為、一応『鳥皮とネギの炒め物』と紹介しておく。きっと気まぐれで作ってくれたのだと思うが、これもとんでもなくうまい。味付けは塩コショウだけらしいのだが、もっともっと繊細な味を感じた。
「あれ?お通し食べ終わっちゃった!?」
「はい!すごくうまかったの…、」
「こっちにお通しおかわりね~っへっへっへ!」
「あ…、ありがとうございます!」
「次のお通しにはね、”魔法の粉”をかけてるからね~っへっへっへ!」
「え!?”魔法の粉”!?」
ただでさえ最近有名人が”粉もの系”で逮捕されまくっているのに……と、一抹の不安を覚えたが、ここは店長さんを信じるしかなかったのだ。
『お通し(魔法の粉あり)』
「あー、魔法の粉って『味の素』か!」
「あたり~っへっへっへ!」
子供の頃、母親はいつも漬物に”味の素”をかけて食べていたのだがそれを思い出した。しかしこのお通しの漬物だと、本当に魔法がかかってるんじゃないかと思うほどうまかった。
とにかくこの店の料理は、どれも工夫があると同時に客へ美味しいものを出そうという気持ちが強い。それはあたかも『コース料理』でも食べている様な感覚でもあり、”次はどんなおいしいものが出てくるのだろう?”と心躍らせるのだ。
そんな事を思っていると、さっきまでニコニコ顔の店長さんが真面目な表情をして言った。
『自分でうまい!って思ったものが3品あればお店はうまくいくよ』
なんとシンプルかつ、深い考え方なんだ……。
これが飲食店キャリア20年の成せる発言なのかと心に響いた。
そしてその理念は、厨房にいる若いアルバイトの店員にもしっかりと教えられているのだと、この料理を食べてみればわかる。
「すばらしいですね……そりゃバイトの子でも美味しい料理作りますよ!」
「バイト……? いや、厨房の子達は社員だよ!」
「え!?じゃあここの人みんな社員なんですか!?」
「ちがうよ!厨房の子達が社員で、俺だけ20年間バイト~っへっへっへ!」
バイトだったんかい!!
因みに、
店長も別にいるらしく、しかも店がかなり混み始めたので、結局『おでん』は遠慮して店を出ることになったのだ……。
たけらら♂さん、ご依頼ありがとうございました!おでんは冬の宿題にします!
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平澤かまぼこ 王子駅前店(ひらさわかまぼこ おうじえきまえてん)
住所: | 東京都北区岸町1-1-10 NUビル 1F |
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TEL: | 03-5924-3773 |
営業時間: | 10:00~22:00 |
定休日: | 祝日 |