西成「小島商店」お嬢様だって立ち飲みたい!美人の立ち飲み初体験
──美酒と美人の国、秋田より愛をこめて──
純米吟醸『雪の茅舎』
『ウチと一緒に、呑まへん……?』
まるで秋田『齋彌酒造』専属のイメージガールの様だが、この〝はんなり関西弁〟の美人は秋田美人ではなく神戸美人のお嬢様で有名な『アミちゃん』である。
11月に酒場ナビメンバーのイカとこのアミちゃんとの3人で大阪西成はしご酒へと繰り出しており、その三軒目にこの立ち飲み屋へ訪れていた。
『小島商店』
神戸のお嬢様で、立ち飲みは初めてという〝立ち飲みバージン〟のアミちゃんは、立ち飲みを知らない女子にありがちな、
「なんで立って飲むん?」
という疑問を私とイカに投げつつも、立ち飲みという独特な雰囲気に興味津々であった。
「その日本酒な、秋田で有名なんよ」
「そうなんやぁ、ほな飲んでみます~」
そう言ってアミちゃんに日本酒を勧める女将さんは小柄な美人。もちろん、秋田出身の私は存じ上げている名酒であるが、あえて何も言わず、この美人2人の酒話を微笑みで見守るのだ。
女将さんが日本酒を、枡に入れたコップへなみなみと注ぐ。うーむ、秋田の名酒が西成で飲めるのは、なんだか不思議だが嬉しい気分だ。
「なぁなぁ、これどうやって飲んだらええのん?」
『口からや! アミちゃん口から行くんや!』
咄嗟に、私とイカが叫ぶ。日本酒へ口から行くなんて大概は汚らしいおっさんばかりで、美人がこれをやるのは中々お目にかかれるものではない。
チュ──……
チュ──……ジュボ、チュ──……
コリャ、タマラネェ。
こちらもバキュームアミちゃんの頬に、思わず吸い付こうとすると……
「あ! こうやって飲みやすいように立って飲むん?」
と、その穢れなき瞳で言うものだから、「そうだよ、よくわかったね」と言って吸い付きたい衝動を抑えた。
「おいしいやろ、おねえちゃん?」
「うん、おいしいわぁ」
アミちゃんと女将さんとの美人な会話が弾む……が、暫くするとまたしても『あの言葉』を耳にすることになるのだ。
「西成は、静かになったわ」
やはり、か……
2年前からこの西成へ訪れているが、同じく西成にある『難波屋』『但馬屋』の女将さんも同じように〝西成は元気がなくなった〟と言うのだが、ここの女将さんもまたその一人となってしまった。
けれども、女将さんは笑顔で話を続けてくれた。
創業は70年。元々は大阪の日本橋に本家『小嶋屋』が存在したらしく、暖簾分けのようにして現在の場所へ『小島商店』を開いたという。
「最高で、大正生まれのお客さんもおったんやで」
嫁いで40年、淡路島出身の女将さんで三代目とのこと。当時の客には「めっちゃ悪いのがおった」と言う反面、「でも、みんな良い人やった」と述懐する。店のご主人は子供のころから店を出入りしていた為か、大人になった今でも客からは当時の呼び方で『僕』と呼ばれていることに、隣にいる先輩客らは「そうそう」と破顔一笑する。
『おでん』
女将さんの話を聞いていると、目の前の大鍋からおでんの甘ぁい香り漏れはじめ、思わず注文する。アミちゃんはその中から『ゴボウ巻き』を大胆に咥え込むのだが……
「熱ちゅ……あっちゅ~い~!」
「な、なんや!? どうしたんやアミちゃん!?」
アレの如く、屹立と伸びる『ゴボウ巻き』の熱さに苦戦するアミちゃん。それを見かねたイカが、「どけ!」とばかりに私を払いのけ……
「ワイが一緒にフーフーしたる! フーッフーッ!」
人目もはばからず中年男が〝フーフー〟って……!! この男には、まるで羞恥心なんて言葉はないようだ。
「ほぉらアミちゃん、あ~んや、あ~ん♥」
「ふぉ、ふぉおきにぃ……」
う~わぁ~……アミちゃん、完全に引いちゃってるじゃん……!!
嫌がる美人お嬢様の口へ、強引にゴ棒を突っ込む……これは『変質者』そのものじゃないか……いや、そんなことより、アミちゃんに私まで同じ部類だと思われたらどうするんだ!
「……あかん、やっぱりまだ熱いわぁ、食べられへん」
「うんうん、ほな戻しておくから後で食べやぁ」
そう言って『ゴボウ巻き』を器に戻す。きっと、イカの〝フーフー〟が気持ち悪くて食べたくないのだろうなぁ……男性経験だってないこんなお嬢様になんてことをするんだ……
すると、その様子を見ていた横の先輩が話しかけてきた。
「ワシは歯が腐っとるからな、熱くても冷たくても歯が染みるんや」
ドッっと、店内が笑いに包まれる。すかさず、もう一人の先輩も追い討ちをする。
「俺なんか歯が2本だけやから染みもせんで! うらやましいやろ!」
さらに沸く店内。西成で呑むと、必ずと言っていいほどこんなやり取りがあるから……いつも、こう思ってしまう。
〝西成、十分元気じゃん〟
そして、やはり居心地のいい酒場が多い。
ほら、アミちゃんだって……チューチュー……愉しんでる……チューチュー……みたいだ。
「あはは♪ なんか、立って飲むん良さが分かったわ~」
「せやアミちゃん! 立つと人と人が近いから会話が弾むんやで!」
……チューチュー
「ほんまやなぁ、また立ち飲みしてみたいわ~」
「よかったな味論! アミちゃんがまた立ち飲み……げっ!! お前何しとんねん!?」
「あ──!! あたしのゴボウ巻き!!」
──私は、違うところが立っていた。
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小島商店(こじまやしょうてん)
住所: | 大阪府大阪市西成区萩之茶屋1-18-15 |
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TEL: | 06-6641-7698 |
営業時間: | 9:00~13:00 16:00〜19:00 |
定休日: | 日曜日 |