稲田堤「たぬきや」多摩川酒場最後の砦が83年の歴史に終止符・・・
今年9月下旬
今年一番の酒場ニュースが突如舞い込んで来た。
「稲田堤 たぬきや 閉店」
稲田堤の「たぬきや」とは
多摩川沿いにある少し変わった酒場で
常連の皆さんはその独特の雰囲気から『天国に一番近い酒場』と呼ぶ国宝級の酒場なのだ。
酒場ナビで以前ボクが記事にもしていて
さらに酒場ナビカリスマジュンヤプロフィールでも
『オススメの酒場』で「たぬきや」と書いてるほど特別な酒場なのである。
そんな「たぬきや」が閉店・・・
とても悲しいが、お別れを告げに
京王線に揺られ多摩川へやって来た。
ちなみに訪れた前の週も「たぬきや」に来たのだが
その時は台風の影響で臨時休業されていたのだ。
川沿いにある酒場なのでそういった理由で休みになるのは仕方がない。
この日は無事営業されてたみたいで一安心したのだが・・・
未だかつて見たことがない「たぬきや」の行列であった。
閉店を惜しんで、別れを告げに来られた方たちの人数を見る限り
改めて色んな方から愛されてた酒場なのだなと感じた。
元々多摩川沿いには沢山の酒場があったみたいだが
その中で唯一今まで残ってたのが、ここ「たぬきや」との事だ。
当時、この多摩川沿いに
いくつもの酒場があったと思うと・・・
それはそれでかなり気になる。
一体どんな状況だったのだろうか・・・
毎日が花火大会の屋台みたいな感じだったのだろうか。
店内も見ての通りで満席状態・・・
この満席状態でありながら
なんとママさん一人でこの店を切り盛りされてるのだ。
もはやキャパオーバーとかそんなレベルではない。
缶ビール缶チューハイはセルフサービスなのだが・・・
もうほとんど残ってない様子だった。
昼から一人で店を回されてたママさんは
相当お疲れの様子・・・
そしてネットでは何度も見たが
この閉店挨拶の張り紙を見ると、改めて本当に閉店するんだぁ〜と実感が沸く。
今年は平成最後の年に
築地の移転から始まり
神奈川「みのかん」、幡ヶ谷「大黒屋」、そして渋谷「富士屋本店」
更には今月末に板橋「SHOWA」も閉店すると言う・・・
相次いで名店が姿を消していく寂しい年だ。
20分ほど並んで、ようやく店内へ入る事が出来たが
ママさんとお客さんとの会話は
「もう終わっちゃったの〜」
「それも終わっちゃったの〜」
の連発だ。
想像はしていたが
いつもの何倍もの来客により、料理はほとんどが売り切れ状態との事だ。
今回同行してくれた役者の野瀬正人が並んでる最中こう呟いた。
(野瀬とはイカの〔チャーフレ〕としても有名だ。)
「ツマミないんやったら、もうあれいくしかないなぁ〜」
そう野瀬が指差す方向には
スナック菓子があった。
「最悪これで凌ごう」
と懐かしのサッポロポテト(バーべQあじ)を手にした野瀬がそう囁いた。
ちなみに「たぬきや」の本来のメニューはこういったラインナップである。
「すんません、トマトハイ4つお願いします!」
「はい~」
「煮込みってもう終わってますよね?」
「ごめんね、終わったの~」
「ツマミ何がありますか?」
「・・・もう何もないわと言いたいくらいだねぇ。あはは」
予想通りの展開であったが
そんな事くらい笑って飛ばせる器を
ここに居らっしゃる皆さんは持ってるはずだ。
トマトハイ(350円)
トマトハイで「たぬきや」最後の〔酒ゴング〕を鳴らした。
泣いても笑っても
もうここで呑む事は出来ないのである・・・
味を忘れない為にも、呑みすぎには注意した。
「サッポロポテト バーべQあじ(値段不明)」
スナック菓子で、とりあえず”凌いでる”と・・・
厨房からママさんが
「塩辛の人~~~」
と呼んでくれたので、取りに行ったのだが
ここまでイカの塩辛が愛おしいと思った事は初めてだった。
「いか塩辛(250円)」
「わぁ~イカやぁ~~~イカイカ~♪」
イカさんがイカを見てはしゃいでいる。
イカと戯れてるイカさんが突如言い出した。
「トマトハイとビール混ぜたら実は美味しいんとちゃうか?」
もう並ぶのは嫌だという事で
ついでに頼んでた瓶ビールをトマトハイに注いで、オリジナルの「下町レッドアイ」を作ってみた。
果たして奇跡カップリングは起きるのか・・・
“トマトジュースと焼酎とビールの融合カクテル”
トマトジュースと焼酎の相性=◎(トマトハイなので)
ビールと焼酎の相性=〇(ビー酎というお酒があるくらいなので)
トマトジュースと焼酎とビールの相性=×
これは本当にオススメしません。
オリジナルカクテルを作って遊んでると
すぐに日は暮れ、「さぁお別れも告げる事が出来たし、帰りますか」ムードが流れ出した。
しかし店を出ようとすると
急遽降り出す大雨・・・
「まだ帰らないで」
「たぬきや」がそう言ってるように思える突然の豪雨・・・
せっかくなんでもう少し呑みますか、という事で
ギリギリ厨房奥で眠ってた焼きそばをチョイス。
「焼きそば(450円)
もやし、キャベツ、豚肉のみの超王道スタイルの焼きそばだが
思ってたより量が多い。
酒場ナビでは恒例の麺ロールアップ撮影を無難にこなし・・・
焼きそばを堪能してると・・・
またしてもこの男が動き出した。
「焼きそばに塩辛のせて食べたら美味しいんとちゃうか?『イカ焼きそば』ってあるくらいやし。」
焼きそばと塩辛の相性は・・・
ソースの旨味を「これでもかっ!」ってくらい塩辛が打ち消して、決して美味しいとは言えない。
確実に別々で食べた方が美味しい。
〝つまみのカップル成立術〟に長けているイカだが
今日はどうも調子が悪いみたいだ。
居酒屋なのか、食堂なのか
はたまた売店なのか、屋台なのか・・・
どのジャンルにも属さないこの「たぬきや」で呑めるなら
オリジナルの「下町レッドアイ」も「イカの塩辛焼きそば」もまずくて良い。
ここで呑む事に意味があるのだ。
何事も始まりがあれば、終わりもあります・・・
「たぬきや」は確実にボクの中で名酒場でした。
次は天国で呑ませてくださいね。
【閉店】たぬきや(たぬきや)
住所: | 神奈川県川崎市多摩区 |
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営業時間: | [火・水・金] 15:00~19:00 [土・日・祝] 12:00~19:00 日曜営業 |
定休日: | 月曜・木曜が定休日。 強風や大雨の時も臨時休業 (基準値不明)。 |